運命
少し前に書いたものなので、文章が拙いですがご容赦ください。
ぐぅ〜・・・
「あ、おなかなってる。何か食べなきゃ。」
私はおなかの虫が泣いたことで、久しぶりに空腹を感じた。
私はトラックメイク、イラスト、動画編集などを行うフリーターだ。
フリーターは資金面も生活面も不安定だが、最近では、私の知名度もそこそこになってきて、前よりかは安定して生活できている。
ところで、突然だが私は「予言」をすることができる。
小さい頃に一度交通事故に遭い、生死を彷徨った結果、第六感とでも言おうか、そのような類のものが私の中で目覚めてしまったのだ。
信じられないかもしれないが、本当にそうなのだ。そして、昨日久しぶりに神からのお告げが来た。
「近いうちに地球から人類が消え、動物や植物たちは本来の姿に戻るでしょう。」
これは要するに、"人類が近いうちに滅亡する"ということだ。
私は、初めて神のお告げを聞いた以来二度目の、耳を疑った。
私の聞き間違いではないだろうか。この世から人類がいなくなるなんて考えられない。
近いうちということは、今それが起きてもおかしくない。
だが、私はこのことを人に伝えることを躊躇った。なぜなら、常識的に考えてこんなことを信じる人はいないからだ。まずは家族に伝えてみようと思う。
「お母さん。大事な話がある。」
「何?忙しいから手短にしてくれる?」
母は包丁で野菜を切りながら私の方を横目で見た。
「じゃあ簡潔にいうけど、人類は近いうちに滅ぶ。信じられないだろうけど、お願いだから信じて。」
「そう。そろそろ病院に行ったほうがいいみたいね。付き添いするわよ?」
お母さんはダメだった。お母さんはいつもこうだ。私が前、近いうちにお母さんは事故に遭うかもと言ったときも信じないで仕事に行って、結局全治三ヶ月の重傷を負った。
それでもお母さんは私のことを信じてはくれない。きっと子供の戯言としか思われていないのだろう。
次は、うちにはお父さんがいないので姉。
「お姉ちゃん。聞いて。本当に大事な話がある。」
「どうせまたお得意な未来予知でしょ?そんなの信じるわけないじゃない。」
姉はそう言って部屋のドアを勢いよく閉めた。
姉もだめだった。わかってはいた。結局いつも、誰も私の話を真面目に聞こうとしない。
「ねえ、あなたらしくないんじゃない?本当に自分が信頼する人だけでいいのよ。私が言ったことを伝えるのは。」
突然後ろから、いつも予言をしてくれる神様の声が聞こえた。
「あ、あなたは女神様!?」
私はそう言って後ろを振り返った。
「そ、女神様。」
女神様はそう言って微笑んだ。なんと美しい。本当に女神様って感じがする。なにげにこの目で女神様を見るのは初めてだ。
「本当に自分のことを認めてくれていると思う相手にだけ、伝えるのよ。じゃないとあなたが傷つくだけ。あなたのいいように情報を活用しなさい。それと、これを渡しておくわ。」
そう言って彼女が取り出したのは、腕につけることができる紐がついた鈴だった。
「今日は、これをつけて寝なさい。きっとあなたを守ってくれるわ。じゃあ私はこれで行くから。またね。」
彼女は目を細めてそういった後、消えた。
私を認めてくれている人・・・か。そんな人いないや。もう誰にも伝えないことにしよう。私はそう思い立って、悩むことをやめ、鈴をつけてベッドに横になった。
私はカーテンから差し込む光で目を覚ました。なんだかわからないが、嫌な予感がした。
とりあえず外に出てみようと思った私は、部屋のドアを開けた。
あれ。
部屋のドアを開けた瞬間、外に出た。
"外に出た"のだ。
部屋の前には、階段があるはずだ。
―――ない。
完全に外。屋外だ。
「なに、これ・・・」
私の部屋だけ、ぽつんと取り残されたように建っている。
それに、周りにある建物はすべてが跡形もなく倒壊していた。私以外の人の気配はない。
このとき、ぽつんと建っているドアを見つけた。周りに建物らしきものはなく、ドアだけが取り残されている。
「なにこの扉・・・。」
私は気になって、開けてみることにした。後ろには何もないのだから、なにかあるわけではないとわかってはいる。でも、誰かがこの先にいることを願って。
ガチャ
ギギギギ・・・
ドアが開いた瞬間に、眩しいくらいの光が差し込んだ。
「わっ、まぶしっ」
私が反射的に独り言をこぼしたときだった。
「あれ、まだこっちの世界、人間いたんだ。」
