ハートフル大家族の長男
やあ、俺の名前はマトデア。
周りからは親しみを込めてマットと呼ばれている。
俺は兄弟がいっぱいいる大家族の長男だ。
家に父親はいない、母親は話そうとしなかった。
もしかして何時か話してくれる日が来るかもしれない、そう信じて誰も聞かなかった。
記憶にない男を果たして父親として呼べるのかは疑問だが、何時か顔だけでも一目見てみたいものだ。
そんな父親不在の家族を俺は長男として母親が亡くなった後も支えていた。
弟や妹達は小さい頃から自由奔放で、長男の俺はよく苦労をしたものだ。
だが時の流れというものはとても早く過ぎてしまう。
今となっては弟、妹達の世話をしていたのはほんの一瞬だった気がする。
皆成長し、立派な大人になり、それぞれの道を今歩んでいる。
そして俺も自然の中で暮らすことを決め、現在近所の裏山に住んでいる。
ここの土地はとても食料が豊富で葉っぱの屋根が雨を凌ぐ為に役立つ。
最近は気温が徐々に下がり、肌寒くなり始める。
秋の訪れだ。
あまり寒くなると食料がなくなり、過ごし難くなるので俺はいそいそと食事を取って力を蓄えるていると、見てしまった。
近所に知らない女性が同じように食事をしていた。
それも絶世の美人が。
身長は俺より少しでかいが、その分足が長く、とてもスレンダーな美脚だ。
それに加え、とても澄んだ瞳。
興奮を抑えるよりも早く、俺は彼女に話しかけるべく、近づいた。
このチャンスを逃したらもう一生来ない、そんな気がしたからだ。
彼女と何か話そうとするが、言葉が出てこない。
彼女はただ食事を続けながらこちらを見つめるだけだ。
そうやってお互い見つめ初めて数分が経ってしまった。
そしたら何だか、通じ合えた気がした。
特に何を言った訳ではないが、本当にそう思えたのだ。
彼女は静かなクールビューティーだ。
それが彼女の性格なのだとこの短い時間で直感的に理解できた。
それからとても楽しい時間を過ごした。
時には食料を取り合って競争もしたし、それを分け合ったりもした。
そして寄り添い、お互いの存在を確認するかのように肩を並べたりもした。
ああ、とても幸せな時間。
心の底からそう思えた。
そんな幸福の頂点を分かち合い、共感する為に……
俺達は、愛し合った。
愛し合いながら、彼女は何度も俺を見つめ、俺も見つめ返した。
お互いの瞳に、お互いの顔が写り込む。
そしてまぐわいが終わると、彼女はそのまま顔を近づけ……
俺の首に噛み付いた。
あまりの痛みと急展開に頭がついていかない、だが防衛本能が何とか彼女を突き飛ばそうとする。
しかし彼女は俺の体をガッチリと腕で抑え込む。
逃げられない。
そんな恐怖が頭を支配する。
必死に抵抗するが大勢が非常に悪く、先程噛まれた首から力が抜けていく感覚と共に体が徐々に言うことを聞かなくなっていく。
彼女はそんな俺の心境を知ってか知らずか、御構い無しに今度は頰に噛み付いてくる。
ムシャムシャ……
どんどん……体が……
俺……死……
ムシャムシャ……
そこでマットの意識は途絶え、カマキリとしての一生を終えたのだった。
初投稿作品。
一発ネタです。
キーワードやタイトルには少々困った。
テストも兼ねての投稿。