第一戦目 「リアルRPGだと思ったらキャラメイクがあって、尚且自動的にミスってた」
とりあえず第1話です。
「嘘だろ……」
思わず呟きが漏れる。
いつもの様に登校している途中で、いきなり黎の目の前に光り輝く魔法陣が出現していた為だ。
昨日、一週間ぶりに、やっと日本に帰ってきたと思ったらこれである。正直しんどい。
ふと、目の前でキラキラと輝いている魔法陣から呼ばれた気がした。
「ちょっとくらい休ませてくれたって……」
だが、吐き出した溜め息とは裏腹に、魔法陣へと駆け寄る黎の足取りは軽かった。まるで、危ない遊びの大義名分を得た子供の様に。
魔法陣の中央に立ち、目を閉じる。
すると、驚くことに、段々と体中が透けていく感覚に襲われる。
しかしそれは気のせいなどでは無く、本当に実体が無くなろうとしていた。
徐々に薄くなっていた黎の肉体が、光の粒へと完全に分解され、魔法陣の中心へと吸い込まれてゆく。
わずか数秒後、まるで最初から居なかった様に、黎という存在が地球上から消失していた。
◇◇◇
「うぅ……」
体がゆっくりと、目を覚ます。
焦点の合ってきた瞳が最初に捉えたのは、目を瞑り、祈りを捧げる様に跪く、神官の様な姿の男であった。
後ろにも目を向けると、どうやら自分を中心として円状に、同じ様な服装の十二人ほどの男達が、祈りを捧げている様だった。
様子も服装もそれっぼいし、リアルRPG来たか。
パッと考えつくRPG主人公といえば、最初から勇者で、召喚なんてされないのだけれども。
そこは召喚モノなので、妥協して頂きたい。
とりあえず、召喚されたは良いが、誰ひとりとして目を開かないし、確認もしてこない。
話し掛ける言葉を考えながら沈黙を五分ほど味わった後、
「あのー……?」
話しかけてみたのだが、完全にコミュ障である。
それと、なぜか声が高い気がする。召喚の時の不具合とかなのかもしれない。
ちゃんと召喚してくれよ……。
「おぉ! 貴方様が、我らが祈りに応じて下さった勇者様なのですね! なんとお見目麗しい……」
「う、うん……ありがとう……?」
何故俺は感謝の言葉を述べているのか……
改めて自分のコミュニケーション能力の低さに辟易させられる。
「ところで……」
「ん?」
「僭越ながらお伺いしますが……その装い、あちら側では貧しかったりするのではございませんか?」
「はい……?」
意味が分からず、とりあえず「装い」と言うからには服の事だろう、と確認すると。
とりあえず分かった事が二つ。
一つ目は、体が小さくなっていた事。
声が高かったのも、これが原因と見て間違い無さそうだ。
そして、二つ目は、服のサイズが合ってなかった事。
なるほど。小さな子どもがだぼだぼな服を着ていたらまず、盗んできたのか、もしくは買ってもらえなかったのか、と想像するだろう。
「……だぼだぼな服?」
迫る危機に気がついたその瞬間、制服のズボンとトランクスが床に落ちたのであった。
◇◇◇
「うううぁぁぁぁ……」
黎が召喚されたのは、城の地下の召喚室であった。
あの後、神官が入口の兵士に、サイズの合う服を調達して来るように命令し、黎はそれまで個室で休むことを薦められていた。
「なんで……」
そして今、誰も居ない部屋のベッドの上で、だぼだぼな(そういう性癖の人が見たら若干アウトな感じの)高校のブレザーを上だけ来た「少女」が、体育座りで俯いていた。
「ショタじゃなくてロリなのよぉぉ……」
そう。何となくは、感じていたが、信じたくはなかった予感。
ズボンとトランクスがキャストでオフ的なことになった事により、確信に至ってしまった事実。
男性を象徴する、エクスカリバーの消失。
それすなわち、女性であるという事である。
「初めて見た生の女性の体が自分とか……」
しかも、かわいいから手に負えない。
……自分の事だけど。
最後、こんな感じで良いのか……