ルナリア姉さんは容赦がありません
リュシアンことゲシュタルト・フォン・カインを倒したことで、チート能力の【パーフェクト・ダーリン】は解呪された。
お陰でエレオノーラ様が恋する乙女から戻ってこれたんだけど、呪いが解けた彼女は少し寂しそうだった。その気持ちは分からなくもないけどね。
ともかく、これで国家の要人を巻き込んだ国際ロマンス詐欺騒動は終結したってわけ。エレオノーラ様だけでなく、かなりの金持ち貴族がリュシアンの毒牙にかかっていたようで、ブタ箱にぶちこまれたリュシアンはこれから余罪を追及されることになる。
あたしはあたしでデュラン・デュラン侯爵に呼び出され、犯人逮捕のお礼をこれでもかと言われた。この人もイケオジのくせにFUNZAのランサムウェアに引っかかったりと色々とワキが甘いよね。
豪華な料理でもてなされたあたしは、ビックリするぐらいの報奨金をもらえるようだったけど、女神に戻ったら役に立たないので辞退した。それであたしの好感度がまた爆上がりしてしまうのは面倒なんだけど。
それはそれとして、あたしの怠惰が原因で悪人だらけになったコルヴム・パラディスの治安も少しは改善したんだろうか。還付金詐欺、ランサムウェアの脅迫、国際ロマンス詐欺と結構な悪党たちをシバいてきた自覚はある。
そういうわけで、あたしはルナリア姉さんと話してみることにした。
宿の部屋を取ると、虚空に画像を浮かび上がらせる。スマホが無くても、女神の力を使えばこの程度のことは出来るんだよ。
あたしが呼び出すと、画面に姉さんが出てきた。
「あら、タラッサ。今日も頑張っているの?」
「うん。つい最近になって国際ロマンス詐欺の犯人を逮捕してね、王都の偉い人からも感謝されたんだよ」
「それは素晴らしいわね。これでコルヴム・パラディスも平和に一歩近付いたわね」
「それでなんだけどさ、ルナリア姉さん」
「なに、急にあらたまって?」
「今回あたしがコルヴム・パラディスで直接悪党たちをとっちめて、ここの治安もかなり良くなったと思いうんだよね」
「うん」
「それでなんだけど、これであたしの任務も完了ってことでいいのかな、なんて……」
あたしはモジモジしながらルナリア姉さんのリアクションを窺う。
実際にあたしがコルヴム・パラディスにしてきた貢献はかなりのものだと思う。最後には国家の要人を国際ロマンス詐欺から救ったし、ここの人から見ても聖人並みの活躍をしたでしょうって。
ルナリア姉さんもニコニコと笑いながらこちらを見ている。これは何だか、いけそうな気がする。あたしの中に、償いプロジェクト終了のテロップがよぎった。
だけど――
「何を言っているの。そんなの、ダメに決まっているじゃない」
「えっ」
あたしは思わずフリーズする。
ルナリア姉さんはさっきと変わらない笑顔で、あたしの希望を真っ向から全否定した。
うわあ、マジか。覚悟していなかったわけじゃないけど、そこまでダメ?
「いい、タラッサ? あなたがやってきたザル審査の落とし前は、この程度の償いで許されるものではないの」
「はい……(棒読み)」
「あなたの怠惰が生んだ結果は、コルヴム・パラディスの命運すらも悪い方向へと導いているの。その自覚が出来ないのであれば、まだまだよ」
「ですよねー(棒読み)」
「だからあなたはもう少しこのコルヴム・パラディスに貢献をしなさい。それが本当になされた時、あなたの役目は終わるでしょう。それでは頑張ってね」
虚空のディスプレイに映ったルナリア姉さんは返事を待たずに見えなくなった。議論の余地は許さないって意味だろう。
とにかく、あたしはもう少し不良勇者たちをあちこちでシバいていかないといけない。
あいつらのやることには果てが無い。元々クズだったのに、精神に見合わない力を手に入れてしまったものだから一層タチが悪い。だからこれからもあたしはあいつらの尻ぬぐいをするために結構な労力を払うことになるだろう。
「はあ」
思わずため息が出る。そんなあたしを、ピョンちゃんがニヤニヤしながら見つめていた。
「なに」
「良かったじゃないですか。エルウィン騎士団長ともう少し会えるようになって」
思わずこのウサギにデコピンでもしそうになったけど、やめる。
たしかに騎士団長とまた会えるのは嬉しいかもしれないけどさ。まだまだあたしの怠惰が招いた世界の歪みには改善の余地が多数あるみたいだった。
「勇者たちを選定した頃にタイムリープしたいわ」
あたしは一人、ため息を吐く。
あたしがこの世界で成していく仕事にも、まだまだ続きがあるようだった。
【とりあえず終わり】
※作者追記
ここまで読了ありがとうございました。
続きを書くかどうかは正直読者の方々のリアクションによるので、カクヨムコンも含めて面白かったらどんどん応援して下さい。そうすればすぐに再会出来るでしょう。
それではまた。




