不純一途な普通の俺の日々
はい、まさかの新作です。
しかも生徒会系。
でも生徒会要素全くない…(泣)
まだ、ね。
転校…それは友達との別れを意味する言葉。
俺には全然縁遠かったこの言葉。何せ俺は転校どころか引っ越しもしたことが無い。
そんな俺が珍しい経験をした…それが「転校」
友達との別れもあった…仲のいい友達との別れはやはりつらい…
「…むふふ」
辛い…が!
「むふふふふ」
今の俺の心は全然悲しくない。
何が楽しくて男子校通いだ!?
女の子いないんだぞ!?
文化祭の時にいろいろ頑張るぐらいしか無かったんだぞ!?
「あぁ…そんな俺に女神がほほ笑んだ」(※外で一人でしゃべってます)
俺はとうとう共学校に通えるようになったのだ!
おっと…まだ気が早いな。
今は登校中だ。特に同じ学校の女子にこんなところを見られてはいけない…
だが俺は重要なことを忘れていた。
自分が中学から4年間男子校通いをした理由を…
そんな俺が校門の前に来た時、一人の女の子が目に入る。
「…!!」
腰まであるストレートロングの黒髪。
端正な顔立ちだが、凛としているその表情。
出てるところは出て、締まっているところは締まっているそのスタイルの良さ。
そして、上品な振る舞いと服装は全然下品に感じない。
俺は。
「惚れた」
今、目の前を通り過ぎようとしているその女の子に俺は一目ぼれした。
すると、何やら衝動が抑えきれなくなってきた。
俺は体がうずうずし始める。
「す、好きだ~~~~~!」
そうして俺はその女の子に背中から抱きついていった。
「キャッ!」
「おお、やっぱり華奢だね! でも胸は出てるじゃないかもみもみ」
俺はその女の子の胸をもみながら冷静に物事を見ていた。
「うん、完璧だよ。やっぱり好きだ!!」
俺は少女の肩や腕など、あちこちを触ってみて評してみる。
「…」
プルプルと少女が震えだす。
「ん? 寒いの? 俺がもっと強く抱いて温めて…」
「…変態!!」
「ボグァ!!」
俺はその女の子の拳を顔面に受け、吹っ飛んでいった。
「い、痛いぜ…」
「あなた。自分が何をしたのか分かってるの!?」
その女の子が尻もちをついた俺を思いっきりにらみつける。
「何かそんな目で見られると余計にゾクゾク…」
「黙って」
「あ、はい」
「…貴方、見ない顔ね。でも学年章は2年だから、もしかして転校生?」
「おお! 俺のことは何でも分かってしまうのか! さすがっ!」
「黙って」
「あ、はい」
「…はぁ。まさか今日来る転校生ってこの子だったの…」
女の子は難しい顔をして考える。
「お嬢さん。そんな悩まないで。僕がその悩みを解決してうぼぁ!!」
さらに一発拳が顔面に飛ぶ。
「だから黙って」
「どうしたこの騒ぎは!?」
そんなとき、もう一人の女子生徒が俺達のところにやって来た。
彼女が来て、辺りはさらに静まり返る。
「あ、渚先輩」
風紀委員の腕章をしている彼女が俺の元に来た。
「転校生が少し問題を」
「何?」
渚先輩と呼ばれる女性が俺のことを睨みつける。
「問題って…その女の子に愛の告白しただけですよ」
「嘘言いなさい! 私の身体に抱きついていろいろ触ってたでしょ!」
ピクリと渚先輩の眉毛が動く。
「まぁ好きな女の子のことは全部知りたいものさ」
俺はフッと笑いながら空を見上げる。
「分かってるの? アナタのやったことはれっきとした「痴漢行為」や「セクハラ」に分類されるものなのよ!!」
