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『The Renaissance striker Uzizane(転生ストライカー氏真)』 ~戦国最低スペック大名が現代に転生したら、天才ストライカーになってしまった件~  作者: みなも
第6章 序 ~ユースCL黎明編~

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第92話:【ルナの密着取材】

【あらすじ】

アムステルダムで劇的勝利を収めたバルシーノ。帰還した氏真を待っていたのは、カメラを手にしたルナの密着取材だった。束の間の喧騒もそこそこに、舞台はリーグ戦第3節へ。連戦の疲労が蓄積するチームに、昇格した友たちが新たな風を吹き込む!


1. ファインダー越しの真実


アムステルダムの冷雨と激闘から一夜。


バルセロナの総合練習場「シウダ・エスポルティバ」のピッチサイドには、穏やかな地中海の陽光が降り注いでいた。


ウォーミングアップを控えたクラブハウスの通路。


カメラを首から下げたルナが、音もなく氏真の前に立った。


「ウジザネ、ちょっといい?」


「やあ、ルナ。カメラの調子はどうだい?」


氏真が柔らかな笑みを浮かべると、ルナは真剣な表情で一眼レフの背面液晶を差し出した。


そこには、アムステルダムFC戦で撮影された連続写真が映し出されていた。


「これ、昨日の試合の終盤――あなたがピッチに入った最初のワンシーンよ」


ルナが指し示したモニターには、氏真が一歩を踏み出した瞬間のコマ送りが並んでいる。


「普通の人が見たら、あなたがただ優雅にステップを踏んでいるようにしか見えないわ。でも、レンズを通して何十回もコマ送りすると……」


ルナの瞳に、ジャーナリストとしての鋭い光が宿る。


「変なのよ。ウジザネが一歩動いただけなのに、その一歩を見た人たちが、みんな少しずつ違う方向へ動いてる」


「写真にすると、それがもっとはっきり分かるの」


ルナの言葉に、戦術用語はない。


それでも、写真という物理的な証拠から、氏真のプレーの本質を正確に射抜いていた。


「君のカメラは、相変わらず真実を捉えるのが早いね、ルナ」


氏真が少し照れくさそうに目を伏せ、濡れた前髪をかき上げる。


その仕草に、ルナはわずかに頬を赤らめ、カメラを抱きしめた。


「……当然よ。私はあなたの専属記者なんだから。もっとあなたのすごいところ――全部、写真に収めてみせるんだからね」


そう言いながら、ルナはファインダーに残された一枚から、なかなか目を離せなかった。


ほんの一瞬だけ、こぼれ落ちた笑顔。


いつもの鋭い眼差しでも、ピッチの上で見せる凛とした表情でもない。


不意を突かれたような、無防備な笑顔だった。


「……これ」


ルナの指が、写真の端をそっとなぞる。


「……記事に使うの、やめようかな」


その時、背後から足音が近づいてきた。


――


2. エリクシール・ロサの洗礼


「そこにいたの、ウジザネ」


声の主は、女子チームの天才司令塔エレナだった。


彼女は片手に、不気味なほど毒々しいショッキングピンク色の液体が入ったフラスコ状のボトルを持っている。


その隣には、ルナも同じようにマイボトルを抱えていた。


「ちょうどいいわ、二人とも。今日の練習前に、これを取りに来たの」


エレナが差し出したボトルの中身を見て、近くを通りかかったボランチのテンテが「うわっ……なんだそれ……」と露骨に顔をしかめて後ずさる。


「おい、またアレか……。去年のカデテのときも見たぞ。飲むと寿命が縮むって噂の……」


マルクも首をぶんぶんと横に振る。


