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「お約束」な少女漫画  作者: 相田 渚
第二章 動き始めた物語
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暗黙の約束2

完全に二人の姿が視界から消えてもなお、茉莉花は金縛りにあったように動くことができなかった。


誰もいない廊下から視線を動かすことができない。

身体の感覚も麻痺している。

クッキーの入った袋を抱えている両腕だけが、ずしりとした重みを敏感に拾いあげている。


部活に入った当初から、袋は2つにわけていた。


理由は単純で、作ったものが何であろうと、1つに収めるには量が多かったためだ。誰にあげるか等、その当初は深く考えていなかった。


しかし、4月に初めての家庭科部の活動終わりに偶然王崎と教室で会い、会話の流れで彼にお菓子を渡すようになってからというもの、なんとなく茉莉花はずっと部活終わりに教室へ向かい、王崎に部活で作ったお菓子を手渡していた。


部活終わりに教室で落ち合うことも、部活で作ったものを手渡すことも、王崎が言っていた通り、約束していたわけではない。


ただ、「部活終わりに教室で待ち合わせ、茉莉花が作ったものを王崎へ渡す」という暗黙の流れが、何とはなしに二人の間で作り上げられていたのだ。


しかし曖昧な二人の空気は、今日百瀬によって崩された。


約束を口にしなかった茉莉花と違って、百瀬は宣言通り、これから部活終わりに王崎に部活で作ったものを確実に手渡すのだろう。

その度に彼はあのチョコレートのように甘い声で、美味しいね、ときらきら微笑みかけるのだ。

茉莉花ではなく、百瀬へ。

漫画と同じように。


別に『スイートチョコレート』に描かれていたシーンを現実で目の当たりにするのは初めてのことではない。


転入してきた日も、ボールがあたって百瀬が気絶する姿も漫画通りだった。


王崎の制服についていたパンの欠片や、速水の持っていた指輪やキーホルダーといったアイテムから、漫画のワンシーンを思い出すこともあった。


ボールがあたった百瀬のために、王崎が茉莉花と一緒に本屋に行く約束を変更して去って行った時は、その後に起こるであろう描写も思い浮かべた。


ただ、ヒロインとヒーローが親しくなるシーンを、実際に目にしたのは初めてだった。


「きっついなぁ…」


漫画で見たシーンが現実になる光景は、きっとこれからもっと見ることになるのだろう。

阻止したいし、自分の恋を成就させるには阻止すべきだ。

だけど、できるだろうか。


茉莉花の頭の中を、百瀬と王崎のツーショットがぐるぐると巡る。


気持ちが落ち着かないまま、片手でまとめて適当に袋を掴むと、擦れあった袋が乾いた音をたてた。

短くてすみません。

長くなるためきりました。

今日中に次の話をあげます。

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