~おじさんつなぐお話~⑩
CP10 決戦!ヤマタイ国➁
破竹の勢いで進撃する連合軍に、弟王狗呼はどうすることも出来なかった。
それは信じられない光景だった。
数で圧倒する自軍の間を、一直線に駆け抜け狗呼目掛けて突撃する連合軍がひたひたと迫るのだ。王はただただ恐怖でしかなかった。
(こんなはずではない・・・)
狗呼は目に見えて迫りくる圧に心を乱す。
「クナ国の援軍はどうした!」
唯一の希望にすがる。
「間に合いません!」
兵士は報告する。
戦端が開いて、わずかの時間のこと、クナ国援軍の到着には時間がかかる。
しかも元々敵対している国同士、果たして援軍に来ているのかも疑わしかった。
「くそがぁ!」
狗呼の取り乱しようはなかった。周りの者を罵り、叩き、喚き散らす。
(何か、策はないか・・・何か)
狗呼は親指を噛み、策謀を巡らせる。
(・・・考えなければ、死ぬだけだ・・・何か!何か!)
血眼となり、髪をかきむしる狂気の沙汰。
「!!むっ!!!」
狗呼の算段は整った。薄らと笑みをこぼす。
弟王狗呼のふてぶてしい態度が戻る。悠々とした動きで、ゆっくりと幕から出た。
「陛下」
気でも狂ってはないかと部下が声をかける。
狗呼は手で制す。自信に満ちた表情で眼前の敵を睨みつける。
「俺は、ヤマタイ国の王だ!王なるぞ!」
狗呼は迫りくる連合軍に向け歩きだす。
大音声で叫ぶ。
「我はヤマタイ国の王、狗呼なり。かつての女王壱与・・・いや、国を脅かす魔女よ。どちらが正統な後継者か決着をつけようぞ。出て来ぬか、臆病者!」
何度もそう叫びながら歩き続ける狗呼、その狂気と鬼のような様子に近づける者はいなかった。
声は次第に、壱与達の耳に届いた。
「何、都合のいい事を言ってるんだ」
尊は憤りを隠せない。
「姫様、ヤマーダの言う通りです。今、進軍を止めてしまったら、周りから敵・・・ヤマタイ軍に囲まれてしまいます。それではせっかくの勝機が消えてしまいます」
十六夜は壱与様に伝える。
壱与は複雑な表情を見せる。
(軍を止める訳にはいかない・・・だけど)
壱与は輿の上から、軍の動きを止めるよう制した。
狗呼の内心は心躍った。
「姫様!」
十六夜は叫んだ。
(それでも・・・私は)
「あなたを許さない!」
二人の王は対峙した。
ついに10話となりました。ヤマタイ国編、次回最終話・・・多分。お楽しみに!