ルナとエレナが共同開発した手製のエナジードリンク――名付けて【エリクシール・ロサ(Elixir Rosa)】。


見た目は完全に危険物だが、れっきとした栄養ドリンクである。


しかし、その強烈な色彩と、飲む者を本能的に怯えさせるオーラから、チーム内では「飲む劇薬」として恐れられていた。


「失礼ね。疲労回復と認知機能の向上に最高の成分が詰まっているのよ」


エレナが冷ややかに反論する。


「そうよ! ウジザネのコンディションを支えるために、私たちが研究して作ったんだから」


ルナも負けじと胸を張り、ボトルを氏真へ差し出した。


周囲の選手たちが「おい、やめとけ」「命は大事にしろよ」と遠巻きに見守る中、氏真は少しも迷うことなく、そのボトルを受け取った。


「ありがとう。せっかく作ってくれたんだ。いただくよ」


氏真はキャップを開け、躊躇なくそのピンク色の液体を口に含んだ。


ゴクッ、と喉を鳴らして飲み干す。


周囲の選手たちが「あ……飲んだ……」「正気か……?」と固唾を飲む中、氏真はしばらく味を確かめ、静かに頷いた。


「……甘酸っぱくて、悪くないよ。身体の奥がじんわり温まる感覚がする」


「ほら見たことか! ウジザネにはこの良さが分かるのよ!」


ルナが勝ち誇ったように笑う。


エレナも満足そうに頷いた。


「……嘘だろ。あんな怪しい色をしてるのに……」


テンテたちが呆れたように頭を抱える横で、ルナとエレナは「ふふっ」と誇らしげな視線を交わした。


――


3. リーグ戦第3節の激突


そして迎えた、フベニルAリーグ戦第3節。


対戦相手は、バレアレス諸島州のパルマ・デ・マヨルカに拠点を置く【FCアルフォンソ】。


開幕から2連敗を喫しているアルフォンソは、是が非でも勝ち点を奪うため、試合開始から猛烈なプレスを仕掛けてきた。


一方のバルシーノは、直近のアムステルダムFC戦からの連戦による疲労が色濃く残っていた。


ジョゼップ・カサス監督は、チーム全体のコンディションを考慮し、前節で躍動した氏真をあえてベンチスタートとした。


代わりにピッチに立ったのは、今季初スタメンとなるMFダビアン・シヴァ。


そして、フベニルBから昇格したばかりのMFサビエル・フェルナンデスとMFイネス・カスティーニャも、さっそくスタメンに抜擢された。


前半。


ピッチを支配したのは、昇格組であるサビエルとイネス、そしてダビアンの三者による緻密なパスワークだった。


「¡Aquí!(ここだ!)」


サビエルが正確無比なワンタッチパスで、アルフォンソのプレッシングの網を無効化する。


サビエルがボールに触れるたび、バルシーノの血流が急激に加速していく。


その配球を受け取るのは、静かなる天才イネス・カスティーニャだった。


イネスは無駄な動きを一切見せず、相手の視線の死角へスッと現れる。


そして、絶妙なタイミングで前方のダビアンへボールを預けた。


ダビアンが圧倒的なフィジカルと判断力で相手CBを釘付けにし、自ら持ち上がってシュートを叩き込む。


前半だけで、バルシーノは3-0とアルフォンソを圧倒した。


1点目――サビエルが引きつけ、イネスへ。その一瞬のつながりを、ダビアンが逃さない。三人の意志が一本の線となり、ゴールへ突き刺さった。


2点目――イネスが視線を誘い、守備を傾ける。その逆を、サビエルが駆け抜けた。ボールは、誰もいない未来へ届いた。


3点目――ダビアンがDFを引き連れ、中央に一瞬の空白を生む。滑り込んだイネスが、その隙間を射抜いた。


ベンチで見つめる氏真は、腕を組みながら静かに頷いていた。


(サビエルも、イネスも、ダビアンも……素晴らしい動きだ。今の彼らなら、このカテゴリーの理を完全に掌握できる)


(……予がいなくても)


(いや。予がいないからこそ、三人の凄さがよく分かる)


