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トライ・ワールド・オンライン  作者: 山岡光太郎
第1章 メルバネード ―トーリアス・ウル―
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第6話 大賢者:レヴィリム・フォルスマイスター

 デスドラゴンを倒した時也と少女は木陰に座り込んで休憩することを選んだ。

 トランス・カタストロフィを解除した時也のHPはたったの1だったので、時也は少女にHPを全快になるまで回復して貰った。

 倒したデスドラゴンの死体はゲームの時と同じように液体となった後に気体となって消えたので、今この場に死体は無い。


「それにしても、思ったより楽に勝てましたね! お兄さんが強くてベテランでよかったです!」

「デスドラゴンとは何度も戦ったしなー」


 時也がデスドラゴンと戦った回数自体もそこそこ多いし、時也は並外れた観察眼を持つ楓からデスドラゴンの分析を何度も聞いていた。そのおかげで時也はデスドラゴンの行動パターンも攻撃パターンも大体知っているし、強力な攻撃の予備動作も把握している。


(だから今回は1人でも行けるんじゃね? とか思った訳だけど……無理だったね! うん! でも、それにしたって楽勝すぎた感じはするけど……ま、いっか!)


 やはりレベル1000のレイドボスの相手を1人だけでするのは無理があったということだろう。レベル1000のモンスターはどれも規格外なのだから当然ではあるが。


「でも君だって戦ったことあるんだろ? 残りのHPが3割以下になったらデスドラゴンが少しの間動かなくなるのを知ってたみたいだし」

「はい。1回だけ戦ったことがあります。今回が2回目ですね」

「そうなのか。……ところでさ、君はいきなり現れた訳だけど……どっから来たんだ?」

「さっきまでゲームしてたんですけど、気付いたら森の中にいたので適当に彷徨ってたんです。そしたら大きな音が聞こえてきたのでそこに行ってみたら、お兄さんがやられそうだったから助けに入った、という訳です」

「成程な。ってことは、俺は運が良かったんだな。君が良い人で助かったよ」

「いえいえ、それほどでも~。……あっ!!」

「え!? 何、敵!?」


 少女がいきなり叫んだ。時也は敵が来たのかと考え、剣を抜いて辺りを見渡す。


「自己紹介するの忘れてました!!」


 少女はハッとした顔で叫ぶ。


(……うん。そうだったね、プロテインだね)


 時也と少女はデスドラゴンとの戦闘中という特殊な状況で出会った。緊迫した状況だった以上、自己紹介をするヒマがなかったのは仕方のないことだろう。


「という訳でお兄さん! 私の名前はレヴィリム・フォルスマイスターです! 現在は高校一年生! ロシア人と日本人とフィンランド人とアイスランド人のクォーターです!」


 少女は元気よく答える。


(どうしよう、ツッコミどころが満載だ。まずはどこからツッコむべきだろうか)


 時也はそんな少女――レヴィリムの自己紹介に色々と思うことがあった。困惑というか、面白いというか、そのどちらとも言えないような感情を持ったとも言える。

 時也は意を決して、レヴィリムに疑問を投げかけた。


「……日本語上手いね」

「はい! お父さんが日本人とフィンランド人のハーフで、今は日本の高校に通っているんですよ! 日本語はお父さんに習いました!」


 少女はまたも元気よく答えた。


(うん。これでほとんど外国人なこの子が日本語ペラペラな理由が分かった。で、次に指摘すべきことは――)


 時也は咳払いしてから注意するようにレヴィリムに言う。


「取り敢えずさ、自己紹介でリアルネーム使うのはあんまりよくねぇよ? プレイヤーネームはその為にあるんだから」


 時也の言うことは、一般的に正しい筈だ。VRMMOというインターネットの中では、本名を使うのはあんまりよくないとされているのだから。中には楓のような意地でも本名使う変わり者もいるが、基本的には本名とは違う名前を名乗るのがマナーだと言えるだろう。


「え? でも今はプレイヤーではなく私ですし、本名の方がよくないですか?」

「……ゴメン。言ってることがよく分からない」

「えっとですね、私もプレイヤーだった時はプレイヤーネームであるリムを名乗ってましたけど、今の私たちはプレイヤーじゃないでしょう? だったら本名を使うべきじゃないかなー、と思いまして」


