表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第2章 クラスリーダー総選挙

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/66

第48話 訪問者

 喫茶店“ティーファクトリー”で解散した後、特に外でやることがない俺は帰路についた。しかし困ったことに、自宅の玄関扉の前には邪魔者(ガーディアン)が立っていた。


「遅かったわね」


 そう俺に手を振ったのは金髪の女子、ルチアだ。


「何か用か?」

「ええ。長話になるわ。上がらせてもらってもいいかしら?」


 爺さんの手記は床下、地面の中に埋めてある。上げても問題はないな。


「どうぞ。ドリンクは何がいい?」

「コーヒーでお願い。砂糖は無しよ」


 む。気が合いそうだな。

 リビングに招き、丸テーブルの前に座らせる。ルチアは何やらソワソワしていた。


「落ち着きが無いな」

「う、うるさいわね……男の子の部屋、入るの初めてなのよ……あ、アンタ、変な事考えたら打ち首だからね!」

「安心しろ。俺はお前にまったく性的興味はない」

「なにをぉ!?」


 というかモナリザ以外の女に興味は無い。


「嘘はいいのよ。私のようなパーフェクトな女に野獣の如き性欲を抱くことは罪じゃないわ」

「……アレか。錬金術師の女ってのは、全員自信過剰なのか?」


 同じようなセリフをつい最近聞いたぞ。

 コーヒーを2人分入れ、持っていく。ルチアは俺の家を隅々まで観察していた。


「どこか綻びでも?」

「ないから驚いているの。素晴らしい家ね……ちょっとムカつく」


 テーブルにコーヒーを置き、ルチアの正面に座る。


「この家はアンタが作ったの?」

「もちろんだ」

「なるほどね。ヴィヴィが助手に置くだけあるわ」

「ちょい待ち。俺はヴィヴィの助手になった覚えはないぞ」


 一度だけ助手をしたことはあるけども。


「そうなの? それは失礼」


 ルチアはコーヒーを一口飲み、「美味い」と称賛し、カップをテーブルに置く。


「ファクトリーの先輩から聞いた話なんだけどね、一年生は今月中にクラスリーダーを決めるそうなの」

「初耳だ」

「私はクラスリーダーに立候補するつもりよ。そこで聞きたいのだけど、ヴィヴィはリーダーに立候補すると思う?」


 ルチアの用件、目的。それがやっとわかった。


「本人から直接聞いたわけじゃないが、99%ないな。アイツはクラスリーダーに立候補はしないよ」


 ルチアはクラスリーダーにヴィヴィが立候補することを恐れていたのだろう。ヴィヴィはニコラス賞を受賞し、さらに新入生代表にも選抜された才女。クラスリーダーとして申し分ない資質を持っている。ヴィヴィが立候補すれば強力なライバルになる。


 しかし、ヴィヴィが立候補することはないと断言できる。


 ヴィヴィの一番の目的は賢者の石の錬成。余計な仕事は抱えたくないはず。ただでさえ、今はファクトリー関係のことでバタバタしているからな。


 1%余地を残したのはアイツの名誉好きな面を考慮してのことだ。アイツは功績とやらに強いこだわりがあるからな。クラスリーダーをやっていた、という功績を欲しがる可能性は僅かだがある。


「だから安心しろ。他に立候補者がいない限り、お前がクラスリーダーだ」

「それは困るわね」

「なに?」


 ルチアは予想外の反応を見せる。


「私はね、アイツに立候補してほしいのよ」

「なんでだ? お前はクラスリーダーになりたいんじゃないのかよ。アイツが立候補すれば、確実に票は割れるぞ」

「玉座を勝ち取った者と、玉座を譲られた者では民の支持・信用は大きく異なる。私はね、クラスで……いや、一学年でトップの天才であるヴィヴィ=ロス=グランデを打ち倒し、その上で玉座につきたいのよ」


 言いたいことはわかる。

 明確にヴィヴィと優劣をつけておかないと、この先ルチアが何をしても『ヴィヴィがリーダーの方が上手くやれたんじゃないか?』という感情がクラスで生まれるだろう。このままルチアが誰とも争わず、クラスリーダーになっても――コイツに対する信頼心は芽生えない。ただそこに『選ばせる』過程を挟むことで、クラスメイトには『ルチアを選んだ責任感』が生まれ、ルチアには『クラスメイトに選ばれた自信』が生まれる。


 深く分析してみると、ルチアの思い描く道筋が最善に見える。無論、うまくいけばの話だがな。


「じゃあヴィヴィに直接相談したらどうだ? 立候補して、わざと負けろってな。アイツは合理的な奴だから、きっと乗ってくれると思うぞ」


 と言ってはみるものの、ルチアは断るだろうな。


「それはダメよ。虚飾の王なんて私が望む所ではないわ」


 プライドの高い奴だ。嫌いじゃないけどな。


「でもそれじゃアイツは立候補しないぞ」

「そこでアンタに聞きたいの。どうすればあの女を舞台に引きずり出せる?」


 欲しい質問が来た。


「条件を付ければいい」

「条件?」

「そうだ」


 俺はルチアに1つの策を預ける。

 俺にとって、得しかない策だ。


「……リスクは上がるけど、それで確実にアイツを引きずり出せるの?」

「ああ」


 ルチアは考え込む。5分……10分と。


「わかったわ。アンタの意見を採用する」


 最後に礼儀とばかりに、コーヒーを飲み干した。


「アンタ、悪くないわね。私がクラスリーダーになった暁には側近にしてあげてもいいわよ」

「お前の側近か。それはそれで面白そうだな」

「最後に1つ質問。私とヴィヴィが争った時――アンタはどっちの味方をする?」


 俺はその質問に、真っすぐな視線で応える。


「……ムカつく顔ね」


 ルチアは残念そうに笑い、退出した。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