~おじさんのないとおぶふぁぃやー~㉑
CP10 酒と男と男の談議
「いやーアルス、酒場行こ、酒飲もう!」
尊のテンションはMAXだ。
「これ以上はハメを外せない」
アルスはきりっとした顔で答えた。
「いいかアルス」
尊はアルスの首に肩をまわす。
「俺たちはシンデレラだ。24時までの」
「なんだよ、シンデレラって」
「・・・お前みたいなもんだ。女の子のサクセスストーリ、王子様と結婚するんだ」
「ふーん」
「だが、それに至るまでは苦難の道のりがある。それが24時の魔法だ」
「ちよっと、何言ってるんだか・・・」
「シンデレラは、24時までは魔法によってお姫様になっているが、それが解けると普通の女の子になる」
「はあ」
「俺たちも24時までは魔法がかかっている。だが、それが解けたらいつも通りだ。いやいつも以上にがむしゃらにやる」
「・・・尊」
「なぁ、アルス、漢にはハメを外すときが必要なんだ。それは今、必然なんだ」
「あ、兄貴・・・この前聞いたような・・・でも分かる、分かるよ!でも3日だ。あと、3日でアリスを迎えに行く」
「分かった弟よ。お前のそういうところが好きだ。ハッスルでがんばる」
「ハッスル!」
二人は酒場へダッシュした。
店内はにわかに活気づいていた。
酒場にはゲルマン民族発祥のビールが木のジョッキになみなみと注がれ、大きなベーコンがつまみとして皿の上に乗っている。
「では、とりあえずビールでかんぱーい」
尊はジョッキを掲げる。
アルスは遠慮がちにジョッキを合わせる。
「くふうぅぅ!ばふぱふの後のビールは最高だな」
「ああ、旨い、でも」
「ああ、焦る気持ちは分かる。まぁ飲め飲め」
「おねーさん、おかわり。次はぶどう酒二つで」
飲み干したジョッキを置くと、尊はすぐ次のオーダーをとった。
「あいよ」
恰幅の良い、中年の女性が、愛想よく微笑む。
ほどなく、ぶどう酒がやって来る。
「さぁ、飲も飲も」
「・・・ああ」
アルスの表情は浮かない。
「考えたってしゃーない。今はパっと騒いで、明日は切り替えるだけ、なぁ」
ぶどう酒のグラスを尊はそっとアルスの目の前に置いた。
「ああ」
一時間後。
「俺だって、俺だって勇者だよ。一回、世界に平和をもたらしたんだ。でもなんで、こんな仕打ちを受けなきゃならないんだ・・・そうだろ兄貴!」
アルスの顔は真っ赤で、完全に酔っぱらってしまった。どうやら愚痴酒のようだ。
「分かる、分かるよ、弟よ・・・お姉さん、もう一杯」
「お酒はもういいよ・・・それより、俺の話を聞いてくれ」
「いや、お前はまだ飲みが足りないんだ。だから、愚痴が出る。ういっ、おねーさん、まだー」
尊は陽気に空のボトルを掲げる。
ゴトンと乱暴に濁り酒が置かれた。暗黙のフィニッシュ酒だろうか。かなり強そうだ。
バケツのような容器から、アルスのグラスに酒を注ぐ。
「飲め、飲め!」
「ああ、飲むさ。でも、ローラのやつ、ひどいと思わないか。俺はともかく可愛いアリスを置いて、どこに行きやがったんだ」
「まーだ。足りないかな、あーるーすーくん」
「だって、だって、俺だってがんばってるのに」
アルスは涙目になっていた。泣き上戸でもあった。ぐいっと濁り酒をあおる。
「お前は、よくやってる。やってるよ。やってるやってる!」
「お義父さんだって、お義父さんだってさ・・・」
「まぁ、まぁ」
尊はアルスの肩をポンポンと叩く。
「俺は悔しい!」
「ああ、そうだ」
「悔しい!!・・・ぅぅぅ」
アルスは叫ぶと、その場にうっ伏した。
しばらくすると、寝息が聞こえてくる。
「お前は偉いよ」
尊は寝ている彼に呟いた。
「おねーさん、おあいそ」
尊はアルスを背負って、宿屋へ向かう。
夜空には満月、星々が輝いている。
「今日は月が綺麗だな。あいつら元気にしてるかな」
次回、二人、ハッスルします。




