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診断メーカー 魔女がいた
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月の宮は、今日も唯々存在し続ける。
主をその身に抱き、彼女の記憶をたどり優しい幻を自らに与えながら。
月の宮は思い出す。
彼女と初めて会った、その日の事を。
おくるみに包まれたまま、宮の前に置き去りにされていた赤ん坊を……
月の宮は月の神を祀る宮殿として、月の魔女によって祭祀を行う宮だった。
当代月の魔女は、すでに数百の歳をこの場で過ごしている。
変わらない容姿は人々に畏怖を与え、人々から羨望と信仰を集めた。
大きすぎる魔力は、魔女の人としての時を奪う。
人のように短き時で老いる事も出来ず、自ら死を選ぶことは地上を破滅させるほどの力を持つ魔女。
不老不死の呪いは、次代月の魔女に役目を継ぐ時まで続く。
いつ現れるかわからない次代魔女を待つ日々の中で、気が狂い正気を失うものも過去にはいた。
けれど、当代魔女は唯穏やかにその役目を受け入れ人々に安らぎを与えていた。
月の宮は幸せだった。
月の宮にとって、幸せな日々だった。