 ふと、「何を言ってるんだこの子は?」と思った。

 時也にはたった今レヴィリムが言った、今の時也たちはプレイヤーではないと言う言葉の意味がよく分からないのだ。


(そんな訳ないよな? だって今の俺たちはゲームの時に使ってた武器やスキルを使えてるんだし、どう考えてもゲームのキャラだろ)


 時也は思考を巡らせる。


「お兄さんの考えていること、当てて見せましょうか?」

「え? 当てられんの? よーし、じゃ俺の考えを当ててみろ!」


 時也は腕を組んで笑う。


(レヴィリムちゃんのおっぱい揉みたい)


 時也はレヴィリムの顔ではなく、その少し下に視線を向けた。


(レヴィリムちゃんのおっぱい、かなりおっきいしなぁ。それに形は綺麗だし、ハリもありそう。もしここに俺以外の男がいたら、極上なものだとは思わんかね、とか言いたい)」


 キャラメイクで調整できる要素であるが、時也にそんな事実は関係ない。


(キャラメイク? 知るか! そうだと分かっててもこんな立派なのを見たら揉みたいと思うのが男の子だろうが!!)


 時也は目を見開き、レヴィリムの胸をじっくりと見た。それはとても素晴らしいものだった。


「では言いましょう。お兄さんは今の私たちの外見がプレイヤーキャラと同じだと思ってるでしょう?」

「……違うの?」


 時也の予想とは違う答えが来たが、その答えは時也にとって驚愕の事実だった。


「鏡見ます? ハイ、どうぞ」


 レヴィリムはポケットから小型の手鏡を出し、時也に渡す。時也はそれを受け取って自分の姿を確認した。


「……あるうえええ!?」


 手鏡に映っていたのは自分がームで操作していた中年男性の顔ではなく、黒髪黒目の中世的な少年の顔だった。

 その顔は時也が毎日見ていた顔。現実世界の時也自身の顔だった。


「お兄さん、やっぱり気付いてなかったんですね……」

「そんな呆れたような声で言わないでくれるかな、傷付くから」

「とまあそういう訳で、今の私たちの体は現実の自分の体です。だからスタミナとかは現実の自分と同等だった筈ですよ?」

「……そういえばそうだったかな」


 ステータスは完全に超人である時也のスタミナがあの程度しかなかったというのはゲームでは考えられない。となると、スタミナが現実の時也と同じであるのは当然だと言えよう。


「それで、お兄さんの名前はなんですか? 勿論、本名ですよ?」

「俺は楪時也。高校2年の日本人だ」

「成程、時也さんですか! いいお名前です!」

「ありがとう、レヴィリムちゃん」

「あ、私のことはリムでいいですよ。レヴィリムだと長くて言いにくいでしょうし」

「オッケー。よろしくな、リムちゃん」


 ふとここで、時也はあることに気が付いた。


(そういやさっき楓さんがリムってプレイヤーが凄いとか言ってたな。コイツのことだったか。ま、実力は確かなんだし納得かな)


 時也は3回ほど軽く頷いた。しかしレヴィリム――リムにはその意味が分からなかったようで、少しだけ首を傾げる。


「どうかしたんですか?」

「ああ、何でもないよリムちゃん」

「あ、そうです。私の名前に『ちゃん』を付けないでくださいね」

「なんで?」

「なんでも、ですよ時也さん」

「じゃあ俺のことも時也って呼び捨てに――」

「それは嫌です」

「何で!?」

「年上の男性を呼び捨てにするのはダメです! 日本の心に反します!」

「わ、分かったよリム。これからよろしく」

「はい! よろしくお願いしますね、時也さん!」


 リムと握手を交わした時也はふと視線を下に向ける。


(……ということはリムのこのおっぱいとか髪とか目とか顔とかはキャラメイクでの作り物ではなく、本物なのか?)


 時也にとって最上級レベルの美少女であるリム。

 銀髪のおさげ髪に水色の目を持つ美少女。身長は大体160ぴったりくらいでやせ形。出るところはしっかり出ているので、女性的だ。


(このレベルの美少女でこのボディとか反則だろ)


 時也はリムの顔と胸を何度も交互に見続ける。リムはそれが何を意味しているのかを理解していないのか、ポカンとした顔で時也に問う。


「どうしました?」

「……ナンデモナイヨ?」

「すっごい目が泳いでますけど」

「……キニスンナ!」


 時也の口調が片言外国人のようになってしまった。それは緊張のせいか、それとも胸を見ていたことを誤魔化す為か。正解は両方だ。


(ま、取り敢えず結論。リムちゃん可愛い)

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