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【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第2章 クラスリーダー総選挙

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第80話 店を開こう①

 クラスリーダーも決まり、ファクトリーのメンバーも5人になった。山積みだった問題も片付いてきたな。


 アトリエを見つけた報酬で賞金300万ゴルドも入った。この金で、いよいよオーロラファクトリーの店を建てられる。ちなみにルチアは快く賞金をファクトリーに入れてくれた。未だにアイツはニコラスの一件に責任を感じているみたいだ。


「場所は9番通りにしようと思っている」


 登校時、通学路にて。たまたま出くわしたヴィヴィにそう宣言された。


「9番通り? せっかく300万手に入ったのにか?」


 9番通りの一区画は月25万で借りられるが、その分客足はほとんど期待できない。


「1番通りから4番通りのレンタル料は月100万はくだらないからね。いくら300万という元手があっても、失敗した時のリスクが高すぎる。開店コストが50万として、残りが250万ゴルド。9番通りは一区画月に25万ゴルドだから賞金だけでも10か月はもつ。ランコストは月の支給金10万で賄えるだろう」

「うん。悪くないと思う。人間、安全安定が1番」

「昼休み、メンバーを集めてくれ。全員の確認をとって今日中に店の場所を決める。来月の上旬にはオープンだ。忙しくなるよ」


 ヴィヴィはいつもより足早に歩く。俺はヴィヴィの背中に向かって、


「気のせいかな。楽しそうに見えるぞ。ファクトリーなんて、賢者の石を造るついでじゃなかったのか」


 ヴィヴィは肩越しに細く尖らせた視線をぶつけてきた。


「楽しそうに……見えたかい?」

「そりゃもう」

「そうか……私らしく無かったね。私の目的は賢者の石を造ることだ……楽しむことじゃない。妹を見つけるためにも、私は……」


 ヴィヴィの表情が硬くなる。


「どうした? 顔色悪いぞ」

「すまない。妹のことを思い出してね」


 ヴィヴィは立ち止まり、こっちを向く。俺も1度、歩みを止める。


「お前がいた機関……ヘルメスに居た妹か」

「ああ。私と違って一度も落ちこぼれることなく、ヘルメスの研究についていった。優秀な妹だよ。私のような欠落もない。まさにヘルメスの最高傑作」


 空を見上げるヴィヴィの瞳には、後悔の念のようなものを感じた。


「ねぇイロハ君。ヘルメスの目的を覚えているかい?」

「ニコラス=フラメルの復活、だろ? つーか、この前の一件で復活したっちゃ復活したよな」

「そう。アレだけのマナで魂を宿すことができる。恐らく、ニコラスを復活させること自体は難しく無いんだ。じゃあなぜ復活させないか。それはきっと……ニコラスの能力を十全に発揮できる器が無いからだ」


 ルチアには悪いけど、ルチアの体はニコラスにはあまり合ってない感じだったな。ルチアの体に対して、オーバースペックの魂だった。

 ゆえに、学生の俺達だけでも倒せた。

 もしもニコラスが万全な状態で復活したならば、俺達は軽く全滅していただろう。


「ならば、ヘルメスの目的とは、その器を作ることだったんじゃないかな。ってね」

「じゃあ、お前を含めた子供たちが受けた人体実験ってのは……」

「ニコラスの器を作るためのものだった……という仮説が、この前の一件により立てられた。だとすれば、ヘルメスが妹を――リリィを、放っておくはずがない。リリィは今もヘルメスと共にいて、肉体の改造を受けている可能性が高い」

「……」

「いま、私がこうしている間にも妹が苦しい目に遭っていると思うと、笑っている場合では……遊んでいる場合では無いと、思ってしまうんだよ」

「ヴィヴィ=ロス=グランデってのは、そんなに器の小さい女だったのか?」

「……なんだと?」


 ピキ。と、顔に力を込めたヴィヴィを見て、俺は笑う。


「俺の知っているヴィヴィ様は寄り道しようが遊んでいようが目的を掴める、大きな器の持ち主だったはずだけどな」

「君ねぇ……」

「楽しんでいいかどうか迷っている時間が1番無駄だろ。楽しそうって思ったら、迷わず楽しめばいい。大丈夫さ。お前が足を止めた分は、俺がカバーしてやる。止まってた分、背中を押してやるさ」


