1.不調
初めまして。
見つけていただきありがとうございます。
初投稿、初小説なのでまだまだ未熟な部分もありますが、暖かい心で読んでいただけると幸いです。
今日の部活が終わった。あたし達は、水筒持ったり首に巻いたタオルで汗を拭きながら、横に並んで校門を目指していた。制服に着替えずに運動着でそのまま下校。
サヤカ「今日もきつかったなー」
れんちゃん「大会近いから気合い入ってんだよ、顧問」
ゆう「トーナメント進みたがってるしね!」
れんちゃん「それはそう!まずは予選だからね。最初はどこと当たるんだろう」
いつものたわいない会話をあたしは片耳で聞いていた。
あたし達はバスケ部の中学3年生。サヤカは真面目な子で、れんちゃんはサバサバしてる。ゆうは小柄で無邪気、あたしはこの中で1番の癖毛女子。
あたしは皆と一緒にいられる時間が好き。もちろん嫌いなバスケもね。
最近よく思うんだ。離れたくないな、ずっと一緒にいたいなって。これはどうしてなんだろう。
次の日に数学のテストが返ってきた。今週がテスト期間だったから、金曜日までには全ての答案用紙が返却されるだろう。
皆それぞれ名前呼ばれるまでガヤガヤそわそわ。返却された生徒達は、友達と見せ合いっこなどして多少ざわついていた。
あたしは自席で点数を見たくない気持ちでいっぱいになりながら、先生から呼ばれるのを待っていた。
今回あたしはテスト勉をしていない。ペンすら握っていない。
案の定、今計算すると簡単に解けるような問題すら落としていた。何だこの点数…ありえない。
あたしが席で頬杖ついて落胆していたところにやって来たのは、ゆうだった。
「アスナ何点だったー?教えてー?」
「やだよ、教えない」
「えー、いーじゃん!今の内に回答写させて?私15点なんだからっ」
マジか!あたしはゆうと同等なのかっ…
「点数平気で言っちゃダメでしょ」
「いーのいーのっ大人になったら関係なくなるんだから」
ゆうは呑気にニコニコしていて、成績自体にこだわりはないようだった。そんなゆうの視線はあたしの答案用紙の右上につけられた点数だった。
やば!
あたしは思わず自分の点数を両腕でサッと隠してしまった。似たような点数だっから驚いたよね、絶対。
その行動で察したゆうは、こっそり飴を机に置いた。
「点数悪くても死にはしないんだから大丈夫だよ♪これあげる。元気出して!」
ゆうはおバカだけど、人の気持ちが分かる子なのでその優しさにいつも救われる。あたしは飴を受け取りお礼を言った。
ゆうはニッコリ微笑むと他の人の席へ向かった。
ゆうがいなくなったを見計らっていたのか、今度は瀬野があたしの席にやって来た。
「よお、テスト悪かったん?」
挑発気味にドヤってされた。
こいつは3年間ずっとクラスが同じで、中1の時からテストの点数を競い合ってる男子。今は頻度が減ったけど、たまにこうしてやってくる。その逆もあって、あたしから点数を見せびらかす時もある。
あたしは怪訝な顔して煙たく喋った。
「今回はダメ。どっか行って」
と言ってる隙にまんまと数学のテストを取られてしまった。あたしはすぐさま奴から取り返して用紙をクシャって握ってしまう。瀬野は結構驚いていた。
「…12!?」
「勝手に見ないでよ!マジ最悪っ!」
凄く恥ずかしくて布団があったら入りたい。
瀬野は少し硬直してあたしのこと見てたけどすぐいつもの顔になり呆れてた。
「お前らしくないな。そんな点取ってどうすんだよ」
「うるさいなあ、余計なお世話!」
「俺は40超えたぞ?」
「え!超えたの?」
「そ、42」
42!?す…すげぇ…
「満点まで惜しかったなあ。ま、今回も俺の勝ちってことで♪てか、春野どうした?何かあった?」
