プロローグ「独白」
――嫌いだった、鬱陶しかった、忌々しかった、消えてほしかった。
お前は全てを持っていた。
お前は全てから愛されていた。
俺が欲しかった、たった一つのものさえも、お前はただそこにあるだけで簡単に奪っていった。
何度、この世の不条理を嘆いたことか……
お前には見えていたか? 俺の憎悪が。
聞こえていたか? 俺の慟哭が。
――好きだった、愛していた、憧れていた、信仰していた。
いつも輝いていた。
その圧倒的な美貌だけでなく、在り方さえもが煌めいて見えた。
全てを持っているくせにそれでも走り続けるお前が、かっこよくて、余りにも眩しくて……追いつこうとするのが馬鹿らしくなった。
憧れが憎しみに変わるのに大した時間はいらなかった。
仕方ないだろう?
そうだよ、仕方ないんだよこれは。
お前が止まってくれないから足を引っかけるしかないじゃないか。
引きずり下ろすしかないじゃないか。
――堕ちろよ、どこまでも。
その尋常でなく整っていたいた顔を抑えて蹲っている実の弟を少し離れたところから見下ろして……
俺はこれ以上ないほどの笑みを浮かべた。
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