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「お約束」な少女漫画  作者: 相田 渚
第一章 物語が始まる前
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デジャブの正体

物心がつく頃から、茉莉花はやたらデジャブすることが多かった。


例えば、自身の宮本茉莉花という名前だったり、自身のぱっちりとした二重の目やストレートの黒髪や華奢な身体を鏡で見たときだったり、部屋の間取りだったり、街の様子だったり。ふとした瞬間に、初めて見聞きすることでも以前どこかで目にしたことがあるような気持ちになっていた。


その理由が、佐古一高校の入学式に壇上で新入生代表の挨拶を述べている王崎栄司を見た今、はっきりした。


色素の薄い明るい茶髪が、光の当たり具合によってはブロンドのようにきらきら輝いている。

すらっとした体型に糊のきいた真新しい制服は似合っている。佐古一高校の漫画に出てきそうな真っ白な制服をこんなに着こなせる生徒は他にいないだろう。

はっきりとした目鼻立ちは壇上から遠く離れた位置からでもよく見える。

ミルクチョコレートのような甘い声には、体育館にいる女性皆がうっとりと聞きほれていた。


少女漫画にでてくる王子様みたいな人だな、と感想を抱くと同時に茉莉花はある記憶を思い出した。


いつだったか、茉莉花は宮本茉莉花としてではなく、村田麻希として生きていた。

村田麻希がどんな人生を送っていたのか、いつどんな風に宮本茉莉花になったのか、それらはあまり思い出せない。

ものすごい美人なモデルだったとか、高いIQを駆使して働いていたとかそういった記憶はないため、記憶に残らないほどごく普通の人間でごく普通に暮らしていたのだろう。

ただひとつ曖昧な記憶の中で、王崎栄司が登場する漫画を読んでいたのは覚えている。


王崎栄司だけではない。宮本茉莉花もその漫画の登場人物の一人だった。


それも少女漫画の、ヒロインのライバルとして。


「嘘でしょ…」


小さなつぶやきを拾ったのか、隣に立っている男子生徒がちらりと茉莉花を見てぎょっとした顔をした。


「は、ちょっとっ、お前顔真っ青、っておいっ」


隣に立っていたが運のつき。後は頼んだ、隣の君。


衝撃の事実に耐えられなかった茉莉花は遠のく意識の中、隣に立っていた男子生徒に勝手に後のことを託した。


できれば保健室まで運んどいてね。大丈夫、村田麻希だった頃より断然軽いはずだから今の私は。

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