表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ファイナルエデン  作者: 一倉弓乃
2/12

2

 すでに日がくれて暗くなった駅前に、管理人の澁澤さんという初老の男の人が迎えに来てくれていた。

 「外」では出歩くのは夜が普通だ。きれいな街灯がともっていて、買い物客で駅前は賑やかだった。

 先輩は丁寧に挨拶し、僕を友人として澁澤さんに紹介した。

 澁澤さんは歓迎してくれた。車で来ているので乗るようにと言った。

 僕らは車に乗り、久鹿家の別荘へ向かった。

 到着してみると、暗くてよく見えなかったが、どうやら随分大きな屋敷らしかった。

 先輩の住んでいる例の日本家屋より、だいぶ広い。

 中に入ると、内装はアンティークな家具で統一されて、ちょっとした洋館の風情だった。

 窓は一応全部紫外線カットにしてあるので、朝になっても心配しなくていいと澁澤さんは言った。

「それにこのへんは周りが森だからねえ。森は紫外線を随分はじくんですよ。…ところで日曜日までおいででしょう?陽介さん。昼飯まで食べておいきになったら。」

「あ、いや。日曜の午前には出ますよ。月曜は学校だし、日曜の夜に買いたいものもあるから。」

「そうですか。じゃあ日曜の朝食まで御用意いたしましょう。」

「有難うございます。」

「ゆっくりなさっていって下さい。」

「ええ、そうします。」

「夕飯は7時頃にはたべられますよ。用意ができたらお呼びいたしますから。」

「お願いします。」

「…尾藤さんもくつろいで下さい。」

 そう声をかけてくれる澁澤さんに、僕はうなづいた。

「…有難うございます。」

 部屋、どちらを使われますか、と澁澤さんがたずねると、先輩が「二階がいいかな」と言って荷物を拾い上げた。

「御一緒のお部屋でよろしいんですか。」

「ああ。」

 先輩はきっぱりそう答えて、僕についてくるよう促した。僕は荷物を肩から下げて、小さな箱を大切にかかえて、階段をのぼった。

 部屋はホテルのツインルームみたいに、きれいなベッドが二つならんでいた。お茶をしながらカードが楽しめるほどの大きさの円テーブルのセット、化粧台、それにテレビもあった。窓には分厚いカーテンがかかっている。

「トイレは廊下でて一番奥。ここのドアはクロゼットじゃなくて、シャワー室な。」

「わっ…すごいや、個室にシャワー付きなんだ…。」

「ああ。クロゼットはこっち。…コート脱ぎな。かけるから。」

 先輩はそういいながら自分の紫外線遮光コートを脱ぎ、ハンガーにかけて収納している。僕は箱をテーブルに置き、コートを脱いだ。

「…そっちおいとけば。」

 先輩はコートを受け取りながら、ちょっと化粧台のほうをさした。…僕は黙って、きれいな布で包んだ丈夫な紙箱をそちらに移した。

「…寒かったらここにローブ入ってるから。…いや、お好みで、浴衣と半纏でもいいけど。」

「はい、大丈夫です。」

 部屋の中の温度はちょうどよかった。

「…なんか、親父が商用で使ってる家なんだよ。…ホテル代わりってーか。」

「ああ…それで…」

 あいまいな先輩の説明に僕は曖昧に応じ…一通り到着作業が終わると、とすっ…とベッドに腰掛けた。

 旧式のゼンマイ時計が動く、コチコチという音がした。

 先輩はテレビをつけて、テーブルのところの椅子に座った。

 少ししたところで、澁澤さんの奥さんが、柔らかい餅菓子と緑色のお茶を持って来てくれた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