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「お約束」な少女漫画  作者: 相田 渚
第一章 物語が始まる前
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親睦ウォーク

前日の天気予報で、ぽかぽか陽気になるでしょうとお天気キャスターがコメントした通り、親睦ウォーク当日は五月らしいすっきりとした快晴となった。


体操服を着てリュックを背負った一年生達は、クラス毎にバスに乗り込んで山の麓を目指している。

どのクラスでもこの親睦ウォークの企画・運営は学級委員が行っているため、バスの席順も学級委員の采配で振り分けられている。

A組の場合は、普段の教室での席が自由のため出席番号順に振り分けてある。しかし、親睦ウォークの運営を任されている学級委員は例外的に前の席で二人並んで座っていた。


「一日運営頑張ろうね」


クラスの出欠をとり、今日一日の予定を皆にアナウンスしてバスが出発した後、王崎が茉莉花にそう微笑んだ。

通路側に座っている彼には陽の光も届かないはずなのになぜか輝いて見える。

こちらこそよろしくねと、茉莉花は目を瞬かせながら返した。


バスで隣の席に王崎がいることに緊張しないでもないが、それよりも茉莉花は自身の体調が不安だった。

茉莉花は朝は強いが、乗り物には弱い。

バスが出発して間もないというのに、既に少し気分が悪い。酔い止めがあまり効いていないのだろう。


「もしかして体調が悪いのかな?窓の景色みたり、寝ててもいいんだよ」


茉莉花の様子にすぐに気がついた王崎が心配そうに眉をひそめている。

彼の現地に着いたら起こしてくれるという言葉を信じ、茉莉花はこくりと頷いた。隣の王崎になるべく寝顔を見られないよう俯き、目を閉じると眠気が自然と襲ってくる。


「茉莉花ちゃん、茉莉花ちゃん」


ふわりと花の香りが茉莉花の鼻をくすぐった。ベルガモットやジャスミンを足したような甘く爽やかないい香りだ。山に到着したのだろうか。

いい気分のまま目を閉じていると、遠くでミルクチョコレートのような甘い声が再度名前を呼んだ。

名前に反応し茉莉花が目を開けると、ふと自分が誰かにもたれかかっていることに気づいた。


「おはよう、気分は大丈夫かな?」


夢見心地だった茉莉花は、王崎の顔を見て一気に覚醒した。


「お、おはよう。ごめんなさい!重かったでしょう」


王崎にもたれかかって爆睡していたことが恥ずかしくなり、茉莉花は急いで離れた。

その慌てた様子に王崎はくすくすと笑みをこぼした。


「まさか、羽のように軽かったよ」


すごい、少女漫画でしか聞かないセリフだと思っていた。いや、ここ少女漫画の世界なんだけど。


そのうち「君の瞳に乾杯」とか言いそうだなぁと茉莉花が思っていると、王崎が茉莉花に少し顔を近づけ悪戯気に囁いた。


「それに、茉莉花ちゃんのかわいい寝顔も特等席で見れたし役得だったな」


ふわ、と花の香りが鼻先をくすぐり、茉莉花は先ほどのいい香りの正体にやっと気がついた。

瞬時に顔が熱を帯びていく。

王崎はまた先ほどのようにくすくすと笑うと茉莉花から離れていった。

茉莉花はひたすら俯いて、顔の熱をおさめようとしたが、結局バスが山のもとに到着するまでなかなか熱はひかなかった。

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