それは、紛れもない「人」の声だった。
見ると、綺麗な金髪を左の方にルーズサイドテールでまとめ、透明に少し紫が入ったような色の瞳で、私を見つめている人がいた。どことなく雰囲気が女神様に似ている気がする。
「君はきっと選ばれたんだねぇ。私の世界もひどいことになってるよー。ま、こっちのほうがめちゃくちゃか。」
彼女はそういって苦笑した。なぜか少しだけ、彼女の表情からは物悲しさが感じられた。
「そういや、君、名前は?」
「私・・・は、稲波夕羽です。あなたは?」
「私は白月でいいよー。天使見習い。夕羽は高校生かな?」
「いや、高卒でフリーターやってました。というか、て、てんし、み、見習い?」
「あー、そっか。こっちではそういうの御伽話なんだっけ。そ。今は本物の天使見習い。」
本当にそういうのあるんだ。へー。
「よっし、じゃあこっちの世界にいてもなんだし、私の世界に行こーう!」
「え?」
展開が早すぎて状況が飲み込みきれていない。
「私の上司に会いに行くの!よくわかんないと思うけどとりあえずついてきて!」
「は、はい・・・。」
彼女は私がそう返すと、私の腕を引いて彼女が出てきた方向(私が行こうとしていた方向)に歩を進めた。
その先は、私が知っている世界ではなかった。
「ここは、パラレルワールド。夕羽がいる世界とは別の世界。今は時間がないから、驚くのは後にして!私にしっかり掴まってないと死んじゃうよぉ?」
彼女は悪戯な笑みを浮かべたかと思うと、深呼吸をした。
「よし、いくよっ!しっかり掴まるんだよ!」
「テレポート!」
彼女がそう言った後、私と彼女の周りの木の葉が揺れだした。
そして気づいたときには、目の前に大きくて立派な宮殿があらわれていた。
「やっぱいくらやってもテレポートだけは疲れちゃうなぁ。チサちゃんはなんであんなにうまくできるのかなぁ・・・。」
彼女はなにやらブツブツと独り言を唱えているが、よく聞き取れない。私はそんなことよりも、実際にテレポート(瞬間移動)を私自身が今したということに驚きを隠せないでいた。
「ふふ。私も初めてテレポートしたときは同じような反応してたんだろうな〜!じゃ、行くよ〜」
彼女は少し笑って、手招きをした。先程からなぜかわからないが、急いでいるようだ。
「ま、待ってください!」
私はそう言って彼女についていく。
彼女に案内されてついたところは、宮殿のど真ん中にある部屋だった。
「この先にはねぇ、神様がいるから失礼のないようにしてね。多分神様とかさっきのテレポートとか、全く理解できてないだろうし混乱してると思うけど、とりあえず目の前の部屋にいるのは神様だから。もうなにも気にしないで。」
彼女は後でちゃんと説明すると言い、目の前の扉を開けた。
「あら、どなたかしら。」
目の前にいるのは神様、目の前にいるのは神様・・・。
私はそう心で唱えながら、前を見た。すると、前にはカーテンで見えないが、女神様らしき人のシルエットがうつっている。
「え、ええっと、」
私がなんて言おうか考えていると、白月が先に言葉を発した。
「セレーナ様、お久しぶりです。私のこと、覚えていますでしょうか。」
「もしかして、白月ちゃんかしら。あってる?」
「そうです。白月です。セレーナ様もお元気そうで何よりです。」
先ほどとは別人かのような振る舞いの彼女に、私は思わず笑みをこぼしてしまった。
「よく生きていたわね。この間、あっちの世界の人類が滅亡してしまって、こっちにも異常が生じてるから、あなたに関する文献がすべて消えてしまったのよ。だから、てっきり私はあなたも死んでしまったのではないかと思っていたけれど・・・大丈夫そうみたいね。」
「いいえ、私は死んでいます。今は、私の魔素を使ってなんとか実体を保っていますが、いずれ魔素はつきるので、早くこちらに来たかったのです。」
「あなた、本当に死んでるの?そうは見えないけれど・・・。いいえ、そうね、あなたは世界最強だったわね。魔素の量は桁違いだものね。」
「階段から足をすべらせて、死んでしまいました。本当に自分が情けないです。」
え、なんだか会話についていけないけれど、階段から足をすべらせてし、死んだ・・・?
この人は幽霊・・・?
「あなたが階段から落ちて死ぬなんて、人生わからないものなのね。でも、私が見る限り、今のあなたでもまだ世界最強に余裕で返り咲けるほどの力は残っていそうだからよかったわ。」
この人は世界最強だったのか・・・?
