2回目
ん・・・ん?
なんか眩しいな?
ここは・・・どこだ?ものすごく眩しい。
なんだか人が覗き込んでいるのが見える・・・?
「先生ッ!赤ちゃんが泣きませんッ!」
「落ち着いてください、お母さん!今泣き始めますから!ほらほら~!」
俺は誰かにケツを叩かれ始めた。
いってぇ!とても痛いのだが!?
痛い!痛い痛い痛い!!!
一体俺は何をしたらこんな目に遭わなければいけない!?
痛い痛い!
考えろぉ!考えるんだぁ!
得られた情報から正解を導けぇ!
おれは何故叩かれ出したのか!?
『先生ッ!赤ちゃんが泣きませんッ!」
『落ち着いてください、お母さん!今泣き始めますから!ほらほら~!』
『今泣き始めますから!』
これだぁぁぁ!!!
俺はただただがむしゃらに泣いた。
「はぁぁ!良かったぁぁぁ!」
「だから言ったでしょ、お母さん。元気な男の子でよかったですね!」
「えぇ、えぇ!生まれてきてくれてありがとう、裂!」
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俺の名前は阿東裂。
日本生まれの地球人だ!
・・・アレド・ソウファールを漢字にして阿裂東になって入れ替えて阿東裂。
うまいね。
始めの方は混乱したが、これが転生だと分かった瞬間から、「チキュウ」での生活を楽しんだ。
まず驚いたのは整っている教育環境。
何でも、幼い頃から勉学に励むことが出来る「ヨウチエン」には驚いた。
まぁ、今ではひらがな+カタカナ+漢字はバッチリ読むことが出来るけど。
あの天使が言ったように、ここ、地球には様々な国があって、それぞれに言葉があるのにはもっと驚いた。
そりゃ全ての国というわけではないが、少なく見積もっても10語はあるだろう。
・・・地球人ってスゴイ。
両親には過不足無く育ててもらった。とても感謝している。
現在、俺は大学生1年生となりキャンパスライフを楽しんでいる。
今日も今日とて大学に行く。
歩いている俺を後ろから付いてくる人なんかもいる。
「なぁなぁ、裂」
「ん?何だよ伊藤」
俺の中学生からの知り合い、伊藤。
俺と趣味が似ていて、今では親友とも呼べるほどの中だ。
こいつとはモン○ンでいっぱい遊んだなぁ。俺は太刀一択だったけど。
「今日も大天使ミカ様は綺麗ですなぁ」
大天使ミカ様。本名、笹原美香。その美貌と完璧なスタイルで大学のアイドルとなっている。
「そうだなぁ」
「ま、俺たちとは無関係だけどな」
「そうだなぁ」
「俺たちは非リア軍団だぁ!」
「一緒にすな」
伊藤が言ったように、笹原さんは俺たちとは無関係な人だと思っていた。
思っていたのに・・・いやマジで無関係だよ。
でもさぁ。
笹原さんとはなぁーんか同じ授業になってばっかな気がする。
しかも・・・
「あ。またおとなりだね、阿東くん」
「・・・うん」
なぁーんかいっつもおとなりなんだよな・・・。
俺は向きを変え、俺の隣にいる伊藤と話し合う。
「なぁ。またとなりだぞ?笹原さん」
「やっぱり変だよなぁ・・・。あれじゃね?罰ゲームとか」
「あぁ。その線あるかも」
「おい!その二人何をしてる!」
「「すみません!!」」
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そんなある日。
俺はついに呼び出されてしまった。笹原さんに。手紙で。海人に渡されてしまった。
(やべぇよやべぇよ!これついに集団リンチだろ!!)
俺は内心ビクビクしながら呼び出され場所に向かった。
呼び出された場所は、そこで告白することが出来れば永遠に結ばれると女子が勝手に噂してる伝説の木。
・・・ときめかないでもらおうか。別に俺もときめきのメモリーを作っているわけではない。
俺が伝説の木へ着くと笹原さんが1人で待っていた。
(周りには・・・だれもいないよな?)
