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02 モンスター

 第1話に引き続き投稿となります。

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 開拓1日目。


 とりあえず景気付けに開拓団員を浜辺に並ばせて演説するとしよう。簡易な台座に登ってあたりをぐるっと見回す。


 海のちょっと離れたところには乗ってきた移民船。浜辺には果物がぶら下がった木が何本も生い茂り、河口では魚が飛び跳ねている。後ろを振り向けば平原が広がり、奥には森林、そして山岳地帯まで見えるときた。こりゃ期待しないほうがおかしいな。うん。


 目線をもどすと、整列が終わったようでトーマがこちらに目配せしてきてる。

 さて、なんと言ったもんかな。


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 上陸してすぐ、団長が演説するって言うんで浜辺に集められた。久しぶりの陸地、久しぶりの川のせせらぎ、何より、生きて上陸できたのが嬉しい。正直、船旅の途中で難破したり疫病で死ぬもんだと思ってた。船で死んだら海に放り込まれて墓にすら入れない。一度も嵐に出くわさなかったのは幸運だったに違いない。だが、ここまでくりゃそうそう危険なことは無いはずだ。


 そう思った矢先アレが来たわけよ。


                       ~とある開拓団員の話~


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「伏せて!」


 トーマの叫びにとっさに前に倒れ込む。肩を何かが掠め、風切り音が耳に入った。身を低くしたまま顔を上げる。そして護身用のナイフを確かめつつ襲撃者を正面に捉えた。


「グルルルルルル…。」


 モンスター、虎種一匹、凶暴、やや大きめってところか。


 歓迎してくれるじゃないか畜生め。


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 ベーンベルト王国の歴史はモンスターとの戦いの歴史でもある。

数百年前の混沌の時代、かつて人間はモンスターから隠れ、逃げるようにしながら暮らしていた。モンスターに勝てるものなどいない。そう思われていた。


 あるとき、とある集落に英雄が生まれ落ちた。名をベーンという。

豪腕と、類まれな判断力で瞬く間に村の周りのモンスターを滅ぼした彼は、村の者に認められ、村長となった。彼は皆にモンスターとの戦い方を教え、討伐隊を設置。さらに遠方へ進出した。ベーンはモンスターを倒しながら、近隣の集落を次々と併合していった。そしてまた、戦い方を教え、モンスターを倒した。


 数年後、ベーンの抱える領土は広大なものとなり、討伐隊もまた精強となった。しかし、多数の集落が合わさって成立したため、度々メンバー同士が領土拡張の方針を巡って対立した。拡張する方角、順番、またそもそもの拡張の可否すらも議題に上がり、このままベーンの作り上げた楽園は分解を始めるかに見えた。


 これを重く見たベーンは民衆を一箇所に呼び集め、次のように宣言した。


1.ベーンはここにベーンベルト王国を建国する

2.ベーンは国王として現在の領土を守るために戦う

3.各自が自発的に領土を開拓することを認める

4.自ら領土を開拓した者は、その土地を治める義務と権利を持つ

5.互いに争うことがあれば国王がこれを鎮圧する


 かくしてベーンベルト王国は成立した。英雄ベーンは一線から退き、国内の安定にその力を注ぐこととなった。モンスターの脅威を退け、自分だけの土地を獲得せんとする勇気ある者は、やがて領主と呼ばれる特権階級となり、民と、それを守る領主、そしてそれらを統べる国王という封建体制が確立したのである。


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「ガアァッ!」


 目の前の虎は躱されたことに腹を立て、すぐにでもこちらに飛びかかろうとしている。ナイフを鞘から抜きつつ構えを取る。この状況でナイフ一本は流石にキツイかな?まぁやるだけやってみるか。


 叫び声を上げながらボートへ我先にと駆け込む浜辺の開拓団員。その場でオロオロしてる奴もいれば、加勢しようとするタフなのも居る。トーマは俺を残して退いては面目が立たないと思ったのかジリジリと後退しつつも虎から目を離さない。


「トーマ、武器!」

「…わかりました。」


 そう言うとトーマは一目散に走りだした。それでいい。トーマのことだ、きっとわかってくれるだろう。


 後は武器が届くまで俺と力競べしてもらおうか。


「ランサム地方領主、ラダム・フォート参る!」


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