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転生ストライカー 氏真 ~The Renaissance striker Uzizane~  作者: みなも
第3章 情熱の国 ~スペイン編~

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第50話:【神々の領域】

【あらすじ】

カデテ開幕戦、鉄の守備網を「純粋なエゴ」で破壊し、衝撃的な決勝弾を挙げた吉良氏真。その天命に刻まれた才はユースの枠を超え、マテオと共にFCバルシーノのプロ1軍が練習する『神々の領域』への特別参加を引き起こす。だが、そこで極東のストライカーを待っていたのは、己の『雅』すら児戯に等しいと思い知らされる、本物の怪物たちによる洗礼であった。


1. 圧倒的な密度、青と臙脂の聖域


バルシーノの巨大な育成施設の最奥。


厳重なセキュリティゲートを越えた先に広がる「ティト・ビラノバ・ピッチ」の美しい天然芝を踏んだ瞬間、マテオの膝が、ガクリと小さく震えた。


「……息が、詰まる。なんだよ、この空気は……」


無理もない。


そこは、世界最高峰のメガクラブ、FCバルシーノのトップチームが日々の研鑽を積む『神々の領域』。


手入れの行き届いた芝の匂い、乾いたトラップの破裂音、選手たちの毛穴から噴き出すような濃密な闘争心。空間を満たすあらゆる「質量」が、カデテ(U-15)のピッチとは次元が違った。


「¡Oye!(おい!)マテオ、ウジザネ。お前たちは今日の戦術シミュレーションの『数合わせ(仮想敵)』だ。邪魔だけはするなよ」


カルロス監督が、サングラスの奥の目を鋭く光らせて指示を出す。


「……あはは。世界最高の名手たちによる、極上の見本市というわけだね。たっぷりと見学させてもらおう」


氏真は爽やかな少年の微笑みを浮かべてみせたが、その黄金の瞳の奥は、これまでにないほどの極限の『集中』でピッチの空間を乱反射するように見渡していた。


(……素晴らしい。強者たちが放つ覇気で、空間の『空白スペース』が刻一刻と形を変えてゆく。これが世界の頂点の景色か)


ブラウグラナのトレーニングウェアを纏ったトップチームの選手たち。

その中央には、世界中のサッカーファンが畏怖と熱狂をもって讃える「三人の怪物」が、当たり前のように息を弾ませていた。


南米の貧困街で培った反骨心レセンティミエントと鋼の肉体を持つ最強のセンターバック。闘将・ガブリエル。


バルシーノの心臓であり、ピッチ上の全事象を構造的に支配する司令塔。『神の眼』エル。


そして――世界最高のストライカー。『黄金の獅子』レオ・シルバ。


---


2. 予測の超越、剥き出しの鋼


シミュレーション形式のミニゲームが始まった。


氏真は、仮想敵(Bチーム側)のフォワードとしてピッチの中央に立ち、首を振って周囲の状況を脳内にインプットする。


(……相手の陣形には、ほんの僅かな無駄もない。ならば、視線を誘導して『虚』を突くまで)


氏真の視線の先には、岩山のように立ちはだかるガブリエル。彼我の距離、筋肉の緊張具合、すべてを計算に入れる。


「ウジ! 行くぞ!」


中盤でボールを刈り取ったマテオから、氏真の足元へ向けて強烈なくさびの縦パスが打ち込まれた。

ブリエルが、氏真を粉砕すべく猛烈な前傾姿勢でプレスに飛び込んでくる。


(……掛かった。その猛進、予の雅技で透かさせてもらおう)


>> スキル発動:【幻月のスルー:ランクB】

補助系 / 効果:敵の予測対象の強制移行(デバフ:中) / 発動条件:パスの軌道上での完全な気配遮断


ボールに触れる直前で極限まで力みを抜き、自らの存在感をボールの軌道から消し去ることで、敵の意識を後方の味方へ強制的に移す戦術的スルー。


「……ふっ」


氏真は、ボールを受ける直前に全身の筋肉の緊張をふっと解き、飛んできたボールを『見送った』。


己の存在感を風景に同化させる、完璧なスルー。ボールは氏真の股下を抜け、後方へ走り込んでいた味方FWのパブロへと向かう。


決まった。


マテオも、パブロも、誰もがそう確信した瞬間だった。


「¡Lento!(遅い!)」


ズドォォォンッ!!


という鈍い衝突音と共に、背後でパブロの悲鳴が上がった。


振り返った氏真の黄金の瞳が、驚愕に見開かれる。

ガブリエルは、氏真の『幻月の歩』に全く惑わされていなかった。


氏真が気配を断った、その一呼吸にも満たぬ時間。ガブリエルは己の重心を低く沈め、チーターのようなバネで氏真の横をすり抜け、ボールを受けようとしたパブロの身体ごとボールを刈り取っていたのだ。


「小細工だな、東洋の坊や。……気配を消そうが、ボールの軌道という物理的現実は変わらない」


ガブリエルは、ピッチに這いつくばるパブロを見下ろし、氏真へと鋭い眼光を向けた。


(……バカな。完全に虚を突いたはずだ。それを、純粋な『反応速度』と『肉体の出力』だけで無効化したというのか!)


氏真は即座に思考を切り替え、奪われたボールを取り返すべくガブリエルへ突進した。


太ももの力みを極限まで抜き、膝のカックンとした落下を利用して重力に身を任せる、一切の予備動作を持たない滑らかな重心移動。


かつて多くのディフェンダーを置き去りにしてきた、氏真の絶対的な歩法。


――ドンッ!!


「……なっ!?」


氏真の華奢な身体が、まるで強固な城壁に激突したかのように、無様にピッチへと弾き飛ばされた。

ガブリエルは、微動だにしていなかった。


完璧な体幹。無駄のない骨格の配置。彼は氏真の重心移動を『視覚』で完全に捉え、的確なポジショニングだけで侵入経路を封鎖したのだ。


「重心を移す間が長い。その一瞬が命取りだ。」


(……これが、世界最高の『基礎』と『肉体』! 予が積み上げてきた知略と美学、その結晶たる技術ですら、児戯に等しいというのか……!)


痛む肩を押さえながら立ち上がる氏真の目の前で、極上のショーはさらに加速する。


---


3. 三位一体、美しき構造と本能


ガブリエルが刈り取ったボールは、即座に司令塔・エルの足元へと渡った。


(……ならば! 予測不能な『混沌バグ』で、その思考をショートさせるまで!)


氏真は自らの最大の武器である『純粋なエゴ』を全開にし、セオリーを無視した角度とタイミングでエルへ激しいプレスを掛けた。


フェリペの予測を超越した、異次元の突進


しかし、エルは氏真の突進を全く見ることなく、まるで散歩でもするようにボールを軽く浮かせた。


「君のそのエゴ(動き)は、システムの秩序を乱すね。……でも、それも構造の一部だ」


フッ、とエルの足首が反転する。


氏真の突進の勢い(ベクトル)を完全に逆利用した、ノールックのヒールパス。

氏真が「最もコースを切りにくく、かつ味方が最も前を向きやすい」という空白地帯スペースへボールが吸い込まれていく。


(……予の『混沌』が、彼の前ではただの『方程式の一部』として処理されただと!?)


パスを受けたのは、攻撃参加のために攻め上がっていたガブリエル。


彼は巨体からは想像もつかない滑らかな足元でボールを運び、敵を引きつけてから再びエルへと

【次回予告】

トップチームの怪物たちとの差を痛感し、圧倒的なフィジカルと基礎技術の必要性を悟った氏真。彼が頼ったのは、ミツウロコ科学班を従える早川姉妹だった!「ウジ様の肉体を世界基準にする地獄のメニューですわ!」

第51話:【そして白き巨城】。次なる天下へのパスを回せ!



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