~あんくる、らいてぃんぐ。なう~➅
CP6 ヤマタノオロチ征討➀
イト国を出発しヤマタノオロチが篭るとされる出雲山まで5日要した。
馬に跨っての股ズレが激しい尊は、馬の腹に仰向けやうつ伏せになったりして、彌眞の迷惑を顧みずしのいでいた。しかしながら、馬の振動で危うくずり落ちそうになり、この策を断念せざるをえなかった。
しかしながら、四日目になると股の痛みも治まり、馬上に跨ることに慣れてきた。
少しばかり余裕も生まれ、匠は十六夜に聞いた。
「戻らなくて良かったのか?」
「わからない・・・」
「わからないって・・・」
これから思わず言い合いになりそうな雰囲気となり、
「まあまあ」
彌眞が二人をなだめる。
「私には選択肢がなかった。姫様に命じられたのだ。私には全うするしかない」
「そうか」
「私は姫様を信じる」
「そうか・・・わかった」
尊は短く頷いた。
出雲山に到着、土着の者たちに話を聞けば、多くの人々が魔物により命を失ったという。
8つの頭に8つの尾、身体は驚くほどに巨大で、その腹は常に人や獣を食った血でただれ
ているという。どう聞いてもS級の化け物、好物は酒だという。
オロチを退治する。その言葉に民は喜んだ。
荷車を借り、わずかばかりの酒を譲り受けた。
互いに思うところ、わだかまりを抱えながら、出雲山の山中へと入った。
三人は馬から降り、ヤマタノオロチのねぐらを捜索する。
山中の森深く入り込んだ。
夕闇が迫り森の生い茂る木々が光を遮っている為、薄暗い。
さらに歩くと、急に視界がひらけた。絶壁の壁にくりぬいた大穴がある。
穴の奥は深い闇が広がる。
不気味に赤く光る二つの瞳が見えた。
彌眞が前、尊が後ろで荷車を押しながら、大穴に近づく。
「でかい、でかいな。大物感半端ない」
「しーっ尊殿、お静かに」
荷車を置くと、二人は即ダッシュでその場から離れ十六夜の元へ戻る。
赤い瞳が次第に大きくなっていき、その全貌が明かされる。
その大きさは尋常ではない敷地面積は、福岡ペイペイドーム一個分といったところか。
ただただ圧巻。
「はあ、やべえ、ラスボス感パネェ」
尊はそのスケールのデカさに呆れた。
化け物はひと吠えした。はじめて聞くこの世のものとは思えない異音、鼓膜が破れるかと思うほどの痛みを耳に感じる。
魂が凍る。表現するならばこういったところか。
チロチロと長い二股の舌をだし、8つの首が同時に酒を飲み始めた。
しかしながら、わずかな酒の量。あの大きさならばすぐに飲み干してしまうだろう。
「どうする」
尊は言った。もう猶予がない。
「・・・あっ」
十六夜が言葉を返そうとした矢先、彌眞は駆けだしていた。
戈を繰り出し、オロチめがけ攻撃を仕掛ける。
手ごたえあり。
彌眞は微笑する。
が、思わず、恐怖し後退りする。
オロチの傷口がみるみるうちに塞がっていくのである。
(あるある~)
尊は心の中で呟いた。
傷口が塞がる前にと、超速で戈をふるうが、同じことだった。
オロチは何事もなかったように一心に酒を飲み干すと、ようやく三人を睨んだ。
三人固まり魂を抜かれるような、全身が総毛だった。
今度こそ死に戻りかと尊は覚悟した。
絶体絶命。
その時、一面に眩い光が射した。
(絶対絶命からのあるある~)
尊は心の中で思った。
ああ、つづき書いてしまった。よろしかったら読んでくださいね