第60話 狩り勝負!!!
日差しポカポカ森林の中、俺たちは5人は座って狩人の帰りを待つ。
「あちぃ……」
「あついねぇ……」
「あついです……」
「あついわね……」
「情けないな。私の集落じゃこれぐらいの暑さは基本だ」
スプーシーは汗1つかいてない。
「スプーシーの種族ってなにか名前とかあるのか?」
「狼牙族だ」
「優れた視力、優れた聴覚、優れた身体能力を持つ種族と聞いているよ」
「まぁな。しかし、マナの量は貴様ら人間族より低い。錬金術の技術は圧倒的に人間族に劣る」
「当然よ。錬金術は人が人のために作りし高貴な技術。獣混じりに易々と扱えてたまるもんですか」
ルチアの挑発とも言える発言に対し、スプーシーは眉1つ動かさない。
「お前って捻くれてるよな。どうしてそうなっちまったんだ。話してみなさい。ちゃんと聞いてあげるから」
「なに母親面してるのよ! 捻くれてなんていないわ。錬金術師の名家、イシスフェル家の人間として、他種族に錬金術の技術を流れることを看過してたまるもんですか。教師だけでなく生徒にすら獣混じりがいるなんて度し難いことよ。ジャック校長はなにを考えているのやら……」
「……お前なぁ」
「言っても無駄だぞイロハ。錬金術の世界じゃ、ルチアの反応の方が常だ。お前の居た世界でも差別はあっただろう」
そりゃな。爺さんは日本人の血も持っていて、俺も日本人みたいな面だったからアメリカではたまに差別的なことを言われたこともある。
「逆にお前が私を受け入れていることに驚いている。お前は外部生、それも錬金術についてはあまり知らない方だ。私のような異形をなぜ受け入れられる」
「目の色が綺麗だし、毛の色も綺麗だ」
「……は?」
スプーシーは初めて動揺したような表情を見せる。
「お前の瞳さ、綺麗な琥珀色なんだよな。それと同じ色を自然界で見たことがない。その茶髪も、磨かれた銅のように力強くて素敵だ。なにを否定する必要がある」
「……なんだコイツは」
「すまないね。こういう男なんだ」
「あはは……」
「理解できないな……」
呆れ返る女性陣。ルチアは呆れ果てたのか項垂れてしまっている。
「この世の中は色んな色があるからこそ楽しんだ。どの色も楽しむし、どの色にも上下なんてない。お前は確かに俺のいた世界には無かった『異色』だけど、だからこそ良い。俺とお前が関わってどんな色ができるのか……楽しみだろ」
「ふ――ははははは! お前、面白いなぁ! お前のような人間を『イロモノ』と呼ぶのだろうな」
ズ、ズ。となにかを引きずるような音が森の奥から聞こえてきた。
音が近づいてくると、スプーシーは長斧を構えて立ち上がった。木々の隙間から姿を現したのは……、
「待たせたな」
ウリゴリだ。ウリゴリは熊のような体躯のイノシシを背負っている。
「ほう。やるな」
ウリゴリはイノシシを地面に下ろす。
「俺の相手では無かった」
「つか、この樹海そんな怪物が居るのかよ……」
怖すぎる。
「ふんっ。勝負は決まったわね!」
とさっきまで項垂れていたルチアが元気よく立ち上がった。
……コイツ、顔が赤いな。大丈夫か?
「お待たせ」
と、物音をさせず、俺たちの背後からアランが声を掛けてきた。
俺たちは振り返り、驚く。アランが持ってきたのは……巨大魚。ウリゴリが持ってきたイノシシの1.5倍はある。
「「はぁ!?」」
ルチアとウリゴリが声を重ねる。
「素晴らしい!」
スプーシーは称賛し、
「……君の戦闘力は未だに測り知れないな」
ヴィヴィは引き気味。
「……」
フラムは巨大魚が怖いのか、顔を青ざめさせて俺の背中に隠れた。
「よっこらせ」
アランは魚を下ろす。
コイツ、これだけ大きな獲物を持ってきたのに物音をさせなかった。どんな鍛錬を積めばそんなことができるんだ……。
「勝者は無論」
スプーシーは笑い、アランの右手を掴み上げる。
「こっちだ」
「やったね~」
これで、1票差でこっちが優勢。少なくとも負けは無くなった。
それにしても今回はやけにルチアが静かだ。負けても恨み言1つ吐かない。
ルチアの方を見る。ルチアは息を切らしていた。
「ルチア……?」
「つ、使えないわね! ウリゴリ、アンタ……私の顔に泥を塗った罪は重いわよ!」
息も絶え絶えにルチアは言う。
「筋肉だけが取り柄のくせに、それは飾りなの? ねぇ!」
ウリゴリは額に血筋を浮かばせ、
「……ふんっ。ロストマナを継げなかった忌み子が……調子に乗るなよ」
ウリゴリはまた鼻をフンと鳴らすと、イノシシを持って場から去っていった。
「……い、忌み子ですって……アンタに、アンタに私の何が……!」
「まずい……!」
ふらつくルチア。俺がルチアに駆け寄ると同時にルチアは体勢を崩した。
俺はなんとかルチアを腕で支え、ゆっくりと日陰の地面に寝かす。
「ルチア! しっかりしろルチア!」
「ルチアさん!?」
ヴィヴィが冷静な面持ちでルチアを触診する。
「熱中症だね。アラン君、スプーシー君。君達は今から言う物を採ってきてくれ。即席でポーションを合成する。フラム君は川で水を汲んできてくれ。イロハ君は彼女の看病だ」
ヴィヴィが手際よく指示を出し、全員が動く。
「ルチア……」
ルチアは口をパクパクと開閉させている。なにか話してる?
俺はルチアの口に耳を近づける。
「……待ってよ……」
とても、か細い声で、
「……置いてかないでよ……お姉ちゃん……」




