~おじさん続きを書いてみた~②
CP弐 旅立ち
尊は馬上の人になっている。馬は乗ったことがないので、男の後ろにタンデムしている。いわゆるニケツだ。
それにしてもと尊は嘆く。
(なんて、不便な世界だ。普通なら馬なんて簡単に乗れるはずだろ。何で現実世界と一緒なんだよ。俺様、中心ってことじゃないのか)
「大丈夫ですか。尊様」
男が気を遣って声をかけてくる。
(しかも、この世界では俺は後期高齢者にあたるらしい)
馬上の男は彌眞。巫女達の身辺を警護する兵士。18歳、十六夜とは幼馴染。中肉中背、武器は銅戈(古代の武器)を操る。
尊達はヤマタノオロチ征討に向かっている。
女王壱与から征討の勅命を受けたのだ。フラグが立っている以上、拒否ることはナンセンス、転生物の運命として快諾した。
しかしながら、この世界をやっていく為のスキルが分からない。
快諾したもののどうしたものか。
これは元々備わっていて探すものなのか、突然発動するものか、覚醒するのか、死に戻りするのか、それとも周りがチートで、なにもせずとものパターンなのか、どれに属するのか皆目見当がつかなかった。
(第一、この世界って・・・弥生時代だよな。じゃ転生というかタイムスリップか)
目の前に広がる景色は純和風、何もない荒れ地で、ファンタジー要素は一つもない。
ヤマタイ国にしろ、木造の神殿に高床式倉庫、竪穴住居とおそまつで、歴史の教科書で見たまんま。
(いや、待てよ。ヤマタノオロチって化け物だろ。そうなると・・・)
神話の世界とも考えられる。
尊の頭は混乱する。
「おい、ヤマーダ」
隣の馬上の十六夜が声をかける。
「俺は山田。ヤマーダではない」
「そんなのは、どうでもよい」
「ほう」
「付き合わせて、すまぬな」
十六夜は急に真顔になり、頭を垂れた。
「何を今更」
尊は壱与の言葉を思い出していた。
数時間前、神殿にて。
「お前はいかないのか」
「ああ、私はいけない。和の国は今、乱れておる。今、私が不在にすれば、このクニは危うい」
壱与は苦渋の顔を見せる。その姿は痛々しい。
「姫様・・・」
十六夜は彼女に寄り添う。
「十六夜、そなたは尊とともにオロチ征討へ」
「はぁ?」
尊は十六夜のその時の表情を思い出し笑った。
「なんだ」
十六夜。
「どうかしました?」
と、彌眞。
眉間にしわを寄せ、壱与にくってかかる。
「私は姫を置いていけません」
「これは命令じゃ」
「嫌です」
「頼む。クニの存亡がかかった重大事。頼む」
「あなた様、一人残せません。クニの連中にはとても任せられません」
「願いじゃ・・・すまぬ。オロチはこのままにはしておけぬ」
「しかし」
「なっ・・・十六夜しか頼めぬ」
「・・・はい」
「尊、私は行けぬが、十六夜と彌眞をそちに預ける」
尊は頷いた。一方で、
(トントン拍子に事が進んでいるな)
と思いつつ。
「私も、もし機あれば駆けつける。それまで無事に」
まだ幼い壱与の必死で懇願する姿を見て、尊は行かざるを得ないと感じた。
「わかった」
(機あれば・・・か)
尊は壱与の言葉を反芻してみる。
(最後においしいどころ取りとか・・・なるようにしかならんか)
「しかし、股が痛い!」
長らく馬の背に跨がり、尊は股ズレを起こしていた。
(なんと、リアル・・・くそっ)
「すいません」
彌眞が謝る。
「うるさい、ジジイ」
十六夜は容赦ない。
二頭の馬はひたすら和の世界を駆けていく。
引き続き、おつきあいよろしくお願いします。