「で、本題は?」
セレーナ様と呼ばれていた人が、私の方を見てそういった。
「この子に、昔の私みたいに種族改変の儀式をしてあげてほしいんです。この子は、あちらの世界の唯一の生き残りです。」
「あなた、あの世界で生き残ったの?!あいつが取り逃がすとは思えない・・・。もしかして、あなたは選ばれた人なのかもしれないわ。いいわ。あなたに種族改変の儀式をしましょう。」
セレーナ様は、少しフッと息をこぼしたかと思うと、大きくすうーっと深呼吸した。その瞬間に、周りの雰囲気が少し重くなった気がした。
「ここに座って。」
私は言われた通りに目の前にあった椅子に座った。
「いくわよ。」
彼女は手を組むようにして、願い事をするときのようなポーズをとった。
「レースモディフィケーション」
彼女は、独り言のように静かに、そして力強くそう唱えた。
「ふうー。やっぱりこの儀式はいつまで経っても慣れないわね。というか、あなた抵抗強すぎよ。私の力でも種族改変できないなんて初めて。弱いスキルしかあげられなかった・・・。ごめんなさい。」
「いや、セレーナ様が謝ることないですよ。私も初めてあったとき、なんとなくこの子は他の人と違うと感じたので。」
「やっぱりそう思う?私もそうだったわ。」
二人がなんのことを話しているのかよくわからない。
「ほんとはね、種族改変の儀式を受ければ、誰でも人間から天使とかになれちゃうんだけど、夕羽の場合は抵抗が強すぎて人間から変化させることができなかったの。多分、もともと日本というかこことは別の世界にいたから、体質があわなかったんじゃないかな?」
種族・・・改変・・・。というか、この人、私の世界のことを知ってる・・・?
「私ももともと人間だったんだけど、セレーナ様に種族改変の儀式をしてもらって天使になったんだよ。私も元は日本人。」
そういって彼女は少し頬を緩めてみせた。
なんかそういえば出会ったときに、天使見習いがどうとか言ってたような気がする。というか、同郷なら日本を知っているのも納得だ。
「あなた…夕羽と言ったかしら。あなたは魔法を極めなさい。さすれば、いつかは魔法の才能が開花し、世界最強にも劣らないほどの実力を持つことができるでしょう。」
セレーナ様は真剣な眼差しでこちらを見ながら言う。彼女は、何も知らない私でもなぜか神秘的だと感じてしまう。まさに女神だ。なんだろう。私の知っている女神様と少し似てるんだよなぁ・・・。
「魔法・・・ですか。この世界では魔法が使えるのですか・・・?」
「ええ、もちろん。あなたの世界ではそういうのはないのよね。」
セレーナ様はそう言って少し苦笑いをした。
「というかあなたたち、ここでのんびりしている場合じゃないんじゃない?私もこれから他の神との緊急会議があるのよ。」
「たしかに。まずはあっちの世界をめちゃくちゃにした犯人を探さないと。」
「あら、犯人ならもう、白月ならわかってるんじゃないの?」
「やはり、あの人ですか?あの、短期で有名な。」
「そうよ。クレー・メラーティアよ。この騒動の主犯格は。」
「よりにもよってあの人か・・・。あんまり関わりたくないんだよなぁ・・・。」
何がなんだかわからないが、犯人がわかったらしい。すごいなこの人たち。
「ところで、白月。リザレクションで生き返ることはできないの?」
「まだわかりません。死んでいると魔法が使えないので。」
「それもそうね。なら私がやってみるわ。いくわよ。」
セレーナ様は、左手を白月の前に突き出した。
「リザレクション!!」
セレーナ様がそう言い放つと、白月の体がキラキラと光りだした。セレーナ様は、それをじっと見つめている。
「駄目です。生き返りません。半透明がもとに戻らない。」
「私でだめなら無理みたいね・・・。なにか条件があるのかしら。」
白月とセレーナ様は、それから暫くの間黙ってしまった。
「まあいいわ。私もなにか方法がないか考えておくわ。とりあえずメラーティアの怒りを鎮めてきて頂戴。彼女はきっと今日の会議にも来ないでしょうから。」
「そうですね。では、失礼します。ありがとうございました。」
「夕羽も、次来たときはしっかりおもてなしするからね。じゃあ二人を一番近い街にテレポートするから、夕羽はしっかり白月につかまっているのよ。」
「は、はいぃ」
我ながら情けない返事だ。
「テレポート!」
セレーナ様がそう言い放つと、段々と周りの景色が変わり始めた。
そうして、いつの間にかどこかの国の門前に来ていたようだ。
まだテレポートは慣れないな。
「ここは・・・。」
私が思わずぼそっとつぶやくと、白月にそれが聞こえていたのか、私に微笑みながら言った。
「ここは多分王都だね。この国の中で一番発展している都市、エルナーリア!メラーティアとの戦闘に備えて、物資を揃えようか。」
「は、はい・・・。」
そうしてこの日は、彼女に促されるままにいろいろなお店に行って、物資を買い揃えた。
―――王都内 宿
「ふわーっ、疲れたぁーっ!」
私は宿屋につき、部屋に入るなりすぐに思いっきりそう叫んだ。それもそのはず。今日初めてこの世界に来て、種族がどうとか世界がどうとか、初日に神様に会ったとか、情報量が多すぎるのだ。私の脳内はもうとっくにキャパシティーオーバーです!