ゆうの事も申し訳ないけどいろいろ悔しい気持ちと悲しい気持ちが溜まってしまって、瀬野にも心配される筋合いないしでイラついてしまった。
「関係ないよ、早く席戻って!」
そう言うと瀬野は素直にあたしから離れて(でも勝って嬉しいのかニヤニヤして)いつメンの輪に加わった。
後日アイツにジュースかお菓子を奢らないといけないのが悔しくてたまらない。
そうなんだよ。自分を過大評価してるつもりはないけど、あたしは成績はそんなに悪くない。普段のテスト期間だってしっかり勉強はしてる。
だけどこの頃おかしいんだ。体が重く感じる。頭もなんだかスッキリしない。きっとあれのせいだ。あの夢のせい。いつもの自分じゃないみたいでおかしくなってしまいそう。
だって、あたしの体光ってるんだよ?それにいつも誰かの視線を感じるの。それが怖くてたまらない。
今も目線を下げると手や腕が光って見える。あたしどうしたんだろう。
夢の中ー。
光る道。白と黒の世界。
まただ。今回は女の子はいないみたいだ。
光る道の先にはいつもの青い服を着た人がよく見える。全身青いローブ姿の人が、ずっとこちらを見ているようだ。
怖い。いつも怖いけど…あたしはこの場所から進んだ事がない。
もしかしてあたしが行動を起こしてみたら、いつもの夢が変わるんじゃないのだろうか。
そう思って、光る道にゆっくりと一歩、前に足を置いてみた。そして二歩。ゆっくりと歩き出す。青い人との距離は近くなっていく。だけど、やっぱり恐怖が付きまとってるのである程度の距離を保ち、後ろに逃げられる様な位置で止まることにした。
ここまで来ると青い人の特徴がよく分かる。170cm以上ありそうな男性だ。フードで頭から鼻まですっぽり覆われて口しか見えない。
息してるのかな?
と思った瞬間、消えた。かと思ったがその人はいきなりあたしの前に現れた。一瞬すぎて怖くて動かなかった。
これは夢だ。夢だから自分から覚めればいいっ。早く…早く起きて!!!
すると男が口を開いて喋った。
「道と扉、2つの力で開かれる」
え?
いきなり喋ってきた展開に心が追いつけずよく分からなかったが、男は消えて世界が歪んだ。
そして、道が乱れ始めてあたしがよろけ落ちそうになると…あたしを呼ぶ声が聞こえた。
「アスナ!アスナ!」
ハッと目が覚めるとサヤカが心配そうにあたしの顔を伺っていた。
れんちゃん「もう昼休み終わってるんですけど」
れんちゃんもゆうもいた。
ゆう「いいな~アスナずるい!お掃除おサボりさんだ」
あたしは焦った。
「違うよっこんなに寝るなんて思わなかったから」
あたしは昼休みの時間、この子達と離れて解放されてる屋上へ行っていたのだ。頭がズキズキしてたけど、保健室へ行かず静かな屋上で休む事にしたんだった。
風が気持ち良いながらも、校庭でサッカーを楽しんでる声を耳に入れながら、寝てしまっていた。
サヤカ達が起こしてくれて良かった。あのまま暗闇に落ちてしまったら、どうなっていたことか。
れんちゃん「いつまでボケっとしてんの、次音楽!」
そう言ってれんちゃんはあたしの膝に教科書をバサッとおいた。音楽の教科書一式を持ってきてくれたのだった。
音楽の授業はめちゃくちゃダルい。だってここ最近、歌じゃなくて発表会に向けての合奏なんだもん。まあ、太鼓みたいな楽器担当だから楽なんだけどね。教室もそれぞれ分けて練習してるけど、楽器を鳴らすからゲーセン並に騒がしい。
太鼓は1人で叩いてるわけじゃないからメンバーもいる。
「春野さーん、真面目に練習してくれません?」
ロン毛の倉田が髪をいじりながら話しかけてきた。
あたしは倉田を睨みつけた。またかよこいつ。真面目にやってるっつーの。アンタなんてサッカー部の宮島と一緒にいたいからこの楽器にしたんじゃないの?付き纏われてる宮島が可哀想だ!
