01 夜明け
初投稿です。
歴史系の作品となりますが、恥ずかしながら大学で歴史を専攻してきたわけではないので、学術的におかしいところがあるかもしれません。そこらへんは異世界ということで生暖かい目で見守っていただければ幸いです。
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薄暗い夜の海を、水平線の彼方を、じっと見つめる一人の男がいた。
開拓団団長、ラダム・フォート。ところどころ傷跡の走る屈強な両腕を胸に組み、真正面から潮風を受けている。時折あがる水しぶきにくたびれた軍服を濡らしながらも、それを全く意に介さない。
揺れる甲板の上、彼は予感していた。今日がその日だと。
「団長!」
見張り台の船員が何かに気づき声を張り上げる
わずかに白み始めた空、前方に浮かぶ黒い影。新大陸の姿がそこにあった。
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朝8時、沖に停泊した船団からボートの列が伸びる。俺はその先頭をあくびをこらえながら務めているわけだが…。やっぱ夜更かしはダメだな、うん。カッコつけても眠くて眠くて仕方ない。
「ラダム様、やっとつきましたね!」と、外套に身を包んだ痩せぎすの男が話しかけてくる。こいつは俺の右腕、トーマ。喧嘩は苦手だがテキトーに指示してもうまい具合にやってくれるので便r…いやとても頼りにしている。
「一ヶ月、いやもうなんだか1年ぐらい船の上にいた気分だぞ…。」
「仕方ないですよ。今日の今日まで保存食生活でしたから。」
船旅は辛い。食料はビスケットや干し肉、あとは保存が効くビールが水代わりに積まれているぐらいで、そのビスケットも何週間か経つといたるところ虫だらけだ。当然、水浴びや洗濯は不定期に降る雨の時だけだから、不衛生極まりない。ストレートに言えば、臭い。こんな状況は、とりわけ、文官連中のようなもやしっ子達には辛かっただろう。例えばそこの…
「うう…。陛下…、私は、アルマは、ついに試練を耐え切りました…!うぷ…」
…そこの監察官サマには辛かっただろうなぁ。うん。
「大丈夫ですか?アルマ・フィラン監督官。顔色が悪い。」
海に胃の中身をぶちまけそうになっている彼女に一応声をかけてみる。が、
「うう…。私に優しくして…、ポイントを稼ぐつもりだろう…。残念ながら、くっ…、そうはいかないぞ…。うぷ…」
これである。弱々しくも敵対視を解かないその姿は、イラッとしつつも微笑ましい。うん、微笑ましい。
ボートはそんな3人とお供を載せ、進んでいく。
数分後、俺は浜辺に、すなわち新大陸に、その第一歩を踏み出したのだった…。
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2~4話も一緒に投稿していきます