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新タナすきるヲ手ニ入レタ!

掲載日:2026/03/23

短編です

 仕事から帰ってきて、リビングに向かう途中にある、脱衣所の前に脱ぎ捨てられた靴下を見て、気分がどんより落ち込んでいく。仕事で疲れているうえに、この放置された靴下の処理もしなくてはいけないのか。少々殺意すらわく。

「ねぇ、せめて脱衣所のカゴの中入れてよ」

 ソファで寝転がりながら、ソシャゲをプレイする彼にそう言うと、確実に聞いていない時の生返事が帰ってくる。「うん~」じゃねぇよ、まずはお帰りだろ。っつーか、私もただいまって言ってないわ。

 同棲を始めてからずっとこんな感じ。なんで私、こんなやつと付き合ってるんだろう。

 洗濯機の中の洗濯物を取り出して、彼の寝転がるソファの前に置く。でも彼は動かない。靴下を洗濯機に入れようとして、ちょっと止まった。これ、放置したらどうなるんだろう。

 小学生の頃の朝顔の観察と一緒だ。水をあげなければどうなるのかを見る。ちょっと興味がわいた。

 自分の洗濯物と、洗濯カゴに入っているものだけを、洗濯機に入れ洗剤を入れて洗う。風呂に入って着替えて、とりあえず彼の分も夕飯を準備する。先ほど取り出した洗濯物はそのままにして、普段通りの夕食を過ごした。

 これを数日やってみた。洗濯物に関してだけ、私も無関心になる作戦だ。

「ねぇ、俺の靴下知らない?」

「知らないよ~?ちゃんと洗濯カゴ入れてないんじゃないの?」

 困ったら自主的に入れるようになるだろうと思ったけど、あいつは床に落ちている靴下を拾って、軽く匂いを嗅いで、「くせ」とかなんとか言って、ソレを履いていた。信じられん。

 その日はそのまま会社に出社していった。

 しかし当日、アイツは廊下にその靴下を放置した。数日前の自分の汗の浸みこんだ靴下を、また床に放置したのだ。なんて汚い奴だ。でも私も負けない。このまま放置を続行する。

「ねぇ~俺の靴下最近ボックスに入ってないんだけど~」

「知らないったら~」

 なんて言ってごまかしているけど、アイツは気づいてないのか?本当に?何とも信じられん。コレ、私が荷物少しずつ減らして行っても気が付かないんじゃないだろうか。

 そう思って、私は自分の荷物を少しずつ、実家に運び込み、経過観察を続けた。

それから三週間が経ったころ。

[ねぇ、今日帰り遅くない?]とメッセージが届いた。

 ようやく気付いたか。

一向に気づく気配のない彼に、私はなんだか楽しくなってしまって、完全に実家への引っ越しが完了してしまっていたのだ。

 だからあの家には、私の荷物は何一つない。つまり帰る必要もない。そして今日、私はあの部屋の契約を切りに不動産屋に来ている。私名義の契約にしておいてよかった~!

 ちょうど更新の時期で、解約はすんなりとできた。これで本当に、私の物は、あの家になくなった!清々しい~!!

 後日、[ねぇ、警察呼ばれたんだけど!どういうこと!?]というメッセージに既読だけをつけて、私はあいつをブロックした。アイツは私の実家を知らないから、うちに来ることは無い。両親への挨拶とかしなくて良かった~!

 人生、知らないふりをした方がうまくいくことは沢山ある。彼氏のいない生活を満喫しよう!

・・・とりあえずまずは、両親含めた親族たちの目を、スルーすることが最優先事項だ。



——あぁ~、ごはん美味しい~♪——

そんな目で見ないでぇ・・・。

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