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~あんくる、らいてぃんぐ。なう~⑤

 CP5 対クナ国➁


 先端が開こうとしていた。敵の部隊が肉眼で見える距離まで肉迫している。

 「後ろの部隊が動かないどういうことだ」

 神軍はなお進んでいる。後軍は止まっている。

難升米は訝しげる。

 壱与は輿の向こうから難升米の声が聞く。

「爺」

 輿の脇で並走する馬上の難升米を見た。

「姫・・・これは」

 難升米は彼女に苦虫を嚙み潰したような、苦渋の顔を見せた。


 クナ国の弓兵部隊による一斉斉射がはじまった。

 それに呼応し、後方のヤマタイ軍より怒号があがる。

「これは・・・弟王の反乱ですな」

 孤立無援。無慈悲。難升米は事実ここに起きた現実を言った。そして深く目を閉じた。

「なんで・・・」

 壱与は絶望した。


 真っ先に脳裏に浮かぶのは、憎しみの対象と化した狗呼の顔。

「・・・・・・」

 こんなことをしてまで、力を得たいものなのか。弟王に対する憤りとそれに気づけなかった自分の無力を恥じ悔やんだ。

沸騰する怒りと悲しみで、壱与は気狂いしそうになる。

寂しさまが込み上げ。ありとあらゆる感情、とめどなく流れる涙で視界は閉ざされる。


兵たちは敵の弓になす術もなく、悲鳴をあげながら倒れていく。巫女達は混乱し泣き叫ぶ。まさに阿鼻叫喚といった様相。

難升米は自らの武器、鉄鉾の柄を爪が手の平を食い破るぐらいに握り締めた。

「姫!もはやこれまで、しかしながらこの爺、この身死するまで、あなた様を御守り通す」

 鉾を自在に振り回し、無数に飛来する弓の雨を薙ぎ払う。

「爺」

 決意こもる難升米の言葉で、壱与は我に返った。

今どうにかしなくては。絶望の淵に少しでも灯る光があるならば、それを探さなければいけない。彼女はそう思った。



 しかし心とは裏腹に目から涙は流れ続ける。一歩一手が動かない、動けない。

 その間も次々と倒れていく神軍の者たち。

「このままにしておけぬ。しばし行って参ります姫」

 難升米はわずかでも現状を打破しようと馬腹を蹴り、敵陣目掛けて直進する。存分に鉾を振い、敵に損害を与える。


 大切な人々が失われていく悲しみに壱与は心が張り裂けそうになる。

(あああああああ!)

 すると、呼応するかのように壱与の神鏡が胸の中で熱を帯びてくる。

(熱い!)

 火傷しそうな錯覚を覚えるほどに。

 壱与はあの方に言われているような気がした。

(あなたは女王)

「あなたは女王」

 なんだと。


 壱与はその声に、導かれるように弾かれ輿の上に立った。

 もう、怒りも悲しみも恐れもない。

「てーぃ!」

 女王という標的を目の前にして、クナ国の容赦ない弓の集中攻撃がはじまる。中には火矢も撃ち込まれる。

「姫!」

 難升米は叫ぶ。

 降りしきる弓矢の雨の中、彼女はその小さな両腕で神獣鏡を掲げた。


 刹那、激しい光が全体を包む。

 矢の雨は瞬間にして光に包まれ消えた。

 敵味方ともその奇跡に呆然となる。


「母様・・・」

 流れる涙。

鏡には卑弥呼そして女王たちの思いが宿っている。

 壱与は決意した。


 鏡に念じる。

 すると鏡から一直線に光の道が指し示す。

「姫・・・これは」

 老将は驚きを隠せない。

「行きましょう。光の射す希望へ」

 壱与はその揺るぎのない瞳で光の道をじっと見つめ、皆に告げる。

 

 神軍はクナ国、狗呼率いるヤマタイ国軍の間を通り、悠然と光の道を進んで行く。

 ただただなす術もなく見送る両軍。

 追撃しようとするものなら、光がさらに増し眩しさが視界を遮り奪い、恐れをなす。

これが神の力かとただ畏怖してしまう。


 粛々と荘厳に壱与たちは光射す道の方へ。

 その歩みを進めた。


 書くのが進むけど反動が・・・。

 次回、早くもクライマックス「ヤマタノオロチ征討!」。ぼちぼちでよろしくお願いします。

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