第68話 トレジャーバトル
朝っぱらから俺達は入学式を行った大広間に集められた。
1~3学年と、教師陣。他にも専門学科の生徒や学院生(卒業後も学校に残り学んでいる生徒)も揃っている。総勢2000人はいる。
全員の前、壇上にはカボチャ頭が立っている。カボチャ頭もとい校長先生は両腕を広げ、
「諸君! 申し訳ないが、今日の授業は全て休みとする!」
歓声とため息が同時に響く。サボりたい生徒は喜び、学びたい生徒は肩を落とした。
「代わりに、全校生徒全教員による『宝探し』を敢行する! 名付けて『ランティス・トレジャーバトル』!!」
校長は声高に叫ぶが、こっちサイドは全然意味不明なためシラーッとしている。
「吾輩はこの学校のある場所にアトリエを隠した! そのアトリエを貴殿達には探してもらう。アトリエの特徴は古びていること、そして、簡単に見つかる場所には無いということのみ。見つけた者には賞金300万ゴルドを贈呈しよう!」
さっきの冷ややかな空気から一転、建物が揺れる程の歓声が上がった。
300万ゴルド……大金だ。ファクトリーハウスの建築資金に欲しいとこだな。
「これはでかいね」
後ろからアランが言う。
「ジブン! 頑張ります!」
フラムは握り拳を振り上げる。
俺は隣に居る少女に目を向ける。ヴィヴィは……乗り気だな。口角が僅かに上がっている。金が欲しいというのもあるだろうが、コイツの場合は純粋にアトリエそのものに興味を抱いてそうだ。
「これよりスタート! 自由に探索してくれたまえ!」
校長がスタートの宣言をすると、生徒たちは一斉に散った。
俺達オーロラファクトリーも人の波に乗り、一旦大広間から出て上の階に上がる。
「ヴィヴィ、どう探す?」
「ジャック=O=ニュートンが隠した部屋だ。常套手段で見つかる場所には無いだろう。頼りになるのは私の嗅覚と、イロハ君の色彩能力だ」
「お前の嗅覚が頼りになるのはわかるぞ。アトリエ内の薬品や素材の匂いを拾えるからな。でも俺の色彩能力は物探し……というか部屋探しには使えないだろ」
「そんなこともない。例えば壁に何か細工をしたとしたら、その部分の壁は他の壁と色が変わることもある。僅かな歪みかもしれないが、君の瞳はその僅かな歪みを見切れる」
「……まぁな」
「ここはさ、二手に分かれるのはどうかな?」
そう提案し、アランはこの広大な校内を見渡す。
「探索能力を持つイロハ君とヴィヴィさんで分かれて探すんだ。僕とフラムさんはそれぞれ2人のサポートにまわる」
「アラン君の意見に賛成だ。この無駄に広い校内を1グループで探し切るのは不可能だからね」
「ジブンはどっちについて行ったらいいのでしょう?」
「運動能力皆無のヴィヴィには介護役として運動神経抜群のアランをつけたいから、フラムはこっちだな」
「君は私のことを運動音痴だと決めつけているようだが――」
「決めつけてるんじゃなくて純然たる事実だ。時間が無い。屁理屈こねてる時間はないぞ」
「……肯定だ。君の認識を改めるのは別の機会にしよう。そうだ、分かれる前に……」
シュ、シュ。と、ヴィヴィはスプレーを俺とフラムに振りかけた。
「なんだよ急に」
「念のためだよ」
「?」
魔除けの聖水でも掛けてくれたのか?
「ではまた後で会おう。諸君」
ヴィヴィは振りかけた液体の正体を明かさず、廊下を走っていった。
ひとまず液体のことはいいや。アトリエを探そう。
「俺達は下に行こう」
「はい!」
俺とフラムは階段で1階へ。
「どこへ行きますか?」
「人気の少ない所」
「なぜです?」
「人が集まるようなわかりやすい所にアトリエを隠すとは思えない。人が少ない所イコールわかりづらい場所にゴールはあると見た。間違っている可能性も大だけどな」
本校舎は人が多い。あそこでアトリエを見つけた所でややこしいことになりそうだ。
だから俺は本校舎を離れ、離れの校舎を中心に探すことにした。
「やっぱり、こっちは静かだな」
「そうですね。この辺りの校舎は使われてないものもありますから……」
虫の鳴き声が聞こえるぐらい静かだ。閑散としている。
前に来た時と同じだな。そういやあの時、ルチアに焼き芋を貰ったっけ。いかん。あの時の芋を想い出したら腹が減ってきた。
「い、イロハさん……も、戻りませんか……?」
「アレは森か?」
廃校舎の列の先に、森を発見した。そこまで規模は大きくなさそうだけど、
「まさか、森の奥にも校舎があるのか?」
「まま、待ってください!」
フラムが俺の袖を引っ張り、涙目で見上げてくる。
「やめましょう! 怖いですって!」
「わかった。お前は本校舎に戻れ。俺だけで先に行く」
「えぇ!?」
「気になるんだ。あの森の木も土も……色が変だ。それに」
俺は地面に落ちている金色の髪の毛を拾う。
「髪の毛、ですか?」
「ああ。色から見て、間違いなくルチアの髪の毛だ。アイツもこの奥に居るみたいだな」
「見ただけで誰の髪の毛かわかるんですか!?」
「まぁな」
「す、凄いですね……色彩能力というのは……」
俺は森へ足を踏み入れる。
使命感のようなものが心の内にある。この先にある『なにか』を、放置しちゃまずいと直感した。
「ちょ、ちょっと待ってくださいイロハさん~!」
フラムは怯えながらもついてきた。
森を100m程進んだ所で、俺達は校舎を見つける。
間違いなく廃校舎。しかも田舎にあるような二階建ての小さな校舎だ。窓は割れ、虫は湧き、壁にはツタが張ってある。
「いいいいい、イロハさぁん……やばいですって! 絶対、お化け出ますって!」
「お化けはどんな色してるんだろうな。楽しみだ」