私がそのようなことを考えていると、ふいにドアをノックされた。
「はーい」
「夕羽、今日は疲れたでしょ。明後日に旅に出るから、明日はゆっくり休んで。この都市の観光とかもいいかもね〜!それと、今日買ったもののお代とかは気にしなくていいから。」
「ほ、本当にいいんですか。あ、でも払えるお金はないんですけど・・・。」
「いいのいいの!この世界の先輩として、当たり前のことをしたまでだから!じゃあ、おやすみ!」
彼女はそう言って、そうそうに部屋から出て行ってしまった。なんだか気が晴れないが、まあここは大人しく、彼女の好意に甘えておくとしよう。
私はそんなことを考えながら、部屋のドアをしめた。
「ごめん、ごめん!一つ忘れてた!これあげるから!」
白月は私がドアをしめた瞬間に、またドアを思いっきりひらいた。そして、どこからか小さな手鏡を出した。
「あ、ありがとうございます・・・?」
私は内心はてなだったが、鏡に映り込んだ自分を見ると、思わず叫んでいた。
「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私は叫びながら、手鏡を落としてしまい、そのまま割ってしまった。
「そんなに驚くかなぁ。」
白月は私を見ながら、くすくすと笑っている。
「今日さ、セレーナ様に種族改変の儀式してもらったでしょ?私が詳しく説明しなかったのが悪いんだけど、種族改変ってのは、簡単にいえば生まれ変わるってことなんだよ。だからおのずと自分の顔とか、身長とかも変わるの。本当に申し訳ない。」
白月は先程の面白がっていた表情とは打って変わって、深々と頭を下げた。
「頭を上げてください。別に私は驚いただけで、この顔が嫌って言っているわけではないんですから。」
私は穏やかに笑ってみせた。
「本当に、ごめんね!じゃあ、それだけだから、おやすみ!」
白月はそう言ってそうそうと私の部屋から立ち去っていった。別にそんなに気にしてないけどなー。
―――翌日 宿
コンコン
私は白月さんの部屋をノックした。が、反応はない。
思い切ってドアを開けてみた。
―――いない。
机にはメモ書きが残されていた。
『生き返る方法を探すために、図書館に行ってくる。夜には戻るよ〜』
白月さんの言っていることが、一昨日までの私だったら理解できなかっただろう。改めてこの世界について感動した。
私も観光しようかな。
―――夜 宿
「楽しかったー!異世界めっちゃ楽しいじゃん!」
私は今日、日本では絶対に見ることのできない武器屋や、ギルドなどに行った。ギルドなんかは特に、自分が異世界にいるのだということを再認識させられる。
ギルドでは、受付の女の人に勧められて、冒険者登録してしまった。はたして私はこれから大丈夫だろうか。冒険者カードにはステータスが表示されるのだが、私は知力以外が最低のステータスだった。受付の人は、苦笑いしていた。
そして、武器屋に行くと、店主さんから魔法の杖を勧められた。流石に買いはしなかったが、店主さんが言うには、私は魔法がとても体質的に向いているらしく、そういえば女神様もそんなこと言ってたな、とふと思いだした。武器屋で杖をお試しで使って、魔法を使ってみたのだが、セレーナ様にもらったスキルはどれも最弱のスキルで、全くといっていいほどに使い物にならなかった。だが、店主さんはもっと練習すれば世界でも随一の魔術師になれるかもしれないと言っていたので、私はこれから魔法を極めようと心に誓った。
そんな物思いにふけっていると、どこからか誰かの走る音が聞こえてきた。だんだんと近づいてきている。やがてそれは、私の部屋の前でとまった。
「夕羽ー!ごはん!食べるよー!」
突然ドアをノックもせずに開けてきたのは、白月だった。なんだろう。白月はこういうことをするようなタイプではないと思っていたのだが、そうではなかったみたいだ。
「行きましょうか。」
私はそう言って腰掛けていたベッドから立ち上がった。
下の階からいい匂いがしている。今日の晩御飯はなんだろうか。
続き頑張ります。