第85話 樹海探検
というわけで、俺達ジャッククラスは樹海の前に来た。
「この演習はとある特別試験の予習でもある。ガチでやった方がいいぞ」
時刻9時半。
「班をまたいでの協力は禁止。他の班からはなるべく離れて行動するように。では、演習はじめ」
演習が始まる。
樹海に入り、散り散りになる。
「まずはどこに拠点を置くかだな」
「涼しい場所がいいよね。あとはお風呂のことを考えると川沿いがいいかな~」
「……」
ラルーシェが唐突に足を止める。
「どうしたラルーシェ」
ラルーシェは屈んで、木の下に生えているキノコを手に取った。
「これ、食べられます……」
「え、ホントに!?」
「……焼いて、日本にある醤油という調味料をかけると美味しいです」
「お前、キノコに詳しいのか?」
「……キノコというより、食べ物が、好きで……」
まだ照れはあるけど、さっきより全然喋れるようになったな。
「じゃあ採取しよう採取!」
俺はキノコを3本採取する。
また歩き始めてすぐにラルーシェは足を止め、オレンジ色の葉っぱを指さした。
「この葉っぱ……アブリーフと言って、燃料になります」
「燃料は必要だな。飯を作るにも湯を沸かすにも使える」
アブリーフも採取する。
次にロアが見たことない実を成した木の前で止まった。
「ねぇねぇラルーシェちゃん! アレは食べられる?」
ロアが指さした木の実は丸く、色が赤と青の二色。ちょっと歪な配色だ。
「大丈夫です。けど……」
「やった! いただき!」
ロアは木を登り出す。
「おい、気を付けろよ!」
「大丈夫大丈夫! ちっちゃい頃から男の子に混じって木登りしてきたから!」
ホントだ。安定感ある登り。猿かアイツは。
ロアは木の実を取り、下に投げる。5個投げた後にロアは木から下りる。
「じゃあ早速いただきまーす!」
ロアは木の実を服で擦った後、かじりついた。
「あ……」
「ぶはっ!」
ロアは口に入れた木の実をすぐさま吐き出した。
「な、なにこれ!? 甘っ!?」
「はい。それはミツアメと言って、毒は無いものの凄く甘いです……」
「さ、先に言ってよぉ……」
「ご、ごめんなさい……」
俺はミツアメを手に取る。
「食材にはならないか」
「いえ。絞ると甘い液体を出します。それを調味料に使えます」
「ハチミツみたいなもんか」
取っておいて損は無いな。これも採取っと。
俺はシャツを広げ、そこに採取したものを乗せているがそろそろ容量オーバーだ。
「拠点を決めよう。もう俺のシャツは限界だ」
「そうだね。でも川が……あった!」
先頭を歩いていたロアが駆け出す。
森がある地点で途切れていた。その地点に行くと、川が見えた。川沿いには砂利だらけの地面が広がっている。
「ここにけってーい!」
「何か布代わりになるものないかな? ここに食材を置くのは気が引けるぞ」
砂利が食材の中に食い込んでしまう。
「な、ナイフがあれば布の代わりを用意できます」
「石のナイフでも大丈夫?」
「多分、大丈夫です……」
ロアは森に戻り、土の地面に石で合成陣を描く。そこに砂利を集めて、合成陣を発動。石で出来たナイフを作り上げた。石だけど、刃の部分はかなり鋭利に見える。
「どうぞ」
「ありがとうございます」
ラルーシェは石のナイフを使い、木の皮に切れ込みを入れ始めた。
「樹皮を使うのか」
「はい」
ラルーシェは樹皮に切れ目を入れた後、一気に樹皮を剥ぎ取る。
剥いた樹皮はめちゃくちゃ糸を引いている。
「うげ。なにこのベッタベタなの」
「これはネンチャク木特有のもので、軽い接着剤になります。人間でいうところの粘膜みたいなものです。樹皮は時間が経てば修復するので、環境破壊にもなりません。こちら側を下にすれば……」
ラルーシェは砂利だらけの地面に樹皮を敷く。樹皮はべったりと地面にくっつき、風が吹いても微動だにしなくなった。
「風で飛ばないけど、これの上に置くのもちょっと……」
ラルーシェはナイフの腹を使い、樹皮の表面を削る。するとツルピカになった。
「おお。凄いな。これなら問題ない」
俺は樹皮の上に採取した素材を全て置く。
「凄いじゃんラルーシェちゃん!」
「ただ飯が好きなだけでこんな知識得られるか?」
「……」
ラルーシェはなぜか、固まってしまった。
「?」
俺とロアは目を合わせる。
これだけ色々できたんだ。もうちょい誇っても良い所だけどな。
「私は……大したことありません。ただ、ズルいだけです」
「ズルい? ズルいって何が?」
ロアが問うも、ラルーシェは答えない。
埒が明かないと判断した俺は話を切り替えることにした。
「ロア。次の工程に進もう。何をするにもまずは家だ。この樹皮を敷き詰めて床にして、木材集めて家を合成しよう」
「あ、うん。わかった」
「石のナイフ、もう2本できるか?」
「作らせていただきます!」
ロアはまた石を集めに行った。俺はなぜか落ち込んでいるラルーシェに目を向ける。
ラルーシェ。コイツ、何か訳アリだな。