 俺が言うと、ヴィヴィは口元を緩ませ、その小さな握り拳で俺の肩を小突いた。


「生意気だ。クサい。よくも白昼堂々とそんな事が言えるね? 歯が浮くよ」


 照れ隠しの捲くし立てか。かわいいやつめ。なんて思ってたらスネを蹴られた。


「目的が器を造ることなら、賢者の石を造ったところでヘルメスは来ないんじゃないか?」

「いいや。賢者の石は全ての問題を容易く解決できる。奴らが賢者の石を欲していたのは紛れもない事実だ。賢者の石を造れば必ず来る。当然、賢者の石造りは続行するよ」


 ヴィヴィは俺を指さし、こう言い放った。


「楽しみながらね」


 ---


 昼休み。オーロラファクトリーでヴィヴィの席に集まる。そこでヴィヴィの意見を聞いたルチアは俺の机に座り、スカした顔で意見を述べた。


「ナンセンスよ! この私が所属するファクトリーがそんな僻地で商売なんて……やるなら1番通りでドーンとでっかく――」

「ではルチア君、赤字が出た時は君が自腹を切って補填したまえよ」

「9番通りか。レトロな風景は良いモノね」


 切り替え早いな。


「決まりだ。9番通りのど真ん中に店を構える」


 ヴィヴィは印のついた地図を机に投げた。


「すでに場所は予約済みだ。あとはハウスファクトリーで契約を結ぶのみ」

「ついにですね! お店をジブン達の手で作るなんて……つよつよです!!」

「そうだね。内装とか凝りたいなぁ。あ、店内BGMのチョイスは僕に任せてよ。良いオルゴールがあるんだ」

「馬鹿ね。音楽は私に任せなさい。一流の楽団の演奏を、メモリー・ブックに記録してあるわ」


 音楽か。それもいいが、


「今時はラジオだろラジオ。錬金術師の世界にはラジオは無いのかよ」

「ラジオなんて下賤なものいらないっての!」

「やれやれ。店内BGMの話など後にしてくれ。まずは建物のデザインからだ」


 右手を挙げる。


「それは任せてくれ。アーティスティックな店にしてやる。敷地面積と高さ制限の情報をくれ」


 ヴィヴィから敷地についての詳細が書かれた紙を受け取り、さっそくノートにデザインを描き始めた。午後の授業中も一心不乱に描いた。


 高さ制限はかなり余裕があり、三階建ての建物が作れるほどだ。敷地も十分。


 ヴィヴィから店とは別に倉庫とアトリエも用意してくれと頼まれた。店、倉庫、アトリエ。この3つは必須だ。


 一階を大きめにとって、二階建てにしよう。二階部分をアトリエと倉庫にし、一階を店にする。店の形は……。


「……」


 考える。

 錬金術師の店はどれも特徴的な形だ。外装も派手。たとえ外の世界では味のある外装でも、この街では埋もれてしまう。


 構造の時点から枠を破らないと。


「……やめだ」


 外の世界の『常識』を持ち込むのはやめた。

 考え抜いた先、俺がデザインしたのは――


「ツリーハウス!?」


 放課後、俺がデザインを提出すると、まずルチアが驚いた。

 俺がデザインしたのは大木を中心に据えた建物だ。大木の中を倉庫とアトリエにし、大木に支えられる形で店を設置するというもの。大木にはもちろん階段を設置して、外階段から大木の上の店に行けるようにする。


「無茶なプランだけど、錬金術師なら作れるだろ? さ、さすがに無理か?」


 アランは「へぇ」と顎を撫で、フラムは「わぁ……!」と目を輝かせ、ルチアは口をあんぐりと開けて「……なんて無茶な……」と笑った。


 ヴィヴィはルチアと同じで戸惑いながらも、口を笑わせていた。


「やれる……いや、やろう! いち錬金術師として、これはぜひ作ってみたい!」


 子供のように目を輝かせる。

 ヴィヴィの提案に、全員が頷いた。


 次に俺達が錬成するもの……それは、ツリーハウスに決まりだ。

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