俺は周りを確認したが誰もおらず、罰ゲームの気配は無い。
(いやいや!罰ゲームとかは告白してる最中とかにやられるものであって!)
「・・・阿東裂くん」
「は、はいぃぃぃ!」
「急に呼び出してしまってごめんなさい・・・」
「い、いえぇぇぇ!全然問題ないッスよ、ハハハッ!」
「あのね・・・阿東くん。私ね、」
(これは罰ゲームだ!いつどこから男どもが現れて殴りかかってくるか分からないぞ!)
「私、あなたのことが・・・」
(ちゃんと周りを確認しろ!ちゃんと見るんだぞ!)
「・・・あなたのことが好きですっ!」
・・・・・へ?
「・・・・・へ?」
「初めてあったときから・・・あなたのことが・・・好きでした・・・付き合ってください・・・」
「・・・・・」
マっっっジっっっかぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!
どうしようどうしよう!何か格好良い返し言葉とか考えてねーし!やべぇよやべぇよ!どうしよどうしよあんまり待たせすぎたらあれだし!すぐに返答しなくちゃ駄目だよ早く返答しないと!早く早く!言葉を思い浮かべろ!頭を回転させろ!やべぇやべぇどうしよどうしよ!
「・・・はい」
俺は散々迷ったあげく無難な2文字で返答した・・・
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それからというもの、俺の大学生活はガラッと一変した。
弁当を用意してくれる笹原さん。いつも一緒にいてくれる笹原さん。
一緒に部屋掃除をしてくれる伊藤。
休日はいつもデートの美香。ついには同棲してくれる美香。
一緒にカバディをしてくれる伊藤。
たくさんの美香を見ることができるようになった。
とても可愛いし、俺には十分すぎるほど完璧な彼女だけど、1つ、困ったことが。
「ねぇ~。れつぅ」
「ん、ん?何だ?」
「私のこと、好き?」
「・・・あ、あぁ!もちろん大好きだよ」
「ありがとーッ!私も大好き!」
そういって抱きついてくる美香。
とにかく愛が重いのだ。
重すぎる、重すぎる。
大学にいる時でもすぐに抱きついてくるし、街中でも気にせず抱きついてくる。
あと、地味に性格変わる。
まぁ、そんなの全部ひっくるめて好きなんだけどね。
なんやかんやで交際を続けてはや1年が過ぎ、大学2年生となったある日。
俺はその日、美香には内緒にしてるアルバイトでアクシデントが起こり、突然帰りが遅くなってしまった。
(やっべ。美香に連絡するの忘れてた!)
俺は急いで家に帰り、急いでドアを開けた途端。
「おそいっ!何してたのっ!」
「い、いや・・・ごめん」
「何してたのっ!」
い、いえない。俺のバイト先はキャバクラだなんてことは言えない!
「い、いやぁ・・・ちょっと・・・それは言えないというか・・・」
すると、美香は急に静かになり、キッチンの方へ向かう。
え・・・。まさか。
まさかまさかまさか!
「・・・裂くんの」
美香の手には包丁が握りしめられている。
やっぱりぃぃぃ!!!
「バカァァァ!!!」
美香の愛はやっぱり重たいよ!
「ひ、ひとまず落ち着いて!」
俺がそういって一歩前に踏み出した時の美香の顔は忘れられない。
何か、とてつもなく悲しいことが起きてしまうような、そんなことを危惧した顔。
美香の手は・・・前に飛びだしていた。
きっと、美香は脅しとして包丁を持ってきたんだろう。
別に殺すつもりなんて無かったんだ。美香の顔を見れば分かる。
衝撃、その後に暗転。激痛。
「なんだよ、驚かすなよ!」
そういえば全てが収まる。早く言え、阿東裂。
早く・・・言えよ、阿東裂・・・
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『ーーー昨夜、19歳男性が殺害される事件についてですが、笹原美紀容疑者は「こんなつもりでは無かった。本当にすまないと思っている」と供述しているようです。警察は今後、被害者の友人等に事情を聞く方針であると公表しています。今後新たな情報が分かり次第お伝えします。犯罪心理学者の中弓さん。被害者は今日が誕生日であったらしいですが、このことについてーーー』