第66話 勇者
僕は、一週間ぐらい配信を休んでいた。ターニャさんからも心配されたので、僕は明日から配信をしようと休んでいた言い訳や雑談に使えそうなことを探しに学校が休日の時に外を歩いていたら勇者に出会った。
「どうしたんですか?」
道具屋を睨みつけているように見ていた。何かあるかもしれないと、僕は勇者に話しかけた。
「あ、エルクちゃん....最近エルクちゃんの配信がないからもしかしたら魔王がいるから安心して配信ができずにいるかと思ってね。だから、明日ぐらいに魔王城を攻めに行こうと装備を整えてるの」
「え?」
僕は、驚いた。
僕が、配信していないからという理由で、魔王城を攻める?といことは、魔王様を倒すということ....
今の僕では、足止めすら敵わない。だけど、僕が配信していない理由が魔王様にあるのではないかと疑っているだけで、魔王様を倒しに行こうとしている。なら、そうではないことを教えてあげたら進行は止められるのではないか?
「ち、ちがうよ。僕が配信しなかった理由は少しサボってただけだから」
「そうなの?」
「そうだよ」
「本当かな〜」
「本当。僕は、ただ最近忙しかったからめんどくさくなってしばらく配信を休んでただけだから」
僕の顔を見て、疑いの目を向けてきた。
「そうなんだ〜」
「そうだよ。だから、魔王城とか最強の魔王がいるから辞めたほうがいいと思うよ」
僕は、魔王様に『様』とつける事ができず心が苦しかったが、これも魔王様への危害を加えられないようにする為だ。
「ふん〜それを証明するのとかあるの?」
「あるよ。今日から、配信再開させようと思って。ターニャさんにも心配されてるし」
「そうなの。わかった。魔王のせいではないならいいわ。今回は、魔王城に攻めることは辞めるわね。もし、魔王とのせいなら、遠慮なく私に言ってくれたらいいから」
「わかった」
勇者は、帰って行った。
僕は、自分の配信で勇者を魔王城への進行を止める事ができたことが嬉しかった。だって、僕の配信では勇者を足止めする事ができてないと思っていたから、今日勇者と話して魔王城への侵攻を止める事ができた。
これは、魔王様に自慢ができる。僕は、ルンルンで魔王城に居る魔王様に報告することにした。
「魔王様。勇者を進行を阻止する事ができました」
「ほお」
僕は、事細かく魔王様にことの状況等を話した。
「よくやった」
「えへへへ〜」
僕は、久しぶりに魔王様に褒められ僕はつい照れてしまった。
「なら、一つだけ願いを叶えてやろう。お前が、男に戻りたいなら戻してやるぐらいの魔力はもどったからな」
「え....」
僕は、ただ魔王様に褒めてもらえると思って報告をしたが、魔王様からなんでも一つだけ願いを叶えてくれるらしい。僕を元の男に戻してくれたり....
昔の僕なら、すぐに男に戻して欲しいと思った。だけど、この体になって色んな人に関わったり、男だったら出来ない事だってできた。
それに、ちやほやされるのは嬉しかった。
だけど、男に戻ったら.....
「え、あ....」
僕は、魔王様からの願いを叶えてくれる願いが思いつかない。すぐに、魔王様に願いを言わないのは失礼。
だけど、男には....戻りたくない!!僕は叶えて欲しい願いはない。魔王様のせっかくの提案を断ることはできない。
僕は、服の袖をギュッと握り覚悟を決めた。
「じゃ....お」
「魔王さん。じゃあ、タメ口でいいんじゃないの?だって、親子なんだから。あと、ゼーフちゃんにもね」
「え?」
「エルクがいいなら、それでいいぞ」
「で、では、お願いします」
「わかった。だが、一つ条件がある我とフォコのことをお父さんとお母さんと呼びなさい。ゼーフにもそう伝えてくれ」
「はい。お父さん」
僕は、男に戻ることをやめた。いざ、男に戻れると思うと戻りたくないという気持ちが昂った。
フォコ様、いやお母さんのおかげで僕はこの体のままでいられる。それに、ターニャさんが心配するもんね。




