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「お約束」な少女漫画  作者: 相田 渚
第一章 物語が始まる前
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漫画での宮本茉莉花

四月は、新たに様々な組織に所属するようになる季節である。

新たな学校、新たなクラス、新たな部活、そして新たな委員会である。


茉莉花達一年A組は、ホームルームの時間を利用し、委員会に所属するメンバーを決めようとしている。

保健委員会、体育委員会、図書委員会、放送委員会、美化委員会等々、数多くある委員会はすでにほぼ委員が任命されていた。

残る委員会は一つ。学級委員会である。


その他の委員会と違い、圧倒的に活動量が多く、また責任も重いこの委員会の委員になりたいと自主的に挙手するものがおらず、最後に決めようと委員の任命は後回しにされたのだ。


これは先生が強制的に任命するか、ジャンケンとかにしない限り決まらないんじゃないかな。


茉莉花は欠伸をかみ殺しながら黒板を見た。各委員会の下には委員となった生徒二名の名前が書かれているが、学級委員会の下だけ二名分ぽっかりと空白になっている。


もし先生が強制的に任命するなら、出席番号一番の人か入試の成績がよかった人だろう。

後は可能性としてジャンケンで決めることになるかもしれない。だとしても負けて学級委員になる確率はかなり低い。


そこまで推測した茉莉花はすっかり第三者気分で、はやくこのホームルームが終わらないかと念じた。終われば、後は放課後だ。


茉莉花のお気に入りの小説家が今日新刊を発売するのだ。

今までミステリージャンルばかり書いていた作者が、新たに恋愛ものを書いたという。犯人や被害者、探偵といった登場人物達の複雑な心情を各視点で繊細に書き上げる作者だ。恋愛ものも面白くないわけがない。


はやく学校を出て新刊を手に入れたい茉莉花はそわそわと先ほどから何度も時計を見ている。


「誰も立候補しないなら、よければ学級委員になってもいいかな」


真っ直ぐピンと手を挙げ口火を切ったのは、王崎だった。


さすがヒーロー。皆の嫌がることでも率先してやろうとするなんて。

でも、王崎君が学級委員になるなら、あと一人の学級委員の枠は、ものすごい倍率になりそう。


茉莉花の予想通り、教室では女子生徒達が、王崎君が学級委員ならもう一人の学級委員は私が、と勢いよく挙手し始めた。

先ほどまで誰も手を挙げなかったことが嘘のように、今は逆にクラスの女子生徒で挙手しない人が数えるほどしかいない。

イケメンと面倒な仕事だと、イケメンに天秤が傾くようだ。イケメンパワー絶大だ等と暢気にその光景を眺めていた茉莉花だったが、ふと漫画の設定を思い出した。


いや、ちょっと待てよ。確か『スイートチョコレート』では女子生徒の学級委員は…。


「はいっ!もう一人の学級委員は、宮本茉莉花さんがいいと思います!」


結衣が挙手をしながら立ちあがった。


よ、余計なことを!


思わず茉莉花は前の席の結衣の肩を掴んでそう言いたくなったが、ぐっとこらえる。


「私より、自主的に手を挙げてる人がやったほうがいいんじゃないかな?」


そう、落ち着いたトーンで茉莉花が反論すると


「あ、宮本さんが学級委員になってくれるなら、私撤回します」


その一人の発言を皮切りに、女子生徒達が次々と手をさげていく。


なんだそのどこかでみたコントみたいなノリは!


担任はその様子に茉莉花に「皆はこう言っているが、どうする?」と問いかけてきた。


どうするも何も、そんな面倒なものやりたくないに決まっている。


『スイートチョコレート』で宮本茉莉花は王崎とペアで学級委員をしていた。

しかし、別に茉莉花は漫画通りに行動しよう等とは思っていない。

特に王崎に対しては、絶対好きになったりしないと決めている。

勝ち目のない恋をしないため、漫画と違って王崎とはただのクラスメイトの関係でいようと思っているくらいだ。

ただ、皆が学級委員を辞退し、なぜか期待のこもった視線を茉莉花に送ってくるこの状況下では、発言すべき言葉は一つしかなかった。


「私でよければ、学級委員させてください」


望んでいたわけでもないのに、漫画通りの展開になってしまったのである。


要は王崎君に恋しなきゃいいんだから。

漫画と同じ設定になったからってなんだ。


表面上はにこやかにしながら、心中で茉莉花はそうやさぐれた。

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