第64話 俺の武器
花蝶の月48日月曜日。選挙まであと一週間。
現状 ヴィヴィ14票 ルチア13票 無効票2 無所属1。
ヴィヴィの負けは無くなった……と安心していいわけではない。ヴィヴィの票が1票でもルチアに流れれば敗北する。もしかしたらヴィヴィに入れると嘘をついている人間がいるかもしれないし、直前で投票先を変える人間もいるかもしれない。まだまだ全然、勝負はわからない。
それにこのままいけばブルースの票が無効票になり、無効票3票でクジ引き選挙になる可能性もある。
「ブルース君をなんとかしよう」
休み時間にオーロラファクトリーを集めたヴィヴィは開口一番そう言い放った。
「投票の条件は『1対1でブルース君を倒す』こと。難しいね」
アランがそう言って腕を組むと、フラムが勢いよく手を挙げた。
「ジブンが爆弾を作るので! それで爆破すればよいのではないでしょうか!」
「否だ。危険すぎる」
「そもそも錬成物は使用していいのか?」
「それについては僕が直接聞いたよ。『武器の範疇であればなんでも使ってくれて構わない』だってさ」
一応フラムの案も、ブルース的には構わないってことか。
「ヴィヴィのライトニングロッドをアランに持たせたらどうだ? アランが動き回りながら雷出し続ければ勝てるだろ」
「僕が杖を扱えればね……」
「無理だろうね」
キッパリとヴィヴィは言う。
「アレは私用に開発した。ゆえに、複雑なマナ操作が必要だ。アラン君のドライブモデルではマナの伝達率的に使用は不可能だ」
「それでは……イロハさんが使うのはどうでしょう」
「それはアリだね。イロハ君なら練習すれば使える可能性がある」
考える。
ライトニングロッドは上手く使えるかもしれない。だけどブルースの攻撃を回避しつつ攻撃を繰り出すのは難しい。
1つ、案はある。だけど、それでは当てられて1撃。とてもブルースを倒すなんて不可能だ。
「ヴィヴィ。1撃でブルースを昏倒させる、あるいはブルースの体を麻痺させる毒は作れるか?」
「物騒ですね……」
「作るまでも無い。彼ら鳥人族には明確な弱点物質があるからね」
「そうか。なら、なんとかなるかもな」
アランは「へぇ」と目を起こして俺を見る。
「君がやるのかい?」
「ああ。一発芸だけど、いけるはずだ」
俺はブルースの席に行く。
「ブルース。今日の放課後空いてるか? 票を賭けて決闘をしたいんだが」
「先約がある。ちょうどついさっき、ルチアに決闘を挑まれた。その後で良ければ付き合う」
あらら、先約取られたか。
「それじゃその後で俺と戦ってくれないか?」
「構わぬ。場所は樹海のエリア4だ」
「わかった」
俺はふとルチアを見る。
ルチアはぎらついた目をしていた。俺を、見ていた。どうやら立ち直ったらしいな。
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放課後。俺達はエリア4……樹海の草原エリアにファクトリー全員で赴いた。
すでに草原の上では武器を持ったブルースとルチアが向かい合っていた。
ルチアは上等な槍を持っている。一方でブルースは使い古した木剣だ。だけど、ブルースは無傷で、ルチアはボロボロ。息も上がっている。
一方的な試合展開だったことは後から来た俺達にもわかる。
「根性は買う。だが、ここまでだ」
ブルースはルチアの腹に突きを喰らわせ吹っ飛ばす。ルチアは草原を転がり、そのまま倒れ込んで起き上がれない。決着はついたようだ。
「昨日ウリゴリを怒らせちまったから、今日の助っ人は頼めなかったか」
倒れているルチアに声を掛ける。
「うるさい。黙れ」
「選手交代だ。悪いがブルースの票もこっちがもらうぞ」
俺は肩に背負った長筒を手に持つ。
「……アランじゃなくて、アンタが戦う気!?」
「まぁな」
「や、やめなさい。ただじゃすまないわよ」
「かもな」
俺は筒の中から槍を出す。槍の矛先には革のカバーを被せており、側面にはゴム紐が付いている。
「次は俺だ。休みはいるか?」
「いらぬ。俺は万全だ」
「そっか。そんじゃ」
俺はYシャツと、スラックスを脱ぐ。
「なにをしている……?」
「着替えだよ」
Yシャツとスラックスの下に着ていた物を見て、ブルースは息を呑んだ。
「なんだ、そのふざけた服は……!」
俺が着ていたのはタイツ。全身タイツだ。だけどタイツ全面に絵が描いてある。様々な色を使った絵だ。
「ふざけてない。これが俺の武器だ」




