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山を下りたあたりで、空がにわかに曇りはじめた。
「…まずいな。急ごう。」
先輩がぽつりと言った。
2人で急いで、別荘へ戻った。
ぽつぽつ降り始めたところで、無事戸口にたどりついた。
「ギリギリだったな。」
溜息をついて呟くと、戸があいて渋澤さんが出てきた。
「陽介さん! まにあいましたか。よかった。今迎えに行こうとおもっていたんですよ。…早く入って下さい。雨戸を閉めますから。」
僕らが中に入ると、澁澤さんは急いで玄関口のスイッチを押した。
「…ぬれませんでしたか?」
「ああ、大丈夫。」
「でも一応、シャワーを浴びてください。髪が変色しては大変ですから。」
「…そんなに強いんですか、最近は。」
「さてね。私はなったことないけれども。でもたまに色が抜ける人もいるらしいですよ。エリアの人たちは雨なんかあたったことないでしょう?何かあったら旦那様にしかられてしまいますから。」
澁澤さんに追い立てられて部屋に戻ると、ちょうど窓の外に対酸性の雨戸が下りるところだった。もっとも雨戸も硬化樹脂の一種らしく透明だったので、少し暗くなるほかの変化はなかった。
「春季、そこのシャワー使いな。俺、隣使うから。」
先輩がクロゼットからバスタオルを出して、僕に投げてよこした。
土いじりをしたので、髪も爪もどろどろだったし、汗もかいていた。
僕は大人しく従って、シャワー室を使わせてもらった。
…急に、寒くなった。