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【書き出しコンテスト受賞作/未書籍化】色彩能力者の錬金術師  作者: 空松蓮司@3シリーズ書籍化
第2章 クラスリーダー総選挙

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第46話 ルチア=イシスフェル

 08:50~09:00 ホームルーム

 09:00~10:30 1時間目

 10:40~12:10 2時間目

 12:10~12:50 昼休み

 12:50~14:20 3時間目

 14:20~14:30 ホームルーム

 

 これが1日の日程である。2時間目の後は昼休みだ。俺はアランの誘いで別棟にある食堂へ向かった。


「昼休みの間に城下町に降りて食事してもいいけど、やっぱり学生なら学食を食べたいよね」

「そうだな。授業のある日にしか開いてないらしいし」

「郊外からも客が来るぐらい凄いらしいよ、ウチの食堂」


 食堂に着く。城だ。看板を掲げた城。看板にはフォークとナイフが描いてある。

 開きっぱなしの門から中に入る。

 中は大広間だ。ぱっと見200人以上教師や生徒や一般人は居るものの、まったく狭苦しくない。むしろ席は多く空いている。


 驚いたのは大広間のど真ん中にある巨大な錬金窯。

 窯の周りにはコック帽を被った大人が3人ほどいる。そのすぐ傍には床から生えた50cmほどの鉄柱があり、鉄柱にはマナドラフトが付いている。恐らくあの鉄柱は床の下で錬金窯に繋がっているのだろう。


「食券はこちらでーす」


 女性の声が聞こえた。

 入口から少し進んだところに受付があった。受付に座っているのは大人の女性だ。女性のすぐ背後には掲示板があり、掲示板には料理メニューが載っている。


 俺達がメニューを選んでいると、複数の足音が背中に迫ってきた。


「あら? アンタ達はたしか、私のクラスのイロハ=シロガネとアラン=フォーマックじゃない」


 後ろから気取った風な女子の声が聞こえた。

 振り返り、声の主を見る。金髪ロングで高飛車そうな女子だ。クラスで見たことがある(名前は知らないけど)。


 1人じゃない。クラスメイトが男女問わず10人ほど、金髪女子の後ろにいる。


「どう? 一緒に食事でも。同じクラス同士、親睦を深めるいい機会だと思うんだけど」


 俺はアランと目を合わせ、互いの意思を確認し、女子の方を向き直る。


「悪い。俺たちは2人で食うよ」

「大事な話があるんだ。ごめんね」

「淑女の誘いを断るなんて礼儀知らずな男共ね。まぁいいわ」


 まだ頼むメニューを決めていない俺とアランは彼女達に前を譲り、彼女達が食券を買って去ったところでまた前に出る。


「名前知ってるか?」

「ルチア=イシスフェル。すでにクラスをまとめ始めているリーダータイプの人だよ」


 ルチアか。良い名前だな。


「もうあんなグループができてるなんて驚きだな」

「僕たちがファクトリーを作るために四苦八苦している間に、彼女はクラスメイトと親睦を深めたんだ」


 あの1週間、こっちの事情で精一杯でクラスメイトの様子を見る余裕なんてなかったからな。すでに俺たちが知らないところで着々とグループは出来上がっているらしい。かくいう俺たちもグループみたいなものか。


