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11回目の異世界にて。  作者: ユキサキ
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1章~たどり着いた生まれ世界~

転移門をくぐった後、俺は長い間眠っていたかのような感覚にとらわれた。

もしかしたら少しの間眠っていたのかも知れない。

転生する時は慣れているが、初めての転移には驚いた。


無くなっていた意識が徐々に戻ってくる。

最初に触覚。

冷たい液体のような感触と土のような感触。

次に嗅覚。

塩の臭い。

その次は聴覚。

ザザーン。ザザザーン。

味覚は・・・戻っても意味がないな。

最後に視覚。

もう与えられた情報だけで今自分がどこにいるのか理解できたが、一応目を開ける。


海。


予想通りの場所だった。

俺は砂浜に漂流したかのように倒れた状態で寝ていたのか。


とりあえず起き上がり、今の自分の格好を見る。

布で出来た半袖シャツと半ズボン。

・・・今思うとよくこの格好で畑仕事できてたよな。

やっぱ地球はすげぇわ。文明の進み具合が全然違う。

他に持ち物なんてものは無い。

転移よりも転生の方がいいのかも。

転生なら用意されていく服とかも、転移では自分で1から集めないといけない。

なるほど。大変だな。

前方は海。後方は・・・道か?

人が全く通っていないので判断しにくいが、ある程度舗装されている・・・と思う。

それでもコンクリートなんてものは無く、土丸出しだけどな。


とりあえず衣・食・住。

俺はその3つを求めて道を歩き始めた。


道は砂浜に沿うように左右に伸びていて、どちらを進か迷ったが、

何のことはない。

俺が進む方向に、村なんかがあるんだろう。

なぜなら俺は運が良いからな。

俺は初めて転生したときと同じように、わくわくした気持ちで歩みを進めた。


_______________________________



道なりに歩くこと約10分。

丸太で作られた壁に囲まれている大きな村を見つけた。


・・・どうやって入ろう?

よじ登ることが出来そうにない壁だしな・・・

とりあえず俺は叫んでみた。


「すみませーーーん!」


すると、中から人の声がしてきた。

良かった。ちゃんと人は住んでいたみたいだな。

中から、少し老けた声がしてくる。


「何用かーーー!」


「気が付いたら近くの海に流されていましてーーー!」


「なんと!漂流者らしいぞ!」


ざわざわと中から聞こえてくる。


「なので!入れてもらえないでしょうかーーー!」


「分かった!おい!そこのもの!門を開けてやれ!」


しばらくして、壁の一部だと思っていた丸太がどんどん持ち上がっていく。

中にいた、老けた声の持ち主の姿が見えてくる。


「ようこそ。ラ・ファンへ」


老けた声によく似合う、渋い相貌のおじいさん。

この人が村長なのか?


「ありがとうござます。早速ですみませんが、お腹の方が少々・・・」


「そうだな、話はその時にでも」


おい、誰か飯を作ってやれ!と老人が言うと、側にいた女の人たちがそそくさとどこかへ向かう。

親切な人たちで助かったな。


「では、こちらに」


俺は老人に付いていくと同時に、この村を観察した。

こういうことは異世界転生や転移において一番大事なことだからな。

村の中はレンガで作られた家が多く、道もレンガで造られている。

見る限り、村というよりは町に近いな。

大規模な村だが、明るい感じが漂っている。

暗い顔をした人がおらず、みんなが笑っている。いい村だな。


連れてこられたのは大きな家。この老人の家・・・だと思う。

中にはいると、それなりに良い家具が揃ってあったが、やはりこれも地球以下。

ちょうど俺が薦められた席に座ったとき、ご飯が運ばれてくる。

とてつもない量。


「あのー・・・」


「ん?なんじゃ」


「こんなにもてなしてもらって良いのでしょうか?お金は何も持っていませんし・・・」


そんなことか、と老人。


「うちの村の決まり事での。『かけられる恩はかける』。かけた恩が何倍にもなって返ってくるかもしれん。だからこそ、かけることの出来る恩は惜しみなくかける」


「・・・素晴らしい心がけですね」


人と人が助け合いながら生きていくこの世界の一端をかいま見た気がした。

それから俺と老人は用意されたご飯を食べ始めた。

「いただきます」と言ったら驚かれてしまった。

いいじゃん。体に染みついているんだから。俺自身気に入っているんだよ、この言葉。


「おっと。忘れておった。わしの名前はダング・ファンだ。一応この村の村長をやっておる。おぬしは?」


「俺の名前は・・・」


一瞬ためらったが、


「・・・アレド・ソウファールです」


そう胸を張って言えた。そう言える世界なんだ、ここアストラルは。


「アレドか。良い名前だな。」


「ありがとうございます」


「さて、話に移るか。おぬしは近くの海に流されておったから・・・ラ・ジュール海に流れ着いたのかの?」


「ラ・ジュール海・・・?」


聞いたこともないな。それもそうか。俺は200年前、農業しかしなくて、勉強なんかしなかったもんな。


「聞いたことがない、と言う顔をしておるの。ということはだ・・・」


老人、ダンクさんは考える素振りをして、


「異国からの漂流者ということか?生まれは?」


「・・・いや、ちょっと・・・」


「なんと・・・。記憶さえも無くしてしまったか・・・災難じゃのう」


いやそういうことでは無いんですけど。

俺が昔住んでいたところには名前はあったのかな。


「はい・・・。まぁ、でももう無くなってしまったのは仕方がないので、とりあえず今すぐ出来る仕事なんかはありませんか?」


「今すぐ出来る仕事・・・そうじゃな。おぬし、戦闘の心得は?」


「・・・多少は」


本当はサムライと退魔師であった人生があるので、剣と魔法、その両方が神業レベルで行える。

が、そのことを言ってしまうと混乱を招くと思う。

なので、あえて言わない。

決してこの村のピンチまで隠して最後のとっておきで披露しようとか思ってもいない。

俺TUEEEをしようとしていると思っているだろ?

・・・そんなわけねぇじゃん!バカタレがぁ!


「そうか。ならばギルドに行き、冒険者として生きていくのはどうか?」


THE・テンプレ。

もし作家として生きていなかったらこんな気持ちにはならなかっただろうな。


「そうします」


悩む素振りも見せず即答。


「そ、そうか。ならば案内させよう」


「あろがとうございます。いつかこの恩、必ず返させてもらいますから」


「フォッフォッ!楽しみに待っとるぞ!」


俺はお礼を言って村長の家から出て、案内してもらった。

絶対に恩を返さないとな。とりあえずは冒険家にでもなってお金を稼ぐか。

後に、このとき貰った恩を何十倍にして返すのだが、それこそTHE・テンプレだろう。



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