第2章 人型‐ヒトガタ‐
第2章 人型‐ヒトガタ‐
「え…なにこれ…」
突如として目の前に現れた人型の物体は全身が白く、緑に光る眼がその不気味さをより一層際立てていた。
リビングにいる母もガラス越しに見える位置にいるはずだが反応はない。
ガラガラッ
「あら、いつのまに外に出てたの」
「え…あ…」
「ちょっと裸足で出ないでよ、入るとき足拭きなさいよ」
母は普通に注意してガラス戸を閉めた。
「見えてないのか…」
抜けた腰に力を入れ、何とか立ち上がった。
すると人型の胸あたりのハッチが開きコックピットへと誘う足場が降りてきた。
「乗れってことか…」
恐る恐る足を乗せるとゆっくりと上昇し人一人座れるほどのスペースが現れた。
恐怖心はあったがSFロボットモノをこの国で観てない男子はいないだろう。
興奮に変わりつつある気持ちを抑えつつコックピットに乗り込む。
赤く点滅する”開閉”とテプラで書かれたボタンを見つけ押してみるとハッチが閉まった。
真っ暗になったコックピット内でソワソワしているとぼんやりと周囲の景色が3点モニターに表示され始めた。
「すご…アニメかよ…」
明るくなったモニター画面にメール文のようなポップアップが表示された。
”これを君に託す、操縦はAIがほとんどやってくれる、オートバランサーもついてるから倒れる心配はないだろう、本当にすまない”
なぜ謝るのかは分からないがとにかく操縦したい、幸い自宅周辺はほぼ田んぼで民家はほぼない。
絶好の環境だ。
テプラやメール文を見るにおそらく日本製だろう。
「車とバイクの免許が取れたんだからできるできるはず…」
特に深いことは考えず片方のペダルを踏んだ、すると機体は大きな音を立てて前に歩いた。そこからは早かった。
基本的な動作は左右の操縦レバーと足元のペダル、あとの細かい調整はAIがやってくれているらしい。それにしても現実で人型ロボが片田舎の田んぼを歩き回っているのが可笑しくなってきた。一通り確認した後、転送されてきた庭に機体を戻しコックピット内の隅々を見渡した。どこかに型式番号やメーカー名があるかもしれないからだ。
右のレバーの下あたりにラベルを発見した。
”型式番号DOR-2112 Matsushiba Electronics Made in Japan”
「マツシバ…って、あの家電メーカーのか」
ポケットに入れていた日本製スマートフォンを起動しマツシバのHPにアクセスしてみた。製品カタログには炊飯器やテレビばかりでさすがに人型ロボットは作っていないようだ。
「電話番号…掛けてみるか」
プルルルルルルガチャ
「こちらマツシバ電器お客様サポートセンターです。」
「もしもし、あの…そちらでロボットを作ったりしていませんか?」
あまりに突拍子もないことはわかっているが他に言葉が出てこなかった。
「…はい?ロボットは作ってはいませんが…悪戯なら電話を切ります。」
「すいません…勘違いでした。」
ガチャ
僕は一度、頭を冷やすためにコックピットハッチを開け外の空気を吸った。
続く