かつてフベニルBで共に戦った仲間が、上のステージでも強さを発揮している。


その姿に、氏真の胸中には確かな誇らしさと、心地よい信頼感が満ちていた。


――


4. 後半の投入と旧友の連動


3-0で迎えた後半10分。


ジョゼップ監督は疲労の見える選手を次々に下げ、選手交代のカードを切った。


「ウジザネ。行け」


「――はい」


背番号29を揺らし、氏真がピッチへ走り出す。


スタンドの観客席、そして記者エリアから、ルナの一眼レフカメラがその背中を捉えた。


反対側のベンチ脇からは、戦術ノートを抱えたエレナが鋭い視線を注ぐ。


氏真がピッチに入った瞬間、空気が変わった。


ボランチの位置まで下がってきたサビエルが、氏真の姿を視認しただけで、言葉を交わさずとも意図を察知する。


サビエルから氏真へ、絶妙なタイミングでグラウンダーのパスが通る。


「ウジザネ!」


サビエルのパスを受けた氏真の前へ、アルフォンソのMFが激しいチャージを仕掛けてきた。


しかし、氏真は接触の直前、足首の力を抜き、わずかに身体の向きを斜めへずらす。


「……っ!?」


相手選手は空を切るように氏真の横を通り過ぎ、バランスを崩して地面に膝をついた。


氏真は立ち止まらない。


すぐ傍らを並走していたイネスへ、ノーモーションのワンタッチパスを返す。


イネスはボールを受けると同時に、アルフォンソのセンターバックの重心がわずかに浮いた瞬間を見逃さず、ふわりと浮かせたスルーパスをペナルティエリア内へ供給した。


「いける……!」


完璧なタイミングで走り込んだのは、最前線にいた氏真だった。


――


5. リーグ戦初ゴール


後半28分。


イネスの足元から放たれた浮き球が、静かな弧を描いて氏真へ落ちてくる。


アルフォンソのGKが前へ飛び出した。


角度を潰され、ゴールへの道は細い。


氏真は、一度だけサビエルを見る。


それだけで、十分だった。


サビエルが開いた道。


イネスが広げた隙間。


二人が紡いだ一瞬の綻びへ、氏真の身体が滑り込む。


――あとは、触れるだけ。


右足が、落ちてきたボールをそっと撫でた。


ボールはふわりと宙へ舞い、飛び出したGKの頭上を越える。


そして、誰もいないゴールの奥へ、静かに吸い込まれていった。


――ザシュッ。


静かなゴールネットの揺れが、後半のピッチに響き渡る。


バルシーノ 4-0 FCアルフォンソ。


「やったな、ウジザネ!」


サビエルが駆け寄り、氏真の背中を力強く叩く。


イネスも静かに微笑みながら頷いた。


氏真は二人の旧友と短いハイタッチを交わし、爽やかな笑みを浮かべた。


「ありがとう、サビエル、イネス。最高の配球だったよ」


かつての仲間たちがフベニルAの舞台で共に勝利を分かち合う姿に、ベンチの選手たちからも温かい歓声が上がった。


――


6. シャッター音と二人の視線


試合終了のホイッスルが鳴り響く。


4-0の圧勝。


ピッチの中央で、サビエルやイネスに囲まれて柔らかい笑みを浮かべる氏真の姿。


その瞬間。


カシャシャシャシャッ――!


スタンドの最前列で、ルナが構えていた一眼レフのシャッターが連続して切られた。


ルナは液晶画面に映し出された写真を確認する。


そこには、普段の冷静で達観した氏真ではなく、年相応の少年の輝きを宿した、最高の笑顔が写し出されていた。


ルナは自分の胸に手を当て、小さく息を漏らす。


「……まったく。ずるい顔をするんだから」


その隣には、いつの間にか戦術ノートを閉じたエレナが立っていた。


「今日のゴール、サビエルとイネスの連携があってこそね。……まあ、ウジザネの動きも悪くなかったけれど」


「ちょっとエレナ、また対抗意識燃やして!」


「事実を言っているだけよ」


二人の少女が、また小さく火花を散らす。


その喧騒を遠くに聞きながら、氏真はピッチを見渡した。


仲間たちと紡いだ、リーグ戦初ゴール。


サビエル。

イネス。

ダビアン。


今は、同じピッチにいる。


遠い日の記憶が、今この瞬間へと静かにつながっていた。

【次回予告】

勝利の余韻に浸る間もなく、次なる戦いの足音が近づく。南米流の爆発的個人技を誇る強敵、SBリスボンFCとの激突へ!

第93話:【黒豹の疾風】次なる天下へのパスを回せ!


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