トントンと肩を叩かれて振り向いたられんちゃんがいた。
「アスナ、大丈夫?今日変だよ」
「え?どこが?」
「だって倉田に反抗しないから。ほら倉田も調子狂ってる」
と、れんちゃんはこの騒がしい中わざと倉田に聞こえるように言った。
確かにそうかも…。
だけどあたしは心配されたくなくて無理やり明るく振舞った。
「大丈夫! どこも変じゃないよ。倉田には歯向かう価値もないなあって思ってたとこ!」
だけど本当は違うよ。助けて欲しいよ。言いたいよ…でも、こんなにあたしの体が光ってるのにクラスの全員気づかないって事は、あたしがどうかしてるって事。人に頼る事は出来ないね。何の光だろう。
放課後になった。
今日は各委員会があるから部活はオフ。なくて良かったと思う。こんな状態じゃまともに動ける気がしない。
さやかとゆうは委員会なんだけど、れんちゃんは呼び出しかな?また何かしたんだと思う。
久しぶりに1人で下校する。
家に帰ってゆっくりしよう。最近よく眠れてないし。でも寝たらまたあの夢を見る事になるんだろうな。もういい加減に他の夢を見させて欲しい。明るくて楽しくて、正夢になるような…。
と思いながら公園を通りこそうとした時、何故かゆうの笑い声が聞こえてきた。
あれ?委員会終わったのかな?
公園から聞こえた気がしたので、引き返して中へ入ってみた。サヤカとれんちゃんの声も聞こえる。3人で何かしてるのかと思ったけど、誰もいなかった。
あぁ、そっか。とうとう幻聴まで聞こえてくるようになったのか。それに加えていつもの視線。もうあたし駄目なのかも。あれ?まって。
いつもの視線が今までよりさらに強くて近く感じていた。
いるんだ。この公園に。
すると、強風が吹き始めて砂埃が立ち込める。結構な強い風により乱れた髪をかき揚げて、ハッと後ろを向いた。
そこには、青いローブの人が立っていた。
夢に出てくる人だ。これが正夢になるなんて…。
緊張と恐怖で体が固まる。
男は口を開いた。
「前より強くなってるな」
勇気を出して話しかけた。
「誰?」
「なんで光ってるのか分からない?」
シカトされた。
あたしは分かるわけないので黙っていた。
「お前は俺達の大事なものを持っている」
「大事なもの?」
「お前の中にある“道”か“扉”が繋がろうとしているんだ」
…え、そんな訳の分からない理由であたしの体は今まで光ってたってこと?バカげてる。アホらしい。頭がズキズキする。
男は話を続けた。
「力が反応してしまった以上、俺達の世界に連れて行かなきゃならない」
そんな事言われても怪しすぎるし怖い。
「…嫌」
あたしは拒否をする。
「いいから来いよ。もう1人はすんなりついてきたぞ」
「え?」
あたしは少し驚いた。もう1人いるの?あたしと同じ状態の人が他にもいたんだ。でも…
「嘘だ。その人も嫌がったはず…。アンタ、何かしたんじゃないの?」
でも男はあたしの問いに答えなかった。
「もう時間がないんだ。お前がお前じゃなくなる」
と、何やら男の周りに風が吹き始めた。地面から不思議な光が現れる。
ガチで攫う気だ!!!
あたしは走って逃げようとしたが追いつかれ、男に掴まれた。
泣き声混じりに全否定。
「やだよ!!やだやだ!!!絶対行かないっ!!」
「来なきゃ行けねーんだよ!お前はそういう運命なんだ!」
男も焦って若干苛立っているのか掴む力が強くなり、変な言葉を呟いた。地面からの光がどんどん強くなる。
混乱して騒いでるあたしに男は顔を合わせた。と言うより、目を合わせたのかもしれない。
何?どうして?なんで??
下から出てくる光が眩しくそのまま目が暗み、意識が遠のいてあたしは気を失った ーーー。
読んでいただきありがとうございました。
気に入った、また読みたいと想っていただけると嬉しいです。今後ともよろしくお願いします。