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ファイナルエデン  作者: 一倉弓乃
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7

 シャワーを浴び終えた僕が寒がって布団にもぐっていると、渋澤さんは呆れて、部屋にヒーターをいれてくれた。

「…風邪でも召されましたかねえ。」

「…渋澤さん、何か軽い食べ物があったら欲しいんだけど。…昼、ちょっと早くくっちゃったから。」

 先輩が言うと、澁澤さんは時計を見た。

「…わかりました。家内に言って、何か、サンドウィッチでも。」

「あ~、いや、なんか保存食の菓子かなんかでいいよ。」

「でもそれじゃ夕飯までもちませんよ?」

「いや、いいんだ。…できれば甘いものがいい。」

「…そうですか。わかりました。じゃ、紅茶かなんかとお持ちしましょう。」

「すみません。」

 澁澤さんがいなくなると、先輩はベッドにちかよってきて、僕のおでこにさわった。

「…だいぶ寒い?」

「…あ、いえ、大丈夫です。…起きます。」

「…いいよ、部屋があったまるまで入ってな。…茶が来たら、飲もう。少しはましになるさ。」

 先輩はそういって、愛猫にいつもしているのと同じ手付きで、僕の頭やら顔やらを撫でた。

 …先輩は僕の寒さに気がついてる…。

 なんとなくそう感じた。

 しばらくして、澁澤婦人が、テーブルにお茶の用意を整えてくれた。

「尾藤さん、大丈夫ですか。お風邪でも召されたようだと主人が…」

「あ、大丈夫です。平気です。」

 僕は慌てて布団から抜け出した。

 夫人は心配して、僕に半纏を着せた。

「…半纏ってあったかいですよね。」

「そうでしょう?ずっと着ていてよろしいのですよ。」

「はい、ありがとうございます。」

 ラム酒の染みたフルーツケーキと、香りのいい紅茶を、先輩と2人でいただいた。

 先輩はテレビをつけた。

 …ザ-っとノイズが流れた。

「…ちっ、おちてやがる。…雨だから切れたな。」

 「外」では、天候が悪くなると途端に電波が悪くなるのだそうだ。

 諦めてテレビを切った。

「…猫、いないんですか、ここんち。」

「…猫好きなのはおふくろだからな。親父は猫はかわねえよ。」

「…そうですか。少し、寂しいですね。」

「…そうだな。」

 いつもなら日がな一日猫と遊んで過ごす2人だ。

 妙に手持ち無沙汰だった。

 そのときなにか轟音が響いた。

 僕はびっくりして窓にかけよった。

 すると先輩が言った。

「今の、雷だよ。…初めて聞いた?」

「雷ですか…あれが…」

 言い終わらないうちに閃光が視界を反転させた。…まもなく轟音。

 雨は激しくなっていった。

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