~おじさんつなぐお話~⑨
CP9 決戦!ヤマタイ国➀
あれから一ヶ月があっという間に過ぎた。
ミカサ出雲より返す刀の電光石火の早業で、イト国と周辺のクニグニを手中におさめた。
壱与は、連合軍を率い、弟王狗呼率いるヤマタイ国軍と対峙していた。
しかしながら、兵力差は大きく、狗呼ヤマタイの兵およそ1万5千に対し、壱与連合軍3千という圧倒的不利な状況であった。
さらに、壱与軍は急ごしらえで、各クニグニの有象無象の集まりという不安要素は隠せない。
おまけに狗呼の後ろにはクナ国がついているというキナ臭い噂まであった。
そういう状況下の中ながら、連合軍の雰囲気は明るい。
その要素として。
奇跡を起こした女王壱与がいる。
奇跡の神軍がいる。
あの誰も討伐出来なかったヤマタノオロチを倒した者たちがいる。
この戦三度、伝説を起こそうとしている。
伝説の当事者になれるかもしれない。
否が応でも士気は高まる。
連合軍の配置は左翼1000彌眞、右翼に1000難升米のクニグニの兵、中央に1000の壱与の神軍およびイト国軍だ。
壱与の傍らには尊と十六夜。
三種の神器の力の発動をいつでも起こせるよう三人は神器を構えている。
対するヤマタイ国軍は堂々1万の兵を持って力で連合軍をねじ伏せようとする。
「ふふ、今度こそ死ね。壱与」
狗呼の口角が醜く歪む。
「行け!」
王は攻撃の下知を下す。
「来たぞ!」
兵が言う。連合軍を飲み込まんとする勢いで、ヤマタイ軍は迫る。
「行くぞ!」
二人の武人は叫んだ。
左右翼の彌眞と難升米軍がほぼ同時に動く。
二隊は、敵軍の中央に割って入る。
士気高く血気盛んな両隊は、敵を押し込み、突き進む。
阿吽の呼吸で斜めへの縦断を試みる。
「抜けた!」
輿の上から戦況を見ていた両隊を確認、壱与は叫ぶ。続けて、
「十六夜!尊!」
即時神器の発動を促す。
(都合のいいのか分からない世界よ。この子たちに未来を)
尊は我ながら柄にもないことを考えているなと、自嘲しながら天叢雲剣を高く掲げた。
(お願い)
十六夜は勾玉を強く両手に握りしめる。
(母様、みんなを守って)
十六夜は神鏡を両手で持ち高々と掲げた。
(OH!ラウンドガール)
尊は自分の緊張感のなさに少しだけ驚き苦笑する。
神器の力が発動される。
導きの光が、一直線に狗呼の居場所を示した。
「突撃!」
連合軍は光の先を目掛けて、一気呵成に進撃する。
よろしくお願いします。