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転生ストライカー 氏真 ~The Renaissance striker Uzizane~  作者: みなも
第2章 群雄割拠 ~全日本U-12サッカー選手権編~

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第21話【魔王の妹】

【あらすじ】

日本の南端、鹿児島で開催されている全日本U-12サッカー選手権大会。キャプテン・吉良氏真率いるインパルス清水FC・ジュニアは、この地特有の強風と熱気に翻弄されながらも、持ち前の「知略」と「雅」で予選リーグを全勝で突破した。決勝トーナメントを前に、氏真は一人の少女と出会う。彼女は、あの「魔王」織田凱人の妹・美月であった。シスコンの魔王が激怒し、氏真に宣戦布告をする中、負けたら終わりの決勝ラウンドの幕が上がる。インパルス清水の次なる相手は、九州の雄・サーガ鳥栖FCジュニア。真の王者を決める修羅の道が始まる。


1. 薩摩の地、全勝の記憶


冬の空に、桜島の雄大な噴煙が静かにたなびいている。


宿泊先のホテルの中庭。海風を感じながら、氏真はベンチでこれまでの三戦を振り返っていた。


• 第1戦:vs 仙台アルベガFC(3-2)

鹿児島の吹き下ろす風の中、青き独眼竜・舘隼斗との壮絶なシュート対決。守護神・ジョンの負傷という絶望的なアクシデントを、吉良コーチが授けた超攻撃的シフトと、10歳の作戦参謀・大原由紀夫の采配で乗り越えた。最後は氏真の【極・雅技:鳳凰の絶唱】で競り勝った。


• 第2戦:vs 広島ヘリオスFC(1-0)

吉川三兄弟の「三本の矢」の連携に苦しめられるも、鹿児島の海岸線から吹き込む烈風が、朝比奈翔のミスパスを奇跡のループシュート(神風)へと変えた。


ジョンの戦線復帰と、葛城・井原の修正力で完封の美学を完遂した。



• 第3戦:vs 西東京ドラシルFC(3-0)

策士・風間孝太郎が仕掛けるマリーシア(ずる賢さ)の迷宮。


だが、基哉の冷徹な眼がアイコンタクトという奇術の種を見抜き、鮮やかな逆襲で敵を沈黙させた。


「……ほう。三戦全勝、勝ち点九か」


隣でタブレットを操作するアナリストの舞と、司令塔の松平基哉を見やり、氏真は誇らしげに胸を張った。


「薩摩の地は、最初は手強い相手かと思ったけれど……僕たちを拒むどころか、むしろ新たな『可能性』を試すための最高の舞台を用意してくれたみたいだね」


「ええ。古い兵法書にもあるでしょう」


基哉が前髪を押し上げ、静かに口を開く。


「地を知りて天を知らば、勝ち乃ち全からん」


「地形の特性を理解し、天候の理を味方につければ、勝利は揺るぎないものになる。」


「予選での風の奇跡も、僕たちがこの鹿児島の『天の時』と『地の利』にいち早く適応できたからこそ引き寄せた必然だ。……すべては計算通りさ」


その言葉に、氏真は優雅に微笑んだ。


「流石は我が軍総司令殿。頼もしい限りだよ」




2. 予期せぬ出会いと、凛とした少女


「少し、歩いてくるよ。次の戦いの前に、風の匂いを感じておきたいからね」


氏真は少年の声で告げ、一人、ホテルの中庭を抜け、併設された公園の噴水広場へと足を運んだ。


そこで彼は、一人の少女と出会う。


「……あっ」


強い海風が吹き抜け、少女の手から大会のパンフレットがヒラリと宙に舞った。


氏真は咄嗟に駆け寄り、空中でパンフレットを優しく右足の甲でトラップ(コントロール)する。


そのままリフティングでふわりと浮かせ、手でキャッチして少女へ差し出した。


「風の悪戯だね。はい、どうぞ」


「(……見事な足捌き)。ありがとうございます」


パンフレットを受け取った少女を見て、氏真は一瞬目を奪われた。


年齢は10歳ほどだろうか。透き通るような白い肌に、艶やかな黒髪。何より目を引くのは、その年齢にそぐわないほど落ち着き払った、理知的で気高い瞳だった。


どんな運命も静かに受け入れるような、凛とした誇り高きオーラ。ただ美しいだけではない、内なる強さを秘めた少女だった。


「君は、見ない顔だね。この大会の観客かい?」


「はい。兄の応援に参りました。……あなたは、静岡代表インパルス清水のキャプテン、吉良氏真様ですね」


少女は礼儀正しく一礼した。


「……ほう。予を知っているのかい?」


「兄が、あなたのことをとても意識しておりますから。……私は、織田美月おりた みづきと申します」


氏真の黄金の瞳が、僅かに見開かれた。


織田。その名と、先日の圧倒的なスコア「7-0」を叩き出した魔王の顔が重なる。


「……そうか。君が、あの名古屋グレイスFCのエース、織田凱人くんの妹君か」


「はい。兄のサッカーは、すべてを力でねじ伏せる圧倒的なもの。私は妹として、その苛烈な運命を静かに見守るのが務めだと思っております。……ですが」


美月は、氏真の顔を真っ直ぐに見つめ、わずかに頬を染めた。


「先日のあなたの試合、拝見いたしました。力ではなく、流れを読み、仲間を信じ、美しく舞うようなお姿……。兄とは違う、その『雅』なサッカーに、私は……とても惹かれました」


「……あはは。それは光栄だね、美月姫」


氏真は、自然な動作で美月の手を取り、騎士のように優雅に微笑んだ。


「君のような気高き花にそう言ってもらえるなら、僕のサッカーは間違っていなかったと確信できるよ」


氏真の、息を呑むほど洗練された笑顔と立ち振る舞い。


10歳の美月の心臓が、トクン、と大きく跳ねた。聡明で冷静な彼女のペースが、氏真の天然の「雅」によって完全に崩されようとしていた。


「き、吉良様……っ」


その時だった。




3. 魔王の咆哮(シスコンの怒り)


「みぃぃぃぃぃづぅぅぅきぃぃぃぃぃぃッッ!!!」


ドドドドドッ!!


