07 修羅
別視点なのでやや短いです。
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ラダムが開拓に乗り出している頃、ベーンベルト本国では、モルトもまた忙しく働いていた。
もともと領主の権限が強かった王国で大量の処刑者が出たものだから、それを管理する残された者にとっては、控えめに言って地獄である。普段の業務にくわえ、フォート家やオニール家などの有力領主から取り上げた利権を組み込まないといけない。上がすげ変わった領民達への説明やら引き継ぎやらで、ここ数ヶ月、文官達は休みなく働いていた。辛うじて休みといえるのは、馬車での移動中ぐらいなものである。
今日もまた、現地の視察から帰った矢先に国王に呼び出されたモルトは、王城への道を急ぐのだった。
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「長旅ご苦労だった。」
膝をついて報告する私にヴィーツ陛下は形ばかりの労いの言葉を投げかける。
「ハハッ!」
しかし、逆らえない。愚鈍な私はあの日まで陛下を疑うことすら出来なかった。その代償がこれだ。領地を抑えられ、どんな非情な命令でも聞かざるをえない。私の管轄の領主たちからの、恨めしい表情が頭にこびりついて離れない。どうか許して欲しい。仕方がなかったで済まされることでは無いが…、それでもこの自責の念は私を苦しませ続けていた。
「君は聡明だ。私は才あるものを好む。これからもよろしく頼むぞ?モルトよ。」
「ハッ…!」
なまじ陛下の目に止まったばかりに、私はこの修羅の道を歩まねばならない。おそらく、ロクな死に方はできないだろう。
そんな私の唯一の希望。
「心配せずとも良い。君の妹君は元気にやっている。最も、いつまで続くかは君次第だが…。」
「承知しております…。」
たとえ、全てを敵に回そうとも、守らねばならないものがある。
私は、しめやかに謁見室を退去し、執務室へ、すなわち地獄へ向かった。
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