「ここで食べたい料理を言っていただければ食券をお渡します」


 俺とアランは掲示板に載っているメニューを順々に見ていく。


「見てイロハ君。結構種類あるよ。カレー、焼き鳥、焼き魚。七面鳥とかキャビアとかもある。しかも全部安い」


 メニューの中に、見知らぬ単語を発見する。

 名は――“ボルケーノシャーク定食”。


「このボルケーノシャークってのはなんだ?」

「ボルケーノシャークと言えばマグマを泳ぐ鮫のことだね。マグロより身に脂が乗っていて美味いらしい。熱に強くて熱処理できないから刺身でしか食べれないんだ」

「面白いな……じゃあ俺はボルケーノシャーク定食(1000ゴルド)にします。ドリンクは……この宝珠林(ほうじゅりん)産フルーツミックスジュース(100ゴルド)で」

「僕はキングボアの一本肉オリジナルペッパー添え(1500ゴルド)でお願いします。ドリンクはゴールデンミルクティー(50ゴルド)で」


 俺とアランは金と食券を引き換える。


「それでは食券をコックにお渡しください」


 錬金窯の前に待機しているコックの元へ行く。

 まず俺がコックに食券を渡す。


「ボルケーノシャーク定食とミックスジュースですね。少々お待ちください」


 コックの人はマナドラフトに手を当てる。すると錬金窯に搭載された3つの筒の内の1つからシャボン玉が発射され、俺の元へユラユラと落ちてくる。


 シャボン玉の中にはトレイと、その上に刺身定食とジュースが乗っている。俺はシャボン玉に手を当て、トレイをキャッチする。


「お米と……それはなに?」

「知らねぇの? 味噌汁だよ。味噌汁。日本の料理。爺さんが良く作ってたっけな」


 凄いな……米と味噌汁は温かいし、ジュースは冷たい。

 多分、あの錬金窯の中に食器も食材も入っていて、錬金術で一気に組み合わせているのだろう。ある程度予想はできるものの、一体どうやって食器と食材を分けて管理しているかとか、そういう細かい構造はわからない。


 席を取り、アランを待つ。アランは一本の骨に肉塊が付いただけの料理を運んできた。これが一本肉か……脂が輝いていてめちゃくちゃに美味そうだ。


「お待たせ。食べようか」

「だな。いただきます」


 ボルケーノシャークは身が赤く、見た目はマグロの刺身に似ている。

 口に運ぶと旨味と脂が口いっぱいに広がった。歯ごたえが強く、噛みちぎるのに時間はかかる。だが噛めば噛むほど旨味がにじみ出る。


「錬金術師はグルメだな」

「錬金術師の料理全部がここまで美味いわけじゃないよ。この学校の食堂のレベルがおかしい」


 2人で料理を褒めたたえながら完食する。

 食事を終えた俺たちは教室に戻り従業の準備を始める。

 次は3時間目の授業だ。科目は植物錬金学。


「私が植物錬金学を担当するウツロギ=グリーンペイです」


 先生は眼鏡を掛けた40歳ほどの男性だ。ニコニコと優しい雰囲気をしている。しかし肌のあちこちに緑の湿疹があり、それがちょっと怖い。


「植物をメインとした錬成物のレシピや植物の種類を覚える暗記の授業と、実際に錬金術を使用する実践の授業を交互にやっていくつもりです。今日はまず暗記の授業です。教科書の10ページ目を開いてください。今日はここに載っている回復薬の調合素材を覚えていきましょう」


 コノハ先生と同じく座学だな。

 でもコノハ先生と違って威圧感がないため、みな適度にダラダラしながら聞いている。昼食の後ということもあり、気が抜けている。欠伸を噛み殺す音や、外の鳥の鳴き声が聞こえるほど静かな授業だ。


「あ、ちょっと一服失礼」


 ウツロギ先生は懐を漁る。


「なんですか先生~? タバコですかぁ~?」


 と生徒の1人が茶化すと、ウツロギ先生は「違いますよ」と、懐から紫の草を取り出し、それを煙草の如くしゃぶり始めた。


「せ、先生……? そ、それ何……?」

「これは毒草です。昔から好きなんです。この舌が痺れる感じが堪らなくてねぇ……! 定期的に摂取しないと蕁麻疹が出るんです。あ、皆さんは食べちゃダメですよ? 毒ですから」


 ゾ~と背筋に鳥肌が立った。

 ウツロギ先生はこっちの反応などお構いなしに授業に戻る。


「水鳴草、レッドハーブ、アオツメ草、カスミゴケ、竜草、カモミール、ドクダミ。この七つが七大薬草と呼ばれる錬金術でよく使われる薬草です。それでは、今日の授業はここまで」


 生徒顔面蒼白のまま、3時間目は終わった。

 


 ---



 放課後になり、帰ろうとしたところでヴィヴィに呼び止められた。


「みんな、ちょっといいかい?」


 ヴィヴィの言うみんなとはオーロラファクトリーの面々だ。


「明日、時間を作ってもらえないかな」

「どうしてだ?」

「みんなで不動産屋――『ハウスファクトリー』に行きたいんだ」

「おおっ!」


 フラムが目を輝かせる。


「ファクトリーのみんなで不動産屋ってことは、もしかして!」


 ヴィヴィは小さく頷く。


「うん。オーロラファクトリー1号店の場所を決めよう」


 1号店ってことは、将来的には2号店、3号店と作るつもりなのだろうか……。

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