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容姿が価値を決める世界で醜い俺は(仮)  作者: miu
第一章「明るすぎる一番星」
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第二話「精霊」

 

 シリウスは自分が人とは違う特別な存在であることを幼いながらに理解していた。


 相手が初対面ならば例外なくシリウスの顔を見て声を失うほど驚きその後まじまじと細部まで観察したのち美辞麗句を並べ立てる。


 鏡に映る自分の顔を見ると確かに整っているなとは感じるが、何故それほど周りが騒ぎ立てるのか分からなかった。……この日までは。


 その日、エトワール家の屋敷には一人の男が訪れていた。


 細身だが服の上からでもうっすらと見える形のいいしなやかな筋肉、まっすぐに通った眉と鼻すじに優し気に少し下がった目じり。


 人当たりの良い爽やかな笑みを浮かべるその人物はいかにも女性にモテるだろうなという容貌をしていた。


「初めましてシリウス君、今日から君の剣術と魔法の授業を受け持つことになった

ギルバート・フォン・キャスパリーグだ。よろしくね」


 彼は本来教師の真似事などするような立場ではないが、国王クラウス自らがシリウスを育てるために本職を休ませてでもギルバートをあてがった。 


 それだけシリウスには投資する価値を感じているという証明でもある。


「はい、よろしくお願いしますギルバート先生!」


 シリウスはわくわくを隠し切れない様子で食い気味に返事をした。


「はは、楽しみにしてくれてるところ悪いんだけど最初は難しいお話が続くけど大丈夫かな? それと、これから毎日午前は魔法、午後は剣術の修業になるから頑張ってついてきてね。……僕はそんなに急がなくてもいいと思うんだけど陛下が君にすっごく期待してるからね」


 まだ六歳になったばかりのシリウスに毎日鍛錬を行えというのは常識的に考えると余りにも厳しいものであるが、シリウスにとっては普段行われる音楽や礼儀作法などの退屈極まりない授業よりもよっぽど魅力的なものであった。


「大丈夫です! 剣とか魔法とか早く使ってみたかったので頑張ります!」


「そうかい? じゃあ早速始めて行こうかな。……そうだね、まずは君がなぜそんなに周りから期待されているのか、もてはやされているのかについて教えよう」


 それはシリウスがずっと疑問に思っていたことゆえに、シリウスはすっと集中すると息を飲んでギルバートの話に耳を傾けた。


「この世界にはね、そこら中に精霊がいるんだ。まだ見えていない君に急にそんなことを言っても理解しづらいかもしれないけどね。修業すれば君ならすぐ認識できるようになるよ。それでね、精霊の大きな特性の一つとして、彼らは美しいものを好むというものがある。精霊にとっての人間の美しさとはその容姿で決まる。すなわち、容姿が美しければ美しいほどたくさんの精霊に愛されるということだ」


「……その事と魔法に何の関係があるんですか?」


「魔法を使うにあたって大きな工程は二つだけだ。それは魔力の確保と術式の構築。魔法を使うには当たり前だけど魔力がいる……しかし、人間は魔力を生み出したり貯めたりできる器官を体内に持っていない。そこで精霊にお願いするんだ。精霊は大気中に存在するマナを自分の属性の魔力に変換することができる。その魔力を分けてもらって僕らは魔法を使う。……わかったかな? そう、この魔力を確保するという過程において僕たちは何もしない……というよりもできることがないんだ。だからこそ、生まれ持った容姿が多くを決めるのさ」


 それは余りにも残酷なシステムであった。


 醜く生まれたものがどれだけ魔法を使いたいと願い手を伸ばしても、魔力の確保においてそこに一切介入の余地がなければそもそも努力のしようがないということだ。


 そんなことに今のシリウスが気づけるはずもないが……

 

「……じゃあ僕も魔法が使えるようになりますか?」

 

「ああ、もちろんだとも。それに君は全属性の精霊に適性があると聞いている。素質だけなら僕を超えてるよ」


「……ごめんなさい、適正ってなんですか?」


「おっと説明がまだだったね。適性っていうのは簡単に言うと何の属性の精霊に好かれる体質か、ということだ。魔法に火、水、風、土、光、闇といった属性があるように精霊にもそれはある。例えば、火の魔法を使うには火の魔力が必要なんだけど、火の魔力は火の精霊にしか作れない。基本的に属性の適性っていうのは一人につき一つなんだけどたまに二属性に適性がある人がいるんだ。ちなみに僕も火と闇の二属性に適性があるよ。でも君の全属性っていうのは聞いたことがないな、それこそ御伽噺に出てくる勇者『ヘルクレス』は全属性の魔法を自在に扱ったと言われているけど所詮作り話だしね」


 この話を聞きシリウスはようやく自分の特異性を認識した。


「難しい話はだいたいこれでおしまいだ。じゃあさっそく精霊を認識する修業を始めようか」


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