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【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第2章 クラスリーダー総選挙

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第88話 お願いがあります

 ロアがジョシュア先生を連れてきた。かなり時間がかかったから最後かな。

 ジョシュア先生の他にも他班の班長がいる。


「へぇ。面白い家だな」


 ジョシュア先生は外から家を眺める。


「屋根に樹皮を使ったのはお前らだけだ」

「他の班はどうだったんですか?」

「基本粘土で作っていたな。自作する班もあれば、天然の物を採っている班もいた」

「粘土なんて、一体どこに……」

「知らないのか。この森の奥に粘土で出来た洞窟があるんだよ。大体の班はその付近に拠点を構えていたな」


 森で中々誰にも会わなかったのはそこに拠点が集中していたからか。粘土の家に比べたら、これは……どうなんだろう。


「いいんじゃねぇの。樹皮の屋根も意外に強固だ。なるほど。ネンチャク木の樹皮の樹液を利用したのか」


 ロアとラルーシェがハイタッチする。


「ちなみに、屋根に動物の毛皮を使った変わり者もいたぞ」


 横を見ると、別の班で班長をやっているアランが頬をかいた。コイツの班か。


「風呂はこっちだな」


 ジョシュア先生は風呂の前に足を運ぶ。


「風呂は……うん。自動給水は無理だったけど、自動でお湯を作れる仕組みは作れたか。うんうん、優秀だな」


 ジョシュア先生の言葉を聞いて、苦い顔をする班長もいれば、余裕の笑みを見せる班長も居た。

 俺は余裕の笑みを見せた班長、もといヴィヴィ=ロス=グランデ様に声を掛ける。


「お前のとこはどうだったんだ?」

「自動で水を入れ、自動で湯を沸かすトリックを作ったよ。おかげで、お風呂に関しては満点を頂いた」


 さすがだな……。


「料理は中か?」

「そうでーす! ご案内しまーす!」


 ロアの案内でジョシュア先生は家の中に入る。


「飯は……ちょっと冷めてるか」

「先生が遅いからですよ!」

「ま、それは加味して評価するよ。頂きます」


 ジョシュア先生は木の串を持って焼き魚を食べる。


「うん! 美味い美味い。冷めても全然いけるぜ」


 そんなジョシュア先生に、怪訝な視線をぶつけていたのはヴィヴィだ。


「……あれだけ食べて、まだ食べられるのか……」


 そっか。他の班の料理も食べてきたんだもんな。何人前食べているんだあの人……。


「ごちそうさま」


 料理を平らげたジョシュア先生は立ち上がり、羊皮紙に何かをメモしていく。


「全体的に高水準だな。家85点、風呂80点、料理82点。総合点は全体で2位……」

「やったー!」

「と言いたいところだが、総得点から20点引かせてもらう」

「え!? なんでですかぁ!?」


 ロアが抗議すると、ジョシュア先生は羊皮紙を丸めてロアの頭を羊皮紙で叩いた。


「いてっ!」

「机も石、椅子も石、壁も石、風呂も石。石石石石! 石に頼り過ぎだ! この椅子のせいでケツがめちゃくちゃいてぇよ! よって減点20。それでも4位。半分よりは上だよ」

「え~……」


 ガッカリするロアだが、俺的には十分な成果だと思う。ラルーシェも満足そうだ。


「これで課題は終了だ」

「ちょっと待ってください」


 今まで黙っていた金髪の女子生徒、ルチアが待ったをかける。


「作った物はどうするのですか? まさか放置ってことはないですよね。自然界をいたずらに荒らすのは錬金術師として見過ごせませんけど」


 ルチアは真剣な顔つきで言う。


「こっちで解体するから心配するな。自然の修復もちゃんとやっておく。実はな、まだ採点は終わってないんだぜ」

「どういうことですか?」

「これから1週間、家の経過を観察するんだよ。劣化などを原因に家に綻びが生まれたら、その分減点となる」


 班長達からため息を零れる。


「つーわけで、お前らは班員連れて教室戻れ。いいな」


 こうして、サバイバル演習は終わった。



 ---



 教室にて解散となったわけだが、俺とロアはラルーシェの席へと足を運んだ。特に打ち合わせしたわけでもなく、自然に集まった。


「お疲れ様2人共!」

「お、お疲れ様です」

「お疲れ様」


 ラルーシェはまたぬいぐるみを抱えている。


「ぬいぐるみを大量に作っているのって、やっぱり趣味なのか?」

「え?」

「いや、よくよく考えてみるとさ、お前が教室でぬいぐるみ作るの違和感あるなって。目立つし」

「それは……そうですね。ぬいぐるみ作りは修行なんです。私は、ドールマスターの家系なんで」

「ドールマスター?」

「ドールマスターとは、人形にマナを与え操作する錬金術師のことだ」


 と、得意げに解説したのはいつの間にか居たヴィヴィだ。


「ひぃ!?」

「いきなり現れるなよ。ラルーシェがビビってるだろ」

「すまない。つい興味深そうな話をしていたから」


 ヴィヴィはまじまじとぬいぐるみを見る。


「ドールマスターは人形を作れば作るほど人形の扱いが巧みになると聞く。ぬいぐるみ製作を通して、ぬいぐるみの細部をより深く理解するためだね。どれ、動かす所を見せてくれないか?」

「……えっと、はい」


 ラルーシェは両手を上げる。すると、両手の10本の指先から、光の糸が出た。糸がぬいぐるみに繋がると、ぬいぐるみがひとりでに動き出した。そのままぬいぐるみはダンスを踊り出す。さらに、


『どう? ぼくのダンス。かっこいい?』


 ぬいぐるみが……喋った。ラルーシェの声だ。


「腹話術か? いや、でも声はぬいぐるみの方から聞こえたな……」

『声を繋げることもできるんだよ! あと視界も繋げられるんだ!』


 すげぇ。めちゃくちゃ便利だ。

 つーか、ぬいぐるみを通すと元気だな。


「その眼帯の下の右眼をぬいぐるみとリンクさせているんだね。素晴らしい技術だ。感服する」

「べた褒めだな。お前には真似できないのか?」

「無理だ。才能だけでなく、途方もない努力が必要だ。一家相伝の技術ってやつだよ」

「ラルーシェちゃんすっごーい!」


 ラルーシェは光の糸を解き、ぬいぐるみを両手でキャッチする。


「いいものを見せてもらった。それじゃ、邪魔して悪かったね」


 ヴィヴィは軽く手を振りながら去っていった。アイツ、ホントに秘伝の技に興味があっただけなんだな。


「あの……」


 ラルーシェは両手に持ったぬいぐるみで口元を隠す。


「……お願いが、あります……」


 ロアは微笑み、言葉を待つ。


「私と……友達に、なって、くれませんか……?」


 それは、ラルーシェにとって、かなり勇気の要る言葉だったのだろう。でも、言わずにはいられなかった言葉だったのだろう。


 その一言が言えなかったために、きっと去年は誰とも上手くいかず、そして留年したのだろうから。


「もちろんだよぉ~!」


 ロアは涙を瞳に溜めながら、ラルーシェを抱きしめた。


「ろ、ロアさん! 苦しいです~!」

「あはは! 頬っぺたモチモチ~!」


 頬を合わせるロアとラルーシェ。


「俺で良けりゃ友達になるよ。よろしくな」


 俺は右手を差し出す。ラルーシェアは躊躇いながらも、右手を握ってくれた。


「はい。よろしくお願いします……」


 白く冷たかった手が、温かくなっていた。

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