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…酔っぱらっていたのだと思う。僕は、酔っぱらっていないつもりだったけど。
汚れたグラスやオードブルの皿…最後に食べたラーメンの小鉢…後かたずけは夜があけてから…という話になったのかどうか。
物凄くきばって歯磨きしたところなんかはよく覚えているのだが、気がついたら僕はベッドにいて、部屋の電気は消えていた。
そして僕は冷たいベッドに仰向けになり、天井に映るTVの青い光を見ながらこんなことを考えていたのである。
(先輩僕をこんなところにつれてきて…一緒の部屋で寝て…何もしない気?)
(…僕の覚悟に報いてよ…)
…覚悟なんかした覚えはないので、多分やっぱり酔っていたのだろうと思う。
それで次におぼえているのは寝ている先輩に布団の上から乗っかっているところだ。
流石に先輩は目をさまして…。
僕は何か言われたことが気に入らなくて延々からんだ。
そうしたら先輩が困り果てて、僕を布団に入れてくれた。
…お前、俺に触らないようにしてたじゃん。だから…なんかそういう…気分じゃないって…感じなのかと思ってたのに。俺が悪いわけ?
そう言われたような気がする。
なんと答えたのか覚えていない。
…多分とんでもないことを次々に訴えたのではないかと思う。
断片的に覚えている。先輩の体温や…手の感触。
TVは暗闇のなかでずっと青い海を映していた。世界に残された最後の海を。そのなかで青い冷たいからだをくねらせる、美しい魚たちを。
外はずっと激しい雨が降り続いていた…それも知ってる。
けれど幸か不幸か…その肝心の部分はあんまりよく覚えていないのだ。
翌朝目覚めると雨は小降りになっていて…そして僕は、先輩のベッドに一人で寝ていた。
ちなみに、全裸だった。