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容姿が価値を決める世界で醜い俺は(仮)  作者: miu
第一章「明るすぎる一番星」
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第一話「星のような少年、月のような少女」


 誰かが言った。


「……美しい、美しすぎる」


 その声の主が誰なのかは分からないが、それが誰に向けられた言葉なのかを理解できないものは皆無であった。


 それほどまでに彼の容姿は圧倒的であった。


 まだ幼いゆえに中性的な顔立ちではあるが、ときに青い果実が熟したものより美味しそうに見えるように、未完故のどこか背徳的な美しさがそこにはあった。

 筆で描いたようにきりっとした弓なりの眉、すらりと通った鼻すじに切れ長の瞳。

 その色は角度によって姿を変え、ときに夕焼けのように暖かさを持った赤であれば、ときにルビーのように深紅に染まり、ときに血のように艶めかしくてらてらと妖しく光る。

 そして極めつけはその人間性を表すかのような純白の髪。

 まるで、夜空に煌々と輝く星のような少年である。


 彼の名はシリウス・フォン・エトワール。


 弱冠六歳にして王宮に招かれたのはそのあまりの美貌が噂になり、国王自らが、彼の父デューク・フォン・エトワールに息子を連れて王宮に来いと命令を下したからである。


「……これほどまでであったか」


 シリウスをここに呼びつけた張本人、アリスティア王国『国王』クラウス・フォン・アリスティアがそう呟く。


「デューク、この者の適性は?」


「火、水、風、雷、光、闇すべての属性の精霊に適性があります」


 その返答を聞き場が騒然となる。


「全属性に適性があるだと!? まるで御伽噺に出てくる伝説の勇者ではないか……なんとしても王家に欲しいな」


 そう言うとクラウスは侍従に誰かを呼びに行かせた。


「魔法と剣術の修業はさせているのか?」


「いえ、まだでございます。」


「ならばすぐに始めさせろ。教師はこちらで良いのを見繕ってやる」


「は……、しかし剣術はともかく魔法を学ぶには少し幼すぎるのではありませんか?

普通どれだけ早くとも魔法の学習は八歳からです」


「それは適性が二つ以下の者の話であろう。むしろ全属性を学ぶ必要がある分、遅すぎるぐらいだ」


 デュークが苦い表情をしながら了解したことを伝える。


「それとシリウスに婚約者はいるか? いるのならば今すぐ解消させろ」


「それはどういう……」


 デュークが疑問の声を上げるのを遮る形で扉の開く音がした。


 そこにはシリウスと同年代ぐらいに見える女の子が、扉に半身を隠すようにしてほんの少し赤らんだ顔を覗かせていた。


 その容姿はシリウスと比較すると少し見劣りしてしまうかもしれないが、それはシリウスが異常なだけで、彼女も将来極上の美女になることを誰もが一目で確信するほど可憐であった。


 きめ細かくシミひとつない真っ白な肌と、艶やかで瑞々しくどこか幻想的な輝きを放つ銀色の髪。それは、蒼穹を閉じ込めたかのような透き通った青の瞳と相まって、触れてしまえばそこから崩れてしまうのではないかと思えるほどの儚さを感じさせた。そんな彼女の頬にさす薄い朱色が唯一彼女の存在を現実に引き留めていた。


 まるで夜空に静かに佇む月のような少女であった。


 彼女の視線はシリウスをまっすぐに捉えていたが、シリウスと目が合うと顔を遠目からでもわかるほど顔を赤く染めて、あうあうと言いながらすぐに俯いてしまった。


「なんだもう気に入ったのか、話が早くて助かるな。ルアシェイア、その白髪の少年シリウスが今日からお前の婚約者だ。その様子だと異存はなさそうだが、いいな?」


 ルアシェイアと呼ばれた少女はその言葉に目を輝かせながら、はい!と大きな返事をした。


「初めましてシリウス様。今日からあなたの婚約者になりました、ルアシェイア・フォン・アリスティアと申します。よろしくお願いしますね」


 そう言ってルアシェイアはシリウスの方を向きながらスカートを小さな手でちょこんと摘み綺麗なカーテシーを披露した。


「はい、こちらこそよろしくお願いしますルアシェイア様」


 この場で初めて出たシリウスの声は彼の容姿にこれ以上ないほど良く合っていて誰もが彼の声に酔いしれた。


 ――婚約者ってなんだろ?


 まさか誰もシリウスが婚約者の意味を分かっていないだなんて思いもしなかった……


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