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1 異世界夜露死苦

しばらくして俺は今までのことを全て思い出した。

慌てて俺は自分の腹を見てみたが、鉄の棒が刺さった筈だったのに傷一つ無かった。


「私は女神アルエット。転生者様、あなたはこの世界を救うべく数多の人々の中から選ばれました」

「...は?」


話についていけない。女神?転生者?なんの話をしているんだ?


「転生者として選ばれたあなたには魔王を倒していただきたいのです」

「ちょっと待ってくれ。俺、事故で死んだよな」

「ええそうですよ。だから転生したんです」


女神はあっさり答える。


「“転生者”は死者の中から選び出されます。選ばれた人は職業ジョブを選んでいただき、それからユニークスキルを授けられ、世界を救うのです」

「はぁ...」


取り敢えず俺は死んで、選ばれて転生してしまったらしい。


「では最初に職業ジョブを選んでいただきましょうか。剣士、武闘家、魔導士、弓使い...他にも色々ありますよ」


女神は俺の前に職業が描かれたカードを並べ始める。ふと、俺は回復師ヒーラーのカードに目が止まった。


(俺は...人を助ける力が欲しい)


俺は助けることが出来なかった少年を思い出す。


「じゃあ…回復師ヒーラーで」

「はい、回復師ヒーラー…ってええ!?」


女神が心底驚いたような顔でこっちを見る。


「あ、あなた見た目は完全にヤンキーじゃないですか!戦闘派じゃないですか!ほら、人気職の剣士も魔法使いもあるんですよ!?なんで最弱職業の回復師ヒーラーなんですか!?」

「あ”あ?なんか文句あんのかよ」


俺が睨みを効かせると女神は「ヒィッ」と言って黙り込んだ。


「どうしても…この職業が良いんだよ」

「なんで回復師ヒーラーなんですか…?」


女神はおずおずと尋ねてくる。

俺は白い地面に視線を落として答えた。


「俺は人を助ける力が欲しいんだ。俺、喧嘩けんかしかのうがないけど、回復師ヒーラーになれば人を助けられるようになるんじゃないかと思ったんだ」

「でも、回復師ヒーラーだと魔王を倒す力は…」

「俺は回復師ヒーラーで必ず魔王を倒す」


俺は正面から女神の眼を見つめる。

女神はしばらく目を行ったり来たりさせ、まだ悩んでいるようだったが長いため息の後、決意したかのように顔を上げた。


「はあ…あなたのことを信じましょう。あなたの職業ジョブ回復師ヒーラーとします」


渋々とだが女神は俺が回復師ヒーラーになることを了承してくれたようだった。


「あとはあなたに与えられる特別な(ユニーク)スキルです」


女神はそう言うと俺の前に手をかざした。

すると手に光が集まり、一枚のカードが出現した。

女神はそのカードを手に取り、読み上げる。


「あなたの特別な(ユニーク)スキルは…”不死身”です。…なんでこんなユニークスキルが!?」


女神はまたしても驚いた顔をしている。


「不死身…?なんなんだそれは」

「”不死身”はその名の通り、死なないスキルです。どんなに傷ついてもわずかな時間で治癒してしまう、最強のユニークスキルです」


ふと前世の俺の異名が頭をぎる。”不死身の獅子王ししおう”。

まさかこの名前がユニークスキルになったんじゃないか?


「こんなスキル初めて見た…!すごいです!」


女神が目の前ではしゃいでいる。

俺が女神を見ていると俺の視線に気が付いたのか恥ずかしそうにせきをした。


「コホン…失礼いたしました。では、そろそろ行きましょうか」

「行くって…どこに行くんだよ」

「無論、あなたに転生していただく世界です」


そう言うと、白い世界が強い光に包まれ始めた。


「チッまぶし…!」


俺は意識を失った。


ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


「転生者様!!」


俺は女神の声に驚いて目が覚めた。

周りを見渡すと、今までいた白い世界ではなくなく緑豊かな森に居た。

木の切れ目からは中世ヨーロッパのような城が見える。


「うるせぇな…てか、どこだココ」

「ここはあなたが転生した世界です」


女神がくるくると手を広げ目の前で回る。

良く見ると、女神の服装が変わっていて、白いドレスから短いワンピースになっていた。

白髪はくはつ木漏こもれ日を受けてキラキラときらめく。


ふと気づくと俺の服装も変わっていた。

学生服を着ていたはずなのに、長くて黒いコートにいかついブーツ、ゴツいベルトをつけた服になっていた。

なんだかファンタジーもので見たことがあるような服装だ。


「…なんか服変わってんだけど」

「ああ、制服だと戦闘に向かないので新しい服に変更させていただきました。どうです?かっこいいでしょう」


女神が満足そうに頷いている。


「てか、なんでお前まだ居るんだよ」

「だって私、あなたの旅に同行する予定なので」


親指を立てて俺の方に向かって満面の笑みで片目を閉じる。

俺はこいつと旅をしなくてはいけないのか…?


「あと、私はお前じゃなくてアルエットです!」

「はいはい」

「”はい”は一回です!」

「うるせぇ…」


俺は無駄に綺麗な青空に向かってため息をついた。


(俺…これからどうなるんだ…)


閲覧していただきありがとうございました!

少しでも面白いと思っていただけたら、ブクマ・評価よろしくお願いします!

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