怒りのゴッドフィンガー
見るだけで嫌な気分になるけど、「闇ヲチ板」のログをずっと遡っていったのはそれなりに収穫があった。手がかりが見つかったので、手近な所まで馬車で移動する。
あたしは馬車を降りると、王都で一番ヤバい場所へと直行した。
――王都裏通りの闇ネットカフェ・ブラック・ドラゴン。
表向きは普通のネットカフェだけど、裏では転生者専用の「闇ヲチ板」が運営されている、まさに無法地帯。こっちの世界には個人事業開始届も必要ないから、新しい商売を思いついた人たちは好き勝手に出来る。
まったく、あたしのあずかり知らないところでこんな場所を作りやがって。腹が立つけど、少なくともあのニセロー〇ンドをとっちめるまでにはぶっ潰すわけにもいかない。
黒いフードを被ってフリー素材のハッカーっぽい変装をすると、ピョンちゃんをバッグに隠して客として潜入した。ワケアリの人が多いせいか、身分証の提示は求められなかった。
個室ブースに入ると、すぐに掲示板を開いた。「闇ヲチ板」を見つけて、そのスレッドを辿っていく。
この闇ネットカフェ・ブラック・ドラゴンでは、本当にヤバくてセンシティブ判定で見れない書き込みも含めてすべてが閲覧出来るようになっている。あたしの目的はその「センシティブ」な情報を手に入れることだった。
【スレッド:最近の稼ぎ報告】
1: ロマンス詐欺で月5000万ボリーノ美味杉www
2: 相手60代貴族マダムwww余裕すぎwww
3: 写真はロー〇ンドで完璧。異世界だと違和感ねえwww
4: プリンセス・ドリームの看板使えば100%食える
5: 次ターゲットはヴァ〇・ロ〇シ家だってよ 三億ボリーノ確定www
……はい、全部繋がった。あっさりと見つかり過ぎて拍子抜けするぐらいだった。
こいつら、匿名でコンタクトを取り合って悪さをしている。ダークウェブみたいなのでやらなかったのは、どうせ符牒を使えばバレないとでも思っているせいだろうか。まあ、転生したまともな人間がこのクソスレを見に来るとは思わないよね。
さらに深層スレッドに潜るとロマンス詐欺専門ギルドの公式ページがヒットした。表の顔は「国際結婚支援会社 プリンセス・ドリーム」とあり、きっとプリンセスメーカーが好きな奴が付けた名前なんだろうなって思った。
――貴族令嬢と王子様を結ぶ、夢の架け橋。
代表取締役:ゲシュタルト・フォン・カイン
(写真:例のニセロー〇ンド)
☆業務内容
・亡命王子とのマッチング。
・国際結婚の資金援助サポート。
・幸せになるための少額寄付のお願い。
会員登録は ▶こちら
……ちょっと待て。完全に詐欺会社じゃん。
さらに調べてみると、詐欺集団の組織図まで出てきた。
総代表:ゲシュタルト・フォン・カイン
実行部隊:ミラ・マジビッチ(元キャバ嬢転生者・甘え声担当)
技術班:五名(偽造証明書・画像加工担当)
現在進行案件:十二件(総額見込み三十八億ボリーノ)
少数精鋭……っていうか、マジモンの悪人たちだよね。こいつらが色々と暗躍しているのか。
転生して人生をやり直すはずが、前世と変わりなく地下へと潜って悪人になる。これは病気というか、何度生まれ直してもそんな風にしか生きられない人たちなのかもしれない。
そして最後に、衝撃の一文。
【最終目標:100億貯めたら「帰還チート」を買って地球に帰る】
……帰還チート?
あたしは一瞬、息を呑んだ。
それは、女神のあたしですら把握していない、知られざる禁忌のスキル。
……って、そんなもんあるかアホ!
すごい。ここまで完全にインチキで人を集めるなんて。たしかにチートな力を持って地球に帰ったらすごい人だしモテまくるだろうしあっちこっちでチヤホヤされるでしょうよ。
だけど、そんなことはありえない。チートな力っていうのは、異世界だからこそ発揮出来る。それを他の世界まで持っていくことは出来ない。地球の科学には魔法は存在しないんだから。
それでも甘い考えでこっちでもダメダメな人生を送ったクズたちは、そういうワンチャン案件に救いを求める。本当はおかしいと知っているはずなのに、転生する前と何も変わらない。
そんなクズたちが、救うべき異世界ですら治安を乱し、悪徳を栄えさせようとしているなんて。
「ねえピョンちゃん」
「はい、何でしょう?」
「あたし決めた。こいつら、絶対に許さない」
あたしの拳が真っ赤に燃える。奴らを潰せと轟き叫ぶ。あいつら一人一人のツラに運命のゴッドフィンガーを喰らわせてやりたい。
国際結婚支援会社プリンセス・ドリーム――あいつら、マジで潰す。




