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再成勇者の代理戦線  作者: 豆鋼
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プロローグ -ある日の少年-

初めまして。

豆鋼(まめこう)と申します。

拙い文章ですが、暇潰しにでも読んで頂けると嬉しいです。

 乾いた荒野に突如、刃の様な風が吹く。

 飛翔する風刃は、直線上の岩を真っ二つにし、そこで消滅してしまう。

 半分になった岩の影から、銀色の影が飛び出す。

 銀色の影──蒼の紋章を胸に持つ法騎士の手に薄青い光が灯った瞬間、お返しとばかりに、9つもの氷の槍が放たれる。


 その数の多さに一瞬、もう一人の法騎士の動きが止まる。 だが瞬時に軌道を見切り、盾の中心を槍に当て、強度で劣る氷槍を粉砕する。



 8本目までを順調に防いだ、胸にオレンジの紋章を持つ法騎士は、足元への配慮を怠ってしまっていた。最後の1本がその右足に突き刺さる。

 砕け散る鎧。 だが、魔法に対する耐性を付加されたそれは、(あるじ)へのダメージを、軽い切り傷程度に抑えた。


 足への攻撃を受けてしまい、体勢を崩したオレンジの紋章を持つ法騎士。


 そこへ、氷槍とともに詰め寄っていた、蒼の紋章の法騎士のシールドバッシュを続けて食らい、仰向けに倒される。



  胸に輝く蒼の紋章。 オレンジの紋章の法騎士からすれば、敵国の兵士である。 それが、手のひらを向ける。


 すると、ガントレットに覆われたそこに複雑な幾何学模様が浮かび上がった。

 氷槍を放った時には薄い青色であったのが、今度は白色の光が灯る。


 それは、先程とは別属性の、魔法を呼び出す合図。



 法騎士のガントレットから衝撃波が放たれた、次の瞬間には、オレンジの紋章の騎士の意識は刈り取られていた。

 ダメージは殆ど無いだろうが、一応確認をする。


 相手の怪我が軽い事を確認した、もう一方の法騎士は。


 この戦いを終わらせる為に、頭──つまり、王を潰しに向かうのだった。




 ◇◇◇




 数時間後、蒼い紋章の法騎士は光に包まれていた。


 足元には、先程の法騎士と同じオレンジの紋章の鎧を着込んだ、壮年の男が倒れている。


 胸の紋章は同じではあるが、鎧の装飾は段違いに華美であり、剣や魔法に対する防御力も高い鎧。

 そんなものを一般兵が身につけることはまずありえない。

 親衛隊ですら、これ程までの装飾は無かった。


 そう、つまりこの男こそが、オレンジの紋章の部隊を、自ら前線で率いていた、王だったのである。


 剣の扱いにも熟練しており、なかなかに骨の折れる相手であった。

 だが、その王を討ち取った事により、帰還条件がクリアされる。


 ここで、このままこの世界に留まるか、元の世界へ帰還するかを選択する。

 

 元の世界へ戻るという意思を強く心に念じた、

 次の瞬間、その視界は暗転した。




 ◇◇◇




 次に目を開けた時、法騎士は鎧ではなく寝間着を身に纏っていた。

 スマホで設定しておいた目覚ましのアラームが、耳に痛い。


 あんなに強い王を倒した報酬がこれならば、キレていただろう。

 というかキレそうであった。


 今の時刻はおそらく6時。 アラームはそう設定しておいた筈だ。

 しかし窓から見える景色は夕暮れ。

 つまり、6時は6時でも18時であった。


 少年の通う高校は、完璧に放課後である。




 ふと、鎧の重量感を思い浮かべる。

 あれは夢だったのだろうか。

 答えは否。

 あれは、異世界召喚による本当の戦いであった。


◇◇◇


 空想上の物だと思われていた、異世界召喚。

 それは、人々の人生を変えてしまった。

 少年は、学校にもなかなか通えなくなり、友達もできにくくなった。

 そこで、異世界召喚を憎んだのか? と聞かれれば、それも少し違うような気がした。

 アニメやゲームは好きであったし、そういうライトノベル作品も沢山読んでいた。 凄く、異世界召喚に憧れてもいた。

また、友達も、とびっきりに仲がいいヤツが一人居た。 それで十分であった。


 少年にとって異世界召喚とは、

 基本的に楽しいけど、たまにやりたくない時もある。


 そんな程度の感覚でしかなかった。


◇◇◇



 王を倒した事により、発生した報酬は、というと。

 少年の手の中に、報酬用召喚符がしっかりと握られていた。

 これを破けば、報酬が出現する。 しかし困ったことに、抽選制であった。


「何が出てくるか分かんないし……今は止めておこう」



 ふと。

 胸の傷口から血が溢れる王の姿が、脳裏によぎる。


「……」


 人を殺してしまった。

 異世界人であろうと、人には変わりない。

 ただ、自分が今ここに居ないかもしれなかった事を考えると、


 死ななくて良かった。


 という感情が上回ってしまうのも無理は無く、むしろ当然とも言えた。



 ◆◆◆


 あぁ、また学校休んじまった。

 マジで単位が危ない。




 超が付くほどの召喚体質であった、少年は。

 今日も、学校へ行けなかった。



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