1章~この世界~
あれから俺は、捜し物クエストをかたっぱしからクリアしていった。
普通なら捜し物クエストは受注してから3日は最低でもかかるのに、と受付の人に言われた。
ちなみに受付の人の名前はナンディというらしい。
まぁ、どうでもいいけどな!
そして。
「ほい見つけてきたぞー」
「「マジかっ!」」
とナンディとワダツミ。
ワダツミは俺のことを気に入ってくれたらしく、いつもギルドにいる。
・・・仕事の方はいいのだろうか?
「お前すげぇな!」とワダツミ。
「そうか?」
「そうか、じゃないですよ!だって今アレドさんがクリアしてきたクエストで・・・」
「捜し物クエスト全部終わっちゃいましたよ!?」
そうなんだよな。
捜し物クエストって俺にとっては効率の極みだからな。
すぐ出来るしお金はそれなりに入るし。
んで、やればやるほど楽しくなって、毎日やってたら気付けば終わっちゃいました。
てへぺろ。
俺の今の全財産は12000アスト。それなりに集まったんじゃないかと思う。
宿とかにも泊まって使ったのにも関わらずこれだけ残っているのはすごいんじゃないかと思うけどな。
でも、今俺がクリアしてきたクエストで捜し物系は全部無くなってしまったからな。
宿は1000アストだしな。
そのうちお金が回らなくなるか・・・。
「なぁ?俺の今のランクはなんぼだ?」
「えっとですね・・・今2ですね」
「2か・・・。あと1上げなきゃ駄目か・・・何か無い?効率よくランクが上がるクエストとか」
「そうですね・・・。薬草採取とかどうです?これならあと1回すればランク上がりますよ?」
「そうか。じゃあそれを」
「あぁでもでも」
とナンディは話を切る。ん?
「採取してきて欲しい薬草はアルバザード平野にあるんですが・・・」
「なにっ!?アルバザードにか!?」
ワダツミが驚く。何かあったのかな。
「いや、最近な。アルバザード平野には多数発見されているモンスターがいるんだよ・・・」
ふむ。モンスターな。
「・・・グリーンデビルっていうな」
グ、グリーンデビル。明らかに強そうだな。
ナンディが続けて、
「えぇ。だから最近アルバザードには誰も近寄ってねぇ。そのせいで王都への道が塞がれちまっていま大変なんだぜ?」
「王都?」
「ん?あぁ、お前は漂流者だっけか。まずはこの世界の形を知って貰わなくちゃな。ナンディ、地図出せるか?」
「はーい、ただいまー」
そう言ってナンディはカウンターの奥へと行き、5分ほどで戻ってきた。
手には大きな額縁が握られており、その額縁のなかに1枚の紙が挟んであった。
多分これが地図なんだろう。
・・・なんて説明したらいいんだろう?
「 」の二つの空間の間に・が存在しているというか。
「・」ーーーーーこういう感じか?
「今俺たちがいるラ・ファンはここな」
といって「 」の左側の真ん中当たりを示す。
やっぱりラ・ファンは相当な大きさを誇る村じゃねぇか。
「んでこの下は歓楽都市カグラと言って俺の出身地だ。ここでは舞いやら刀やら、周りの国とは違う文化を持っている」
歓楽都市カグラ・・・言ってみようかな。
菊一文字が無いか見たいし。無いなら新しく刀を作ってもらおうかな。
ざっと10本ほど。
「上は・・・知らなくていいか。そして」
ワダツミはラ・ファンの横を指し示し、
「ここはアルバザード平野だ。王都へは船で行けるんだが、その停船所へと続く道がアルバザード平野を通るしかないんだな、これが。普段は比較的安全な平野なんだが、最近になってモンスターが頻繁に確認されるようになった。おかげでこっちは商売あがったりよ」
「ん?モンスターがいっぱいいるのに?」
「ラ・ファンを拠点にしているハンターは3日に1回モンスターを狩ることが出来れば良い方だ。それだけアルバザードは平和だってことだ。もし今回みたいにモンスターが大量発生したらそれはもう王都の軍隊さんの仕事だ」
へぇ。だから最近ワダツミは暇そうにしてたのか。
「ワダツミなら倒せそうなのにな」
「いやいや。俺たちハンターでも大量にいるモンスターを倒すことは難しい。なにより、軍隊さんがやってくれるんだ。無駄に命の危険性にさらされるよりはちょっとの間我慢した方がマシだろ?」
一理はある。
確かに、軍隊がモンスター討伐をしてくれるならハンターはわざわざ出るまでもない。
でも。
「やっぱり大量発生したモンスターたちの討伐とかのクエストは出てるんだろ?」
「まぁ一応。王都から出てますね」
「ってことはお金の方は結構良いんだな」
「まぁそうですけど・・・止めた方が良いですよ?」
「うーん。まぁ、別のそのクエストクリアしなくても、薬草探しをすればランクは上がるんだろ?じゃあ俺は薬草探ししてくるよ」
「そのほうがいいな。俺も付いていこうか?どうせ暇だしよ」
「それは助かるなぁ。お願い」
出かけるのは明日の朝からということに決まった。
この世界の形を知れたのは、すごく助かったな。
一番最初にいた世界と言っても、あの時は1つの村から1回も出たことがなかったからな。
知れて良かった。
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ふぅーむ。
今日はこれから暇になったわけだが、何をしようか。
・・・グリーンデビルが気になるな。
本とかに書いてないかな。
俺は本屋もとい図書館を探した。
本屋は無かったが、図書館ならあった。
俺は図書館に入り、モンスターの情報と書かれた棚を探す。
おっ。あったあった。「魔物大全書」か。
俺はペラッとめくってみる。
すると、さまざまなモンスターの情報が文章で綴られていた。
グリーンデビルのページを探すと次のようなことが書かれていた。
〈グリーンデビル〉
その体、全ての攻撃を通さず。
会えば最後、恥を捨て、背を向け走れ。
幸い足は遅く、追いかけてはこれない。
絵が見たかったんだけどな。
俺は残念な気持ちで本を棚に戻そうと・・・
そこで俺は違和感に気付きもう一度本を読み返す。
・・・やっぱり。
何気なく読んでいたこの本。
そこに書かれていた文字が俺の全く知らない文字だったのだ。
しかも、それを俺は何事もなく読めている。
天使は俺をアストラルに飛ばしたと言った。
だとしたらアストラル文字のはず。
俺は言いようのない不安を感じせざるを得なかった。
もう少しこの世界を調べる必要があるな。
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次の日の朝。
俺はラ・ファンのアルバザード平野につながる門へワダツミとその他のハンターと来ていた。
ワダツミが他のハンターを呼んでくれたらしく、結構なパーティーになってしまった。
何だが本当にゲームみたいだな。
ゲーム・・・か。懐かしいな。
結局、地球には2回行ったんだよな・・・
「おい!アレド!何してるんだ!早く行くぞ!」
「あ、あぁ。すぐ行く!」
ワダツミたちはもう歩き出していて、置いて行かれそうになったので、俺は少しだけ走り出した。