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写ルモノ

作者: 江渡由太郎
掲載日:2025/08/08

【写ルモノ】ーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「あっちゃん! お前のスマホ、なんか写ってね?」


 放課後の教室。サッカー部を怪我で休部中のあつしは、暇つぶしに教室の写真を撮っていた。


 何気なく画面を確認した瞬間、彼は息をのんだ。


 そこには、自分の座っていた席のすぐ後ろに黒髪の女子が立っていた。


 制服も古びていて、顔は不鮮明なほどにぼやけ、どこか不自然なほど“ぬれて”いた。


 だが淳の後ろには、誰もいない。


「心霊写真かよ……」


 軽くゾッとしながらも、好奇心が勝った。


 淳は写り込んだ女の正体を探るべく、ネット掲示板や動画サイトで“幽霊が写るカメラアプリ”の都市伝説を調べ始める。


《スマホのレンズは“あっち”と繋がる目だ》


《シャッターを切るたび、少しずつ“こっち”に近づいてくる》


 不気味な書き込みに鳥肌が立つ。


 だが淳は試した。


 昼の教室、部室、駅のホーム、夜の自室……。


 撮るたびに、女の姿が少しずつ近づいてくる。


 最初は壁際、次は背後の窓、次は……彼の隣。


 そしてある晩。


「……誰?」


 スマホ越しに、耳元で囁かれた。


 翌日、クラスメイトの一人が階段から転落し意識不明に。


 淳が最後に撮った集合写真には、その男子の肩に、蝋燭のように真っ白で濡れた手が添えられていた。


 事故は続く。


 吊り橋からの転落、通学路の交通事故、そして誰にも開けられなかったLINEの“最後の既読”。


 残されたのは、写真の中に写り込んだ女の“顔”。


 それは徐々に変化していった。


 最初は無表情、次は微笑み、そして——満面の憎悪。


 ある夜、淳はカメラを向けられなくなっていた。


 画面に映る“自分”の背後に、首を傾けながらこちらを見つめる女が写っていたからだ。


 しかも、もう“濡れて”などいない。


 完全にこの世の質感を持ち、スマホのレンズを超えて“ここ”にいた。


 恐怖のあまり、彼はスマホを叩き割った。


 だが、鏡にもテレビにも、窓ガラスの反射にも、その女の姿は現れる。


 ——あの瞬間、撮ってしまったから。


 ——一度、繋がってしまったから。


 ——もう、“彼女”はどこにでも映る。


 その日から、淳は鏡を見ることができない。


 スマホも使えない。


 カメラ付きのあらゆる物を避け続けている。


 それでも――誰かが写真を撮れば、また“あの顔”が映るかもしれない。


 次は、あなたのスマホにも……。



#ホラー小説

#短編ホラー小説


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