大地を揺るがすような絶叫と足音とともに、一人の少年が猛烈なスピードで噴水広場に突っ込んできた。


他ならぬ、名古屋の魔王・織田凱人おりた かいとである。


「お、お兄様!?」


美月が驚いて振り返る。


ピッチ上では冷酷無比、相手を絶望の底に叩き落とすストライカーとして恐れられる織田凱人だが、今の彼の目は血走り、完全にパニック状態に陥っていた。


「俺の! 天使のように可愛くて賢くて誇り高い世界一の妹に!! 気安く触れてんじゃねええええッ、この軟派野郎ォォォッ!!」


凱人は猛然と二人の間に割って入り、美月を自分の背後に庇うように隠した。そして、氏真に向かって熊のような形相で激しく牙を剥く。


「……やあ、織田くん。奇遇だね。妹君は落とし物をしただけだよ。実に礼儀正しく、立派な淑女レディだね」


氏真が涼しい顔で微笑むと、凱人の額にブチブチと青筋が浮かんだ。


「そのふざけたスマイルを向けるな! 美月はな、俺の生きがいなんだよ! お前みたいなチャラチャラした奴に、美月の純真な心を汚されてたまるかッ!」


「お兄様、恥ずかしいですからやめてください。吉良様はとても紳士的な方です」


「し、紳士的ィ!? 美月、騙されちゃダメだ! そいつはピッチでヘラヘラ笑いながら相手を出し抜くタチの悪い奴だ! 兄ちゃんが絶対に守ってやるからな!」


泣きそうになりながら美月を抱きしめようとする凱人を、美月は「ひっつきすぎです」と冷静に押し返す。


ピッチ上の『魔王』の威厳は見る影もない。ただの重度のシスコンである。


だが、凱人が氏真へ向き直った瞬間、その瞳に宿る殺気は本物へと変わった。


「吉良氏真。……ただでさえ気に食わねえ奴だと思ってたが、今、俺の中でお前の危険度はMAXに振り切れたぜ。全力で叩き潰す。」


凱人は、地を這うような低い声で宣言した。


「決勝トーナメントで俺の前に上がってこい。ピッチの上で、お前のその『すかした顔』ごと、完膚なきまでに叩き潰してやる。美月に、どっちが世界で一番カッコイイ男か、骨の髄まで分からせてやるからな!」


「お兄様、だから私を巻き込むのは……」とため息をつく美月をよそに、凱人は妹の手を引いて嵐のように去っていった。


去り際、美月だけが振り返り、氏真に向かって小さく、だが上品に手を振った。


「……あはは。嵐のような人だね。でも……」


氏真は、遠ざかる魔王の背中を見つめ、不敵な笑みを浮かべた。


「その挑戦、受けて立つよ」




4. 16強の修羅道へ


ホテルに戻ると、チームメイトたちが神妙な面持ちで集まっていた。


軍師・基哉が、大会本部から送られてきた決勝ラウンドのトーナメント表をモニターに映し出す。


「……みんな。ここからは、負けたら即、静岡へ帰ることになるノックアウト方式だ」


鹿児島市内の白波スタジアムを頂点とする、16チームによる真剣勝負。


12のグループ1位と、2位のうち成績上位の4チーム。選び抜かれた16の「国」が、真の天下を求めて激突する。


そしてトーナメントの山の向こう側には、怒りに燃える織田凱人率いる名古屋グレイスFCが待ち構えていた。


「1回戦の相手は……九州の雄、サーガ鳥栖FCジュニアだ」


基哉が相手のデータを表示する。


「圧倒的な運動量と、全員が連動する激しいハイプレス。そして、マンツーマンディフェンスで相手のエースを徹底的に潰しに来る、超闘志型の難敵だよ」


氏真は、円陣の中心に立ち、オレンジ色のユニフォームを着た仲間たちの顔を見渡した。


蒼き眼の門番・ジョン、今川四天王(葛城、井原、朝比奈兄弟)、知将・基哉、そして大原由紀夫。


挫折と涙を乗り越え、この薩摩の地で完璧な連携を手に入れた最高の仲間たち。


「……さあ、行こうか。全日本U-12の頂点へ」


氏真の声が、静かに、だが熱く響く。


「これより先は修羅の道。けれど、僕たちならどんな強敵でも、最高なプレイで退けることができるはずだ。……鹿児島の空に、鳳凰の絶唱を響かせる時だよ!」


「「「おおおおおッ!!」」」


少年たちの雄叫びが、決戦の地へ向けて高らかに響き渡った。


インパルス清水FC・ジュニア。真の王者を決める「修羅のトーナメント」への進撃が、今、幕を開ける。


【次回予告】

ついに開幕した決勝トーナメント1回戦。九州の龍、サーガ鳥栖FCとの激突!

しかし、予選の激闘は氏真の12歳の身体に予期せぬ限界をもたらしていた。鳥栖のマンツーマンディフェンスに苦しむインパルス。苦境のチームを救うため、司令塔の基哉が静かにタクトを振るう!

第22話:【鳳凰の沈黙、受け継がれる覇道】。次なる天下へのパスを回せ!


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