「そうなのか!? 俺転校早々逮捕は嫌だ!! どうせ逮捕されるならもっといっぱい触りたい!」
「お前」
「ん?」
そんなとき、目の前まで例の渚先輩がやって来た。
「え? 何がどうかしあぼぅ!!」
本日3回目の拳は鳩尾を直撃した。
「転校早々問題とはなかなか度胸があるじゃないか」
「ゲホッゲホッ!! い、いきなり何しやがる!!」
俺は渚先輩を睨みつける。
「ほう。私とやるのか」
「性行為はご免だが、喧嘩ならやってやるぜ!」
「破廉恥な…! いいだろう。私が成敗してやる。蓮見、お前はもう教室に行け」
「え、ええ」
あの俺が一目ぼれした女の子、蓮見というらしい。覚えておこう。
彼女は少しこちらを見てから、平然と立ち去っていった。
「さぁ決着の時だぜ、渚先輩!」
「かかってこい」
「言われなくてもかかってやるぜ!!」
俺はパンチを二、三度繰り出す。
なお、俺に格闘経験ありという設定は無い。
「…へなちょこパンチだな」
渚先輩は俺の本気パンチを片手で全て捌いてしまった。
「なんだと…!!」
「ハッキリ言って並以下だな」
「な、何だとう!! 俺だって捌いて見せるぜ! さぁ掛かってごぅぁ!!」
俺の足にローキックが入る。
「ひ、人が喋っているときに卑怯だぞ!!」
「いや、勝負の最中に構えを解くお前が悪い」
「ぐっ…だがな! お前のヘナチョコキックも並以下じゃねーか!!」
嘘です。めっちゃ痛いよあのキック。
俺は精いっぱいの強がりで耐えてみる。
「ほう。気に入ったぞ。弱音を吐かないのか」
「はははどうだ! 降参するなら今のうちだぞ?」
「ならば、一瞬で終わらせよう」
「え?」
俺の意識はそこで途切れた。最後に見えたのは、俺の横顔を捉えた足と、ヒラリと見えたスカートの中身だけだった。
そこで思い出した。何故俺が男子校に通っていたのか、その理由を。
俺は好きな女の子が出来ると、その女の子に抱きついてしまうからだ。
「なるほど」
俺は理解した。ここは保健室のベッドの上だと。
時計の針を見てみるが、まだ朝のHRは始まっていないようだ。
「そして2なるほど」
俺はあの渚先輩に負けた。一瞬で。
「そして決めた」
もう渚先輩にかかわるのは止めようか。
痛いもん。
俺は保健室から教員室まで歩く。
幸いなことに、保健室から教員室はすぐだった。
「失礼します」
「…」
俺の顔を見た途端、教師のほとんどが顔をしかめた。
おおかた、朝のあの騒ぎを聞いて、頭を痛めているのだろう。
だが安心するがいい。俺は問題児とは程遠い。
「君が柊和人君ね」
「えーと」
俺に話しかけてきたのは、若い女教師だった。
「私は三波奈美。貴方のクラスの担任よ」
「おおなるほど」
「貴方が来て頭痛めてる人が多いかもしれないけれど、私は歓迎するわ」
「おお素晴らしい」
「何となく面白くなりそうじゃない♪」
「おおありがとう」
俺とミナミナ先生(※愛称)は少し会話を交えた後、一緒に教室に向かうことにする。
「まぁクラスのメンバーは賑やかだし、貴方の期待に添えると思うわ」
「それは楽しみだ」
俺とミナミナ先生は一緒に教室に入って来た。
その際、みんな急いで席に着くのだが、それと同時にほとんどの人間が俺を凝視する。
なお、女子はほとんど敵意むき出しであるが。
「はい注目。もう学校の有名人だと思うけど、今日からクラスに新しい仲間が増えましたよ」
「え、えーと…」
ヤバい…こういうの慣れてないんだよな。
普通に自己紹介すればいいのか?
「きょ、今日からこのクラスで世話になる? 柊和人です」
俺の自己紹介に、男子だけ拍手が飛ぶ。女子はほぼ拍手しない。
…おかしいな。俺何かまずいことでも…
そのとき、俺の眼に例の彼女が映った。あの女神様だ。
「あ、あなたはっ!!」
俺は彼女を指差しすぐさま彼女の元へと駆け寄った。
「まさかあなたと同じクラスになれるとぅぼあぁ!!」
俺が抱きつく寸前に、横から別の生徒の蹴りが頬に入った。
「い、いってぇ…」
また意識を失うところだった。俺は蹴った超本人を尻もちをつきながら見上げる。
「えーと…誰?」
「アンタなんかに名乗る名前なんて無いわよ。変態」
「なんだと!!」
俺は立ち上がって彼女を睨む。
「何で俺が変態だって知ってるんだ!?」
「朝といい、今回といい、アンタを形容する言葉なんてこれしか見当たらないわよ」
「ななな、なるほど…」
俺は再び尻もちを着こうとするが、教師に止められる。
「はいはい。騒ぎは止めましょうね。それと、和人君の席は地べたじゃ無くてあっちの席よ」
「ガーン!!」
俺はミナミナ先生が指差したその席を見て絶望した。
「一番遠い!!」
「蓮見さんと佐久間さんの懇願でね、出来るだけ蓮見さんと一番遠い席にしたの」
「だ、誰だその二人は!? しかも一人は好きな人と同じ名前じゃないか!」
俺はミナミナ先生に聞く。
「佐久間智美さんがさっき貴方を蹴飛ばした人で、蓮見まやさんが貴方が抱きつこうとした人」
「何!? 蓮見まやさんというお名前なんですね!?」
「ち、近寄らないで!」
「変態!」
俺がまやさんに近づこうとしたら、拳と蹴りが共に顔面にヒットした。
俺今日何回ボコられるのだろう…
「えーと、青島さん」
「は、はい」
「委員長だから、柊君が分からないところがあったら、いろいろ教えてあげてね」
「は、はい…」
地味な委員長、青島裕子は俺を見て不安そうに返事をした。
「ミナミナ先生、裕子にあの変態を近付けるのは危険です!」
蹴り女の佐久間智美がミナミナ先生に意見を言う。
「これも委員長の仕事です」
「しかし!」
「ならあなたが柊君にいろいろ教えてあげてはどう?」
「う…遠慮します」
「よろしい。柊君は早く席について」
「はい」
こうして、長い長い朝が終わっていった。
なお、女の子に殴られるのも悪くないと思いつつある俺でした。
お昼休み。
女子生徒は全然俺に近づいてこなかったが、男子生徒は好奇心から次々と近づいてきた。
「お前やるなぁ。才能あるよ」
「うん?」
最初に俺に話しかけてきたのは、ごく普通の容姿の男子生徒だった。
「あ、俺の名前は工口大輔って言うんだ。お前凄いよな。あの蓮見まやにセクハラするなんてな」
「何かすごいのか?」
「彼女はいいところのお嬢様で、学園のアイドルみたいな感じだ」
「さっすがまやさん。やるなぁ」
「いや、君はまずいことをしてしまったのだよ」
そしてもう一人の男子が話しかけてきた。
「僕の名前は太田九郎。君と志を同じくするものだけど、これから君は大変な目に遭うだろうね」
「どういうことだ?」
だが、俺の質問に答えたのは、身長が凄く高いゴリラみたいな男だった。
「俺は魚住剛憲。彼女…蓮見かぐやは学園でも人気が高く、親衛隊もいる」
「つまり君は学園の女子だけでなく、男子までも敵に回したってことだよ」
「そ、そうなのか…」
転校早々に俺の学園生活は前途多難になってしまった。
「柊和人!!」
そんなとき、廊下から野太い声が聞こえてきた。
「やばっ! おい、柊和人…めんどくさいから和人って呼ぶぜ。奴らが親衛隊だ。捕まると厄介だ!」
「ど、どうすればいいんだ?」
俺はパニックに陥って慌て始めた。
「とりあえずあそこに行こう!」
「あそこ?」
「いいから着いてこい!」
「うわっ!」
俺は魚住剛憲に抱え上げられ、工口達と廊下へと飛びだした。
「お、お前たちは!」
「へへーん。俺達に近づくとモテなくなるぜ~!」
「に、逃げろ!!」
よく分からないやり取りを工口達と親衛隊がしていたが、理解できなかったので俺は呆気にとられる。
そして親衛隊が逃げているうちに俺は、別の部屋へと連れて行かれた。
「ふう。まぁここまでは追ってこまい」
「あのさ、ここどこだ?」
俺の質問に、3人は待ってましたと言わんばかりに顔を明るくする。
「よくぞ聞いてくれた!」
「我らモテない三傑…エロ!」
「オタ!」
「ゴリ!」
「…え?」
工口がエロといい、太田がオタといい、魚住がゴリと言っていた。
「ここはそんなモテない俺達がモテようと努力する愛好会の会室…」
「そう、僕たちはモテ方愛好会!」
「当然非公式だ」
「は、はぁ…」
俺は困り顔をする。
「君はもうモテないことが決定したね」
「マジで!?」
太田に肩をぽんと叩かれる。
「だからもう俺達の一員だ」
魚住には頭をぽんと叩かれる。
「お、お、お、俺はまだモテる可能性を捨てたくねぇ~~~~~~~!!」
実は出てきてるキャラクター、生徒会な日々にほんの少し登場してる人物だったりします。
読まれた方、気づきました?