1章~異世界転生より異世界転移~
「貴方は誠に残念ながら死んでしまいました・・・。
しかし!貴方は神に選ばれました!もう一度人生を謳歌する権利が与えられ・・・!」
「・・・お久しぶりです」
「って、また貴方ですか!アレド・ソウファールさんっ!」
「俺自身『またかよっ!』って思ってますって・・・」
俺こと、アレド・ソウファール。
出身はアストラルという世界。
年齢。現時点は20歳。
今俺がいる場所。神の転生場。命名、俺。
職業。
農民、大学生、医者、科学者、サムライ、詐欺師、作家、怪盗、退魔師、そして美少女。
「もう・・・。何回目ですかね?」
「・・・10回目です・・・」
「はぁ・・・貴方のせいでこっちは20年ごとに頭を悩ませてるんですよ?」
「すみません・・・」
「はぁ・・・まぁいいですけど。じゃあちゃちゃっと手続き終わらせてさっさと転生しますか」
「あっ、ちょっと待ってください」
「ん?何ですか?」
「1から異世界転生のシステムについて説明してくれませんか?」
「えっとー?どうしてですか?貴方は何回もして分かっているでしょう?」
「いや、それはですね。俺と、貴方以外の第三者の人に、異世界転生について知ってもらいたいからですよ」
「・・・随分とメタ的な発言をしますね」
「7回目の転生で作家っていう人生歩んでますから。こういうテンプレ的な展開に持って行くことがどれだけ難しいか、理解していますから」
「・・・さいですか。まぁ、台本読むだけですから良いですけど。じゃあ読みますよ。
『えーっ、異世界転生の権利を手に入れたアレド・ソウファールさん。貴方に異世界転生についての説明を・・・コ、コホンッ。第三者の皆様に異世界転生についての説明をいたします・・・って何だコレ・・・。まぁいいや』
『とりあえず異世界転生自体から説明していきます。
異世界転生とは、その名のとおり自分が生まれた世界以外の世界に、魂を送り、2回目の人生を与えるという神の慈悲深き行動のことです。新たな人生を歩むことができるこの異世界転生は非常に稀なことであり・・・あーっと・・・非、非常に・・・稀というわけではありませんがとりあえず稀ですっ!』
『次っ!異世界転生が出来るわけ!
貴方が異世界転生出来るのは、神にその権利を授かったからです。権利を授かるには、1つ。20歳以下で人生を終えていること。2つ。無念が残る人生であったこと。この2つの条件を満たしていれば、抽選で異世界転生の権利が与えられます』
『最後に。異世界転生は自分の願いを1つ叶えた状態で行うことが出来ます。
1回目の人生で果たせなかった無念を果たすために異世界転生は行われますから、何でも願いを叶えることが出来ます。もしも「お金持ちになりたい」という願いをしたなら2回目の人生では大富豪の子どもにでもなっていることでしょう。
以上で異世界転生の説明を終わります。質問はあるでしょうか?』
「ありません」
「貴方には聞いていませんっ!えーっ、質問はあるでしょうか、第三者の皆様!」
(無いよ、と心の中で叫んでみよう!)
「それなら良かったです。もしある場合は上の文をまた読み返してくださいね」
「やっと終わりましたか」
「えぇ。毎度思うんですけど異世界転生についての説明長すぎですよね?もう少し短く出来ない物ですかね?」
「それを読むのがあんたの仕事でしょうが」
「それは言わないでください・・・」
「じゃあ本題に戻るとして。あからさますぎて逆に笑えるのですが、どうして俺は10回も異世界転生を出来ているのでしょうか教えてください」
「もうちょっと演技してくださいよ・・・『あからさますぎて』って自分で言っちゃってるし・・・」
「ねぇ早く。第三者も待っていますよ」
「分かりましたからその第三者っていうのは止めてください!
貴方が異世界転生しやすいのは、貴方の運パラメータが常人の約10000倍だからです!説明終わりっ!」
「おぉー。素晴らしく分かりやすい説明で助かります」
そう。俺ことアレド・ソウファールは運が良すぎて異世界転生を10回もした男なのである。
人には、パラメータと呼ばれる目には見えない数値が存在している。
その数値は神が万物に命を与える際に自分の好きなように設定することができ、例えば人間のパラメータを
『頭脳:50、運動:80、身体:100』
とすると、
『頭脳は平均的で運動神経はやや高め、見た目はイケメン』
という人間が生まれてくる。
その設定にて、俺を作成するとき、神様は眠たかったらしい。桁を押し間違えたそうな。
・・・言いたいことは分かる。神様って案外適当なんだよ?
「さて、これで異世界転生する準備は整いましたね?それでは願いを決めて下さい」
「そのことなんですか」
「はい?」
「その願いを使って、『異世界転生』を『アストラルに異世界転移』にしてくれませんか?」
「異世界転移に?」
「はい」
「ですが・・・異世界転移にするとあなたはもう2度と異世界転生をすることが出来なくなりますが良いんですか?」
一応神様の間にはルールがあるらしく、異世界転移を1回してしまうともう異世界転生は出来なくなるらしい。
でも俺はそんなことも知った上で異世界転移がしたかった。
「異世界転生ほど・・・理不尽で報われない物はありませんから」
「・・・そうですか。分かりました。あなたの願い、聞き届けました」
そういうと俺の真後ろに転移門が表れる。
「貴方の11回目の人生、楽しんで下さいね」
「はい。精一杯楽しんできます」
俺は転移門を自分の力で開ける。
「では」
俺は振り向き、
「行ってきます」
11回お世話になった存在にそれだけを言って転移門